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2025年05月18日

【カミマイ15】暁は遠く

ギリギリ路線を歩む(?)カミマイです

★★★

水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより


幻想水滸伝2【カミマイ】妄想15

カミュー×マイクロトフ

暁は遠く



溢れる吐息がどちらのものかわからなくなった頃、ようやく体を離され、マイクロトフは深いため息を全身で吐いた

カミューは名残を惜しむようにしばらくその黒い睫毛をじっと見つめた後、マイクロトフから離れ、自身のベッドの上に戻った

ただ口を合わせて互いを耽溺し合っただけなのに、マイクロトフの脳髄は痺れるような陶酔に体の底からわなないている

カミューという毒であり薬である男は、マイクロトフのつぼを確実に抑えて逃がさない

触れれば触れるほど毒が回って、更に手を伸ばしてしまいたくなるほどの危険な熱そのものだった

マイクロトフは決して詩人としての素質があるわけではないが、そんな男もいるのだなと、この親友と関係を深めてからというもの、つくづく実感させられた


「よく眠れそうかい…?」


暗がりの中、くぐもった笑い声が密かに届いて、青年の顔をむっとさせる

カミューといると、最低でも一度は不機嫌な面構えになってしまうのはなぜだろう

相手が常に自分に心地よい敗北感を抱かせるからかもしれない

まったく歓迎できないことではあったが、今となってはそれも普通のことになりつつある

カミューとこうすることが、ごく自然の日常に


ああ、と強く言い捨てて、就寝のためにマイクロトフは目を瞑った


「おまえも早く休め」


意識が落ちる前にそう命じると、努力するよ、と応答が返った

おやすみ、と、いつもの声が聞こえ、マイクロトフから小さく応答が聞こえた瞬間、安らかな呼吸とともに青年の全身がベッドに沈み込んだ


「おやすみ、マイクロトフ」


カミューは声を潜めて謳うように囁いた



やがて完全に親友の意識が闇に飲み込まれた様を確認すると、再び床に降り、カミューはマイクロトフを見下ろした

白い容貌には昔と変わらぬ安らかさがある

同室だった当時も同じようにこのはっきりとした目鼻立ちの親友の寝顔を眺めたような気がする

頬の赤みは減ったが、先ほどまでカミューになぶられ、自らも求めてきた唇の色は変わっていなかったかもしれない

大人びて、確かに大人だが、格段に手に入れ難いものになった

マイクロトフは自分のことをしかと欲したが、体の関係は、少なくともロックアックスに戻るまで深まることはないだろう

それが口惜しくもあり、渇きを思い起こさせる原因になっているが、マイクロトフの考える通り、愛だの恋だのに興じていい状況ではないのだろう

自らであればそれすら飲み干して戦況に臨む気概でいるが、おそらくマイクロトフ自身はこの戦いのもっと先を見ているはずだ

自分自身で所属した組織に疑問を持ち反旗を翻した責任、マチルダ騎士団の本来の在り方、そして改革を、身を賭して実行に移す腹積りでいる

目の奥にある志は、確実に未来を見ている

それを揺るがないものにするには、色恋は邪魔なのだ

マイクロトフは二つを同時に両立、行使できない狭量であるとも言えるし、一方で一途でもあるのだろう

ひとつに専心し、必ず成し遂げるという強い意志は、揺るぎなきものでなくてはならない


それを助ける立場になることはあっても、挫く者になってはならない

カミューが思うほど、マイクロトフの愛は軽くないのだろう

一見穏やかで深く、そして太くどこまでもつながるものなのだ

だから


カミューはふと自身の顔に自嘲が浮かんでいることを自覚した

頭ではわかっていても、腕を伸ばして手に入れたいという欲求が常につきまとい続ける

例えあちらからいくら唇を重ねられようと、見つめられようと、カミューを真の意味では満たせない


私の切り札はおまえが持っている


そうつぶやいて、カミューは部屋を後にした


マイクロトフの隣で全てを忘れて眠るためには、まだ時間がかかりそうだった



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2025年05月17日

【カミマイ14】朴訥が花

朝から食器というかガラス製の重い(…)
計量カップを割ってしまったので
百均で買ってきます…!重くないやつを…!!!!!

ということで、カミマイは続くのでした…!

★★★

水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより


幻想水滸伝2【カミマイ】妄想14

カミュー×マイクロトフ

朴訥が花



本拠地の増設にマチルダ騎士団の力を借りたいとの要請を受け、マイクロトフは即座に補佐役の一人を呼んで手配に当たるよう指示を出した

元々関所の修理や修繕など、簡易なものであれば自分たちの手でやっていたし、ロックアックスでは専門職を招いて定期的に指南を受けていた

マイクロトフは団長位に就くまでは青騎士の各部隊に籍を置いていたという経緯もあり、その担当になったこともあるので抵抗はない

人手が足りなければ、今でも彼らに遠慮なく手を貸した

元々、体を動かすことが本分のような騎士団だ

土木関係に専門的な見識と腕のある補佐役も数人かかえており、彼らの判断で作業に適した騎士らを選定させ、素早く任に当たらせた

城や拠点の拡張や改築などは、青騎士たちにとっては朝飯前で、警戒に当たる警護や見回りなどよりもひっきりなしに動き続けられるのでむしろ有難いと思う者も少なくなかった

土埃や泥にまみれるのが好きな騎士と言っては少々言い過ぎの感はあるが、マイクロトフ自身も皆と汗する手作業や肉体労働がきらいではなかった



朝の件があったのち、特にそのことに関して誰も忠告も懸念も指摘もしなかったが、団長補佐の一人が当たり障りのないようにマイクロトフの前に進み出て、殊更きつく詰襟を着込んだ上司の許可を得てから思うことを伝えてきた


「団長専用の寝所を我々が空けますので、今夜からそこで休まれては如何ですか」


上下の別なく騎士たちが数人で一部屋に集まり、今でも寝泊まりを続けている

さすがに色の違う騎士団同士が同室になることはなかったが、皆で詰めれば一部屋くらい空けられるとその騎士はマイクロトフに提案した

正式な同盟軍内での会議の出席のみならず、各所での打ち合わせや手配などで忙しく立ち働く団長である青年を気遣って、しかと休眠ができるように計らうという主旨の内容だったが、彼らの本音はマイクロトフの身の安全にあるのだろう

例の赤騎士団長に無体な真似を強いられているのではないかと、大方心配をしてくれているのだろう

プライベートな事柄なので敢えてはっきりとは誰も明言しなかったが、マイクロトフは部下たちに案じられているのだということをすぐさま理解した

しかしそんなことくらいで彼らの懸念材料になってはならないと考え、弁解も謝意もマイクロトフは彼らの前では口にしなかった


「俺は今後、執務室にベッドを運んで寝る。おまえたちは今まで通りを続けてほしい」


正直なところ、マイクロトフは専用の個室などあてがわれても、着替えと就寝以外に私的に利用する目的がそもそもなかった

青騎士団の執務室は、ロックアックス城のものよりも狭い

大勢の青騎士が行き交い、別々の部署の責任者が詰めて話せるような広い会議室もない

入れ替わり立ち替わり騎士たちが入退室を繰り返し、マイクロトフも執務机の前で立ったまま指示を出すことが多かった

就寝場所として適していないことは確かだが、長椅子を運び込むよりはベッドに横になれるだけでも大分ましなのだろう

訪問者からは見えないように仕切りを作り、そこに団長服をかけて休むことができればそれでいい、とマイクロトフは言った

寝入ってしまえば、どうせ朝まで起きないのだから


「…この際、我々の手でこの部屋を拡張してはどうですか?」


建築や建造の心得のある者が多い青騎士らしく、騎士団長室の敷地面積を増やしてはどうかという意見があがる

実際に、自分たちにはそれが可能だ

マチルダ随一の団結力を誇るがゆえに、おそらく驚くほどの短期間でそれを成してしまえるだろう

また、その作業は戦場に出るわけではないので、騎士たちにとっては比較的安全な仕事であるとも言えた


「…俺は構わないが、問題がいくつかある」


ひとつは、青騎士団の執務室だけを拡張してはカミュー以下赤騎士たちに示しがつかない

次に、城の内部を自由にいじって良いのか許可がいる

最後に、安全性はもちろん、予算の確保


後ろの二つは盟主と軍師に直接尋ねることとして、問題は一つ目だ


カミューの許可をもらいに行くことそれ自体は構わないのだが、やはり一方だけの執務室を広くするのは恰好がよろしくない

バランスを取るべきだと、マイクロトフは考えた

無論、騎士団内に不平が出ないことを慮ってだ

そんな些末なことに目くじらを立てる輩は赤騎士の中にはいないよとカミューに諭されるのが落ちだろうが、問題はそこではない

団結を必要とするなら、必要最低限の体裁は整えるべきだ

対外的にも、内面的にも


「では、赤騎士団長の執務室も同じように拡張しましょう」


うむ、とマイクロトフは大様に頷いた


「できれば、赤騎士団の部屋はこちらより豪勢に頼む」


一瞬虚を突かれたようだが、確かに体面上そうした心積もりは必要であるだろうと察し、進言した団長補佐の騎士は、図面に書き起こしてまいりますと断って、知識のある騎士数人を伴い、別の部屋へ移動した

ここがロックアックス城内であれば青騎士団の政務室の一角を借りれば済むのだが、彼らの駐留を許されたこの場所がまだまだ手狭であることは否めない


「もう少し、軍師殿に融通をしていただくか…」


今でも十分、大所帯であるマチルダ騎士団には無心してもらっている気がするが、組織ゆえに割かねばならない経費や、回してもらいたい設備や部屋はある

これ以上わがままを言って、迷惑がかからねば良いが



だが、マイクロトフは完全に失念していた

拡張工事が済むまでは、カミューと寝所を共にしなければならないという現実を



マイクロトフから工事の件を聞かされたカミューは、実直な親友の詰めの甘さに呆れたような苦笑をその頬に滲ませた


マイクロトフがその意味に気づくのに数分の時間を要したことは言うまでもない


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2025年05月16日

【カミマイ13】深層の露見

カミュ―には幸せになってほしいカミマイです

★★★

水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより


幻想水滸伝2【カミマイ】妄想13

カミュー×マイクロトフ

深層の露見



駄目だ

駄目だ、とマイクロトフは苦しげに息を吐いた


こちらが怯んだ隙を見逃さず、追い詰めるような強さで、マイクロトフを引き寄せたカミューの唇が頬を避けて喉を這う

生殺与奪の権利を男が有するかのように、喉仏に舌を這わせ、歯を立て吸い付き音を立てる


何が駄目なのかとカミューは間近で問うた

熱い滾りを宿した声はマイクロトフの鼓膜に直接届いた

光をひそめ、色を濃くした飴色の双眸には赤を思わせる炎が揺らめいている


マイクロトフは深いため息をついた

すべてだ、と言ってしまいたい衝動をなんとか抑える

言ってしまえば、臆病だとカミューはマイクロトフを罵るだろう

そんな屈辱に耐えられる自信は、今はなかった


カミューの指先が耳裏を伝い、少し緩んだ横髪に触れる

朝の鍛錬で水をかぶり、しとどに濡れた黒髪に鼻先を寄せる

そのまま後頭部を抱くように手のひらが回され、もう片方の腕で腰を捕らえられ身動きができなくなる

いや、はねのける意思さえあればそうすることは容易かったのかもしれない


カミューはマイクロトフの視線を正面から捉えたまま、シャツのボタンを器用に外した

均整のとれたマイクロトフの腹筋が露になり、カミューは指の腹でそこをなぞった

鍛錬だけでここまで見事に鍛え上げられる者はいないのではないかと思われるほど、恵まれた肉質だ

所々に傷痕の残る表面は張りがあり、意外と手触りがよい

カミューはマイクロトフの体が昔から好きだった


触れる都度、びくりと大きな震えが走る

嫌悪の反応でないことは、上気した青年の顔と、わななく唇から不規則に漏れる呼吸からも明らかだった

カミューの手全体で存分になぶられたマイクロトフは、しかし懸命に口中で舌を動かし、言葉を継いだ


「…婚前での交渉は、駄目だ」


「……………」


やっとのことで口から出たのは、自分でも時代錯誤な言い訳だったと思う

マイクロトフはそれでもなんとかこの窮地を切り抜けようと試みた

触れてくるカミューの熱さに、これ以上この場で絆されるわけにはいかない


騎士たちに痕を見られたことも痛手だが、さらに朝の公務に遅刻をした上、体の動きが鈍くなっていたら弁解のしようがない

なんで自分がされる側だと決めつけているのかはさて置いて、私的な情事でそんな事態になったのだとしたら、指導者として周りに示しがつかない

部下たちへの申し訳なさに、自分はその場で団長の職を辞してしまうかもしれない


それだけは、今の現状、マチルダの未来のためにもあってはならない

どんな理由があったとしても、祖国への離反の引責は自身が取る

マイクロトフはそう心に決めていた


だから、駄目だと言った

流されて、うやむやのままにこの先を受け入れて、迎えて良いはずがないと

仮にカミューとそうなったら、マイクロトフは今の自身の信条が揺らぐ気がした

石頭だと罵られようが、流されたままで志を二つも両立し、維持し続けられる自信がなかった



マイクロトフの発した言葉はカミュー自身を拒否しているとも取れるし、期限付きの停戦を嘆願しているようでもある

マイクロトフはこの行為自体を「やめろ」と言っているわけではないのだから


だとしたら、それが甘さだな、とカミューは思った


そして自分も、大層この親友に対しては詰めが甘いようだと自覚する


本来であれば、このまま膝を割って押し伏せても相手は拒めない

拒めない決定的な理由があると、カミューは直感した


しかしこの先に至った場合、強引に事を進めた場合、マイクロトフの側に今度は別の理由を与えてしまう

カミューが無理に進めたから、自分の意思ではなかったと

本心を自覚することなく、相手に責任の一端を押し付ける

それすらもマイクロトフは自らの不徳、不覚悟の結果だったと自責の念をいだくかもしれない

それがカミューは気に入らなかった

一方だけの思い込みで深まる関係など、あってはならない

笑い話で終わらせてはならない

真に相手を欲するのであれば



「…仕方がないな…」


マイクロトフは婚姻を約束した良家の子女や生娘ではない

なのに自分は何をやっているのだとカミューは思った


どうかしている

そうまでしてでも、意固地なこの男を、深い部分から絡めとって手に入れたいらしい


自嘲を滲ませ、押し伏せた相手の剥き出しになった肌にカミューは強く吸いついた

明確な意図を持って、きつく、さらに痕が残るように


「っつ……」


マイクロトフから押し殺した呻きが漏れる

痛みを訴えてはいたが、苦痛だけではなかったようだ

頬を紅潮させ、睨みつけてくる夜闇のような深い色の眸には、薄い靄のようなものが浮かんでいる

生理的なものだろうが、戦いの傷や痛みに体が慣れていても、一方的な戯れには不慣れであったようだ

亭主のいるご婦人に押さえつけられ、関係を求められるような場面など彼の過去にはなかったのだろう

この堅物を相手にそんな暴挙に出る勇気のある女性ならば褒めてやりたいところだが、単なる想像であっても深い嫉妬を覚えずにはいられない

それが男であれ女であれ、この友人に無体を強いることが叶うのは自分一人であれと心の底から願った



「…今はまだ駄目だ、という解釈で良いのかな?」


マイクロトフ、と、カミューは底冷えのするような低い声で囁いた


確認を促され、さすがに「今後も一切手を出すな」とは言い難い状況であることをマイクロトフは理解した

もう、戻れないところまで来てしまったのだと


マイクロトフにはカミュー以外の男に迫られた経験はない

ない、と断言してもおそらく良いはずだ

慕われた経験はある

しかし断固として、マイクロトフの心も体も動かなかった

なのに、カミューに対してだけは、理由をつけなければはねつけることができなかった


団長職だから

色が違うから

監視下にあるから

マチルダの行く末が目の前にあるから


すべて真実であったし、正論だと思った

今、カミューに自制を促している理由もそのためだ


だとしたら、ここでマイクロトフ自らも覚悟を決めなければならない

ぎりぎりの境界で踏みとどまっているカミューに対して、誠意を見せる覚悟を



「カミュー…」


マイクロトフは目を瞑った

一回、二回と深呼吸を繰り返してから、厚い瞼を持ち上げた


ゆっくりと拓かれた視界には、烟るような淡く明るい頭髪を持った友の顔があった

その先をと願うように、長い睫毛が秀麗な男の眼差しに深い影を落としている

流されては駄目だと自身を戒めながら、マイクロトフはため息のような言葉を自分が吐くのを聞いた


「俺は、おまえを」


カミューはその続きをしかと耳にし、喉の奥でかみしめた


だが今は駄目だと続けるマイクロトフのひそめた目線を、ひどくつらいもののように見つめた


白い頬を何度も指の腹で撫で、やがてカミューは深い嘆息を吐いた

本当であれば、思いと真反対の要求を突きつけるマイクロトフを殴りつけても良かったのだろう


マグマのようなうねりが、カミューの中にはある

堰を切って溢れ出すのを今か今かと待ちわびているそれを宥めるには、まだ足りないと思った


マイクロトフは苦しそうな表情で、その様を見返している

互いに溺れるには時期がまだ整っていないとマイクロトフは考えているのだろう

……それでも


カミューが動くと、マイクロトフの首筋に小刻みな震えが起こり、反射的に瞼を閉じた


唇に当てられた温もりに、マイクロトフはカミューを感じた

啄むような優しい接触でマイクロトフを解し、やがて促されるように開いたわずかな隙間を見つけ、カミューの舌先が滑り込んだ

友愛でも親愛でもない証のそれは、カミューの乾いた大地に流れる河を潤した

マイクロトフが自身を受け入れ、応えていることに、徐々に理性が麻痺していく



時間が止まったように互いの温もりに溺れ、耽溺し、やがて瞼を持ち上げた

初めて真正面から受け止めた接吻は、現実味があるのにひどく穏やかな心地を誘った



誓ってくれ、とカミューは言った


マイクロトフの痺れた脳に直接語りかけるように

心の臓に刻みつけるように




私以外に決して心を許さないと


私以外には体を許さないと



「カミュー」


喘ぐようにマイクロトフはその名を呼んだ


「誓ってくれると言うのなら、私はおまえのためにどんな困難にも耐えよう」


これから起こるすべてを指して、内包して、カミューは言った


マイクロトフはカミューを自身の道連れにするつもりはなかった

マチルダ離反の責任を取り終えた後、必ずカミューの思いに応える

応えるという答をカミューに出す


とはいえ、それを公言するのも恥ずかしいというか、今はまだ腹立たしい

大体、カミューの口づけは巧みで旨すぎる

どこで学んだんだと不審に思いながら、自らと比較して些細なことに憮然としてしまう


内心を誤魔化すように、照れくささを隠すように、マイクロトフは横を向いた


「カミューは俺に、修道士になれとでも言うのか…?」


ぶすっとむくれたような青年に、男は微笑いかけた

騎士団きっての色男の名に恥じぬ、晴れた秋の空のように鮮やかな風貌だった


常に騎士としての節制に努める手前、禁欲を貫くのは大儀でないこととはいえ、なんだか腑に落ちない

最初にカミューに提示したのは自分だとはいえ


しかし宥めるような甘さの残る親友の顔を見ているうちに、マイクロトフの不満は自然と消えた

カミューという風に吹かれて、呆気なくどこかへ吹き飛んだのかもしれない



その代わり、私の魂はおまえのものだ



とろけるような笑みを深くして耳元に息とともに吹き込み、カミューは再びマイクロトフに口づけた

もう二度と忘れられないように、逃れられないように

長い指を、頬に首に指に絡めながら


渇きから解放されたカミューの温もりがわずかに離れ

その唇が続く音を形にする



―――永遠に



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2025年05月15日

【カミマイ12】青い覚醒

文字の行間のお話

個人的に昔は文字を詰め詰めにしてテキストを書いていたのですが
今は改行のみでただただ書き連ねる形態にしている理由は、
文章を段落分けするのがめんどくさいというだけの
箇条書きの延長上であるのではないかと思います

思ったことをつらつら書いている…
キーボードではなくタブレット端末の画面から打っている…という感じなので
多分これ自体、小説とは言えない感じなのがいやだと思う方も多いと思います

昔は詰め詰めに書いていた反動…だとも思うような…

視力が低下していくと
大きめの読みやすい文字と行間がほしくなるのかなぁと思いながら
【カミマイ】のみならず、オリジナルの【龍飛王×鼓翼】も
どんどん話を書き進めているといった具合です

ある意味で、
頭の中のものを書き出すペース(速さ)維持のための
変な文章…文章とは言えない文章になっていると思います

おかしいという自覚はあるけれど、
段落分けをして文字を清書(整理)する暇すら今は惜しい…!…という感じですね…
どんどん書きたい…!という…!

色々とご迷惑をおかけします…@@

そして、こんなものでも構わないぜよ…と言って
お付き合いくださる方には本当にありがとうございます…!

★★★

水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより


幻想水滸伝2【カミマイ】妄想12

カミュー×マイクロトフ

青い覚醒




重い、と一言口に出してしまえば、この拘束状態から抜け出せたかもしれない


マイクロトフの目醒めの時刻は早い

明けの鷄が鳴くまでに細胞が起床のシグナルを全身に送る


なぜこんな事態になっているのかわからなかったが、狭いベッドでさながら獣の親がわが子に寄り添うようにカミューが自分に密着した体勢で眠っている姿を見て、マイクロトフは唖然とした


カミューの顔が近い

間近にある男の少し甘みのある容貌に、反射的にマイクロトフは顔をしかめた


…狭い寝台に無理矢理収まって、全身が痛くならないのだろうか

そんなこと考えながら、マイクロトフは居心地がわるそうにわずかに身をずらした


昨夜は寒かったのだろうか

ということは、自分を布団代わりにしたのか?、との疑念が一瞬脳裏をよぎったが、かけたはずの毛布はカミューの寝床のシーツと一緒に無造作にまとめられていた

この状況に対する判断に迷いつつも、とりあえずマイクロトフは朝練の約束があったので青騎士たちが待つ中庭へ移動することにした

体をどかすようにしてカミューを自分のベッドの上に残し、相手を動かした拍子に乱れた自身の夜着の襟を正す

カミューの端正すぎる鼻筋からは規則正しい寝息が漏れ、存外よく鍛えられている肩や胸筋がゆっくりと揺れていた

熟睡できているらしい様を認め、マイクロトフは無意識に胸を撫で下ろした

さすがに蹴り飛ばして追い出す気になれなかったのは、あまり寝つきが良くないらしいカミューの体調を慮ってだ

さほど休眠は必要ないと男は豪語するが、疲れを感じていないわけではないだろう

それでなくとも赤騎士団は、ロックアックスで行っていた公務とは九十度違う任に就いている

現場での仕事は主に青騎士が担当していたのだから、同じような任務に交代制とはいえ内政担当だった頭脳派集団の彼らが当たるとなれば、過重労働だと訴えられても仕方がない

マチルダ騎士が屈強とは言わずとも逞しい部類であるのは騎士として当然だが、中には新たな体制に不慣れな者もいるだろう

カミューは環境の変化に苦心する部下たちに気を配りつつ、自らの職務もきっちりと遂行してきた

一方でカミュー自身の意思であるとはいえ、同盟軍への加入はマイクロトフに共感して従った形であるのは事実だ


カミューには借りがある

マイクロトフはそう考えた



朝の稽古は元々マイクロトフ一人でやっていたのだが、マチルダを離れてから日が経つうちに、自分も、と参加を表明する騎士が相次いで出てきた

自身の管轄外である赤騎士はここには見当たらないが、警護ばかりでは体が鈍ってしまいそうだと懸念して志願する者たちが徐々にだが増えている

一応は同盟軍から彼らに許された一角の庭を使っているが、そのうちもう少し広い場所を探すことになるかもしれない

マイクロトフは参加者が増えても減っても構わなかった

しかし、皆と桶を持ち寄って鍛錬後の水浴びをしていると、なんとなく味気ないなと感じてしまう

ロックアックスの大浴場が懐かしいと思ったが、敢えて口には出さなかった

ここは本拠地であるとはいえ戦場なのだ

贅沢を言ってはいられない


マイクロトフの心中を知ってか知らずか、同じことを考えた騎士はいたようだ

なんとかサウナをこの地でも再現できないか、と

行軍中に大掛かりな陣営を作った時には、手狭でも自分たちの手で略式のものを拵えたりしたものだが

意外とロックアックスの出身者は風呂好きなのかもしれないなと苦笑を浮かべながら、マイクロトフは配下の騎士たちと共に持参したタオルで水気をぬぐった


ふと、いつの間にか周囲の騎士たちの手が止まっていた

沈黙が落ち、誰も微動だにしない

鍛錬後の体を皆で清めていたはずだが、何か異変でもあったのだろうか


彼らの視線の先は自分の半身だ

マイクロトフはどこかおかしいのかと訝り、裸の上半身を捻ってみた


「…………」


先刻の打ち合いで、模擬の剣先が掠め、傷めたのだろうか

左肩のあたりに赤らんだ部分を見つける

ただ、それは視界に入ったものの一部分でしかなかった


共に訓練に励んだ騎士たちは一様に目を逸らし、朝食の用意ができたか見てまいりますと言って足早に去る者や、朝練で使用した用具を手早く片付けようとする者がそれに続いた

蜘蛛の子を散らすように、団員たちの姿がマイクロトフの視界から散り散りに消えていく

どういうことだと、さすがに鈍いマイクロトフでも気がついた

慌てる必要はないぞと注意を促しつつも、マイクロトフの動揺は明らかだった

脱いでいたシャツを素早く羽織り、前を止める

まるで急ぎの用を思い出したと言わんばかりに、騎士服の上着を拾い、大股で庭を後にした





「カミュー!!」


寝起きに盛大な怒声を浴びせられ、男は癖がついた柔らかな頭髪を緩慢な動作で搔き上げた

すでにマイクロトフのベッドの縁に腰掛けて、覚醒はしているようだった

しかし眼は胡乱として、まだ本調子ではなかったようだ

抗議があるらしい青年のおとないを受けて、おはよう、と朝の挨拶をする

それに思わず律儀に同じ言葉を返し、はっと我に返ったマイクロトフは、これはなんだとカミューに詰め寄った


「私の口から言わせるのは野暮だと思うが」


責めるような目つきの友人を軽んじているわけではなかったが、鼻白んだような様子でカミューは言った

寝起きなので、声調にいつもの張りがない


「…犯人は、やはりおまえか」


マイクロトフは思わず唸った


寝付く前まではどこにも何もなかったはずだ

首にも肩にも、そして胸や腹にも

腰骨のきわどい位置にまで

肌に浮き上がる鬱血のような赤い痕はまぎれもない前戯の痕跡だ

マイクロトフといえど、男所帯の騎士団を束ねる身である

そうした知識は大様にして頭の中に存在した


なぜこんな真似をした、と非難混じりに問うと、カミューは不敵に笑った

やっていないと否定もせず、弁解もしない

起床の直後ゆえに普段の人当たりの良さが欠如した双眸は、どこか野生の獣を思わせた


マイクロトフはぞくりとした

ゾッとしたのではなく、カミューの目線に感じるものがあったからだ


初めてでもないだろう、とふてぶてしくカミューは言った


「私の想いをおまえはすでに知っていると思ったが」


悪びれもせず確認でもしてくるような口調に、マイクロトフは素直に顔をしかめた

あからさまな不快感ではなく、カミューの不遜な態度が気に入らなかったからだ


「知っていれば、何をしてもいいとおまえは言うのか」


憮然とした口調を耳にし、そうだ、とカミューは言った


気のある者の前で、無防備にしているおまえがわるいと


しかし痕をつけた以上のことはしていないのだから、今日一日は詰襟の騎士服をきつめに着込んで大人しくしているんだなと、親友だったはずの男はことも無げに放言した


責任を転嫁され、マイクロトフは怒りを通り越して呆れ返った

だがマイクロトフが言い負かされて終わりかと思ったが、カミューの話には続きがあった


「マイクロトフ」


名前を呼んだカミューの声音は、すでに平素のものだった


次の瞬間聞こえてきた台詞の中身を正しく理解した途端、マイクロトフの背筋を細かな震えが走った



私はおまえの本心が聞きたい



ひそめたように低くなった男の声と優れた容貌が見せる真摯な眼差しに、マイクロトフはまたしてもぞくりとした

悪寒でも不快でもないそれは、追い詰められた獲物の胸中にも似て、マイクロトフから正常な判断力を奪う先触れのようだった


やめろ、と言ったような気がする

それ以上は、と、咄嗟に静止が口を突いて出た


マイクロトフが何を考えたのか、得心したかのようにカミューの瞳が鋭く細められる


マイクロトフは男と目を合わせ続けることができず、その場できつく瞑目した



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2025年05月14日

【カミマイ11】禁欲は飽和する

空の民草の民シリーズのカミマイは
禁欲生活を強いられる(苦笑)二人の期間が多くて
やきもきしますが、同盟軍に参加している間にかなり進展してくると思います

ゴルドーの監視下から解き放たれた赤青(カミマイ)…!
というわけなので……………
策謀渦巻くロックアックスから解放された
二人のムフフの運命は…!?

えっくすなどでもつぶやいておりましたが
カミマイの空の民草の民シリーズは全28話で完結します…!
やったぜ…!!
最後までどうぞお楽しみに…!

★★★

水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより


幻想水滸伝2【カミマイ】妄想11

カミュー×マイクロトフ

禁欲は飽和する



マイクロトフは友としてのカミューを愛していた

愛と言っては語弊があるかもしれないが、カミューの存在を大きな心で受け止め、捉えていた

それはすなわちマイクロトフにとっての友愛であり、恋情とは遠く、求められていないからこそいだくことのできる、ほぼ一方的な感傷だった

よく言えば無償の愛であり、マイクロトフからすれば、無意識であるとはいえ、それは非常に価値のあるものなのだろう

カミュー自身がそれとは異なる感覚をマイクロトフに持っていたとしても、マイクロトフが感じる友としての愛を簡単に覆すことはできない

そもそもマイクロトフはカミューを憎いとは思っていない

長所と短所がまるきり逆で、敵わない相手であるからこそ、マイクロトフにとってカミューはライバルであると同時にかけがえのない存在だと言えた

自分に持っていないものを、カミューが全て持っている

マイクロトフにとって、学び高められる存在として、友がある

それを愛する、という行為は、どこをどう切り取っても整えられたように清潔で汚れがなく、それひとつで完全なるものだった


友愛は、その一言だけで足りぬものがなく

それひとつで、すでに完成形だった


それが、マイクロトフという人間だった




マチルダ騎士団の一部が同盟軍に荷担したことで再編成を余儀なくされ、奔走した時期が過ぎてしまえば、あとは夜を静寂が包むのみ

出兵の命令が直接下されなければ、存外のどかな時間が長く続いた

それと同時に、大義という名目を前にして本能的に隅へ追いやっていた生身の部分が表に出てくる

カミューはその事実を歓迎しながらも、この部屋の中はまるで沙漠のようだと感じた


背後に、自分以外の気配を感じる

マイクロトフは一度寝入ってしまうと誰が何をしても一向に起きない体質であることは、寄宿舎時代に同室だった者たちの間ではかなり有名だ

戦場であれば常に気を張っているが、私生活では見た目よりもはるかに図太い

どこであろうと横になったらすぐに寝付くことができる様は、こどものようだと表すよりも、就寝すると決めた直後にすべての回路が切断されてしまうかのような、マイクロトフの特技とも言える代物だった

得意なのは剣術と馬術だが、とにかくすこぶる寝つきが良い

代わりに朝が早い本人には自覚がないことだったらしいが、眠った時の記憶がない、と昔からよく漏らしていた

寝る決心をした途端に思考が事切れるのであれば、それは当然のことだろう


今も隣の寝台の上に姿勢の良い姿で仰臥し、枕に頭を乗せ、一定のリズムで胸をかすかに上下させている

カミューは毎晩マイクロトフに背を向ける形で横になっていた

寝る間も惜しんで今後の騎士団の在り方について相談し合っていた以前であれば、自身も疲れ果て、意識の外に追いやることもできたが、そろそろそれが難しくなりつつある

マイクロトフはそんなカミューの胸中など知らず、呑気に寝息を立てている

士官学校で同室だった時分とは明らかに違う、大人の顔で



同盟軍の本拠地にある赤青騎士団の執務室はそれぞれ個別に分けられるようになったが、当初は部屋数が足りずに二人で机を横に並べた室内に、各団の騎士たちが入り乱れて入退室を繰り返していた

しかし拡張工事が進むにつれ、せめて団長が詰める部屋だけは鍵を付け、別々にした方が指示が伝えやすいということで分けてもらったが

眠る場所は相変わらず、他の騎士と同様、数人単位で割り当てられた

団長職といえど、例外ではない


マイクロトフ自身は、野営の最中も部下たちと並んで寝ていたので違和感はないらしい

赤騎士である自分は常にひとりで机をあてがわれ、眠る場合も天幕の奥で仕切りを作り、割と自由に単身で寝ていた

騎士団内での環境の違いだと言ってしまえばそれまでだが、カミューはあまり健全な意味合いで他者と寝所を共有したことがない

マイクロトフと寝食を共にした騎士見習時代であれば、マイクロトフが館内の責任者に異郷から来た志願者の世話係を頼まれた経緯もあり、また、自身も初めて見知った異国の友人という理由もあって素直に受け入れたが、今のカミューにとってマイクロトフと枕を別にしているとはいえ共寝するという状況は、二重にも三重にも意味が違った

恋う相手の存在を背後に感じ、いささかの気負いもなく眠れる方が不健全であるように思う


あちらが何の考えもなく就寝していることは事実だとしても、カミューの方はそうではない

いっそ、執務室に移って適当に眠ろうかとも考えたが、夜着の恰好で鍵を探すのも面倒だった

その上、日が落ちれば建物の中といえども寒い




マイクロトフは自分をどのように捉えているのだろう

ゴルドーや白騎士の管理下から解放されて、昔のような友人としての付き合いに戻れたことを純粋に感謝し、今を享受しているのだろうか

騎士団の重役に就いて以降、マイクロトフの側から故意に親交を断絶した状況が、自身の執着に油を注いだことは確かに認めよう

だが、一度火が点いた灯火は、燻火は、決して消えることなく我が身にくすぶったままだ

おまえ自身を灼いても飢えて渇き、飽くことを知らないだろう



いつの間にかカミューは体ごと相手の方を振り向き、長い四肢を伸ばして横臥していた


そして気配を殺して寝台を降り、隣で安らかな眠りに就いたその姿態を見下ろした


無言でマイクロトフの体に馬乗りになると、狭いベッドのスプリングが軋んだ音を立てた


マイクロトフの薄い寝巻きの襟の内側に、指先を忍ばせる

烏の羽よりも光沢のある黒髪との対比で、ほのかに輝いて浮かび上がる白い喉に口付ける

跪く敬虔な信徒のように、しかし明確な目的を持って、息を吐く

寝ついた青年の喉元を通り、吐息は鎖骨へ

そこで立てた濡れたような音とともに、カミューは乗り上げた上半身を横へずらした

マイクロトフの綺麗に隆起した胸と肩の筋骨を長い指と掌で味わうように動かすと、密になった部分がしっとりと汗ばんだ


「マイクロトフ」


名を囁いてもいらえはない


男の手で暴かれてゆく白磁の肌膚に、音も立てずにカミューは歯を立て、自身の足跡を刻んだ



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2025年05月13日

【カミマイ10】変転の友愛

日記ブログと一緒に(並行しているというわけではないのですが)
pixivとクロスフォリオでもカミマイの更新をしているのですが
好きな場所で読んでいただけるのが一番適していると思います

今のところ、30話前後で完結できるのかな…といった具合で
カミマイがベッドインするまでの道のりはちょっと遠そうです
最後ら辺になるかも…

でもその間に、恋愛の駆け引きではないですが
カミマイらしい恋情未満の友情っぽいやり取りが
そこはかとなく繰り返されているという具合ですね…

あの時代に流された騎士たちの変遷…恋物語(!)…といった印象です

カミューがマイクロトフのことが好っき!なのは
見たままが好き、みたいなところがあるのですが(恋)
マイクロトフはカミューすごいな…で惹かれているので
カミューがんばれ…おまえはいい男だ…という
書き手側の応援する気持ちも大いに無きにしも非ずです
個人的に常に攻めキャラを応援したいので………

わけがわかりませんが、お話はじゃんじゃん続きます…!

元ネタを知らない方にこそ、気軽に気楽に読んでいただきたいBL物です

★★★

水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより


幻想水滸伝2【カミマイ】妄想10

カミュー×マイクロトフ

変転の友愛




マチルダから離れることを選び、祖国に反旗を翻したマイクロトフは、カミューの助力を得て騎士団の再編成にすぐに取り組むことができた

団長である彼ら二人についてきたのは赤青の上層部を含めた団の半数の部下たち

カミューとマイクロトフの側近の面々は直属の上司である彼らに追従し、ロックアックスに残ったのは内情を漠然としか知らされなかった、かなり末端の騎士たちだった

例え所属する騎士団の最高責任者が彼らの直接の指導者であったとしても、国と家族のことを思えば二の足を踏むだろう

今頃白騎士団長であるゴルドーが権威を嵩にカミューたちに代わる責任者を指名し、団長職に就けたはずだ

あるいは白騎士の名の下にすべての権限をゴルドー一人に集約し、実権を握ったか

マイクロトフたちの離反と同盟軍への参加は、マチルダ騎士団そのものには何の痛手でもなかったという内外へのアピールのためであるのだとすれば、それは成功しただろう

しかし騎士団のカリスマは間違いなく正式な騎士団長であったカミューとマイクロトフであり、団長補佐役の誰一人として彼らの元から離れる者はいなかった

ついてきた騎士の中にも、途中でロックアックスに戻った者はいる

故郷での懲罰を免れるよう直々に書簡を手渡して見送ったが、無事に親族と再会できたことを願うばかりだ

各々の事情を抱えたそれらの騎士たちを除けば、カミューとマイクロトフの側についた面々は騎士団の中でも錚々たる顔ぶれだった

結束力は青の騎士団が誇り、騎士団の統率力は赤騎士が担う

同盟軍と合流した彼らの堂々とした姿は、そんな印象を周囲に与えた


これから、忙しくなる


マイクロトフがそう考えたのは、同盟軍内部での騎士団の立ち位置だ

マチルダ騎士団を名乗る以上、自分たちがすべきことは戦闘員として戦力面でのリーダーシップか若しくは助勢であり、同時に警備や密偵、情報収集などの組織的な知識と手腕を求められているはずだからだ

要するに傭兵とは異なる大きな枠組みの中の組織のやり方で同盟軍に力を貸し、自らの志を変えることなく軍の中で騎士団の名と身を立てる

簡単に言えば、ロックアックスにいた頃と立ち回りが変わるので、そのための再編成と心構え、それに伴う人員の配置と騎士たちの再教育が不可欠だった

とはいえ、勝手知ったる何とやらで、騎士たちは自分たちこそが団長を頂く正規のマチルダ騎士団を自負する手前、こまごまとした指導までは改めてする必要がないように思えた

彼らは誇りを持って騎士以外の人々と気さくに接し、様々な事情を抱えるメンバーとも紳士的且つ理性的に相対することができた

戦闘では実践力と経験者のどちらが優れ適しているかの判断を迫られる場面もあったが、理性ある彼らが半歩引いた姿勢を見せることで、同盟軍への貢献に毎回成功をしていた

すべては赤騎士団長と青騎士団長の意向に沿うやり方だったが、目立った諍いも少なく、事なきを得ている

それもすべて、カミューとマイクロトフが寝る暇を惜しんで熟考と討論を重ねてきた結果だ

正式に軍師を招いて意見を交換し合う場面もあれば、双方の騎士団の執行部の面々にも同席を頼んで騎士団の在り方について説明をし、理解を得られるまで議論した

納得した上で決定を下した目的意識を、その日のうちに全騎士に通達したので、故郷とは異なる役割であったとはいえ比較的円滑に方針が行き渡ったと言える

領内を治めるのではなく、同盟への実質的な参加だったので、寧ろ騎士たちにとっては個々の煩雑な仕事の量が減ったくらいだ

無論、これらが一時的なもの、つまりはロックアックスの城の外に出た戦闘中の状態、すなわち非常事態であることに変わりはない

しかし騎士たちに常在戦場の心構えがあったとしても、明らかに見える形で負担が軽減されたことも事実だった


「上流階級との付き合いが減っただけでも、私にとっては快適な居場所だよ」


腰を落ち着けられる場所は狭いが、文句を言っていい立場でもないと、赤い騎士服の男は半ば諦観したように口にする


ロックアックスにいた頃よりも、そこから飛び出して自由を得たカミューは明らかに以前よりも明るかった

山々が犇めく城塞都市の石畳を吹き抜ける風に吹かれるのではなく、緑が多く茂る大地に足を踏みしめ、全身をいだかれているからかもしれない

確かにマチルダを任務で離れる時は野営が常であったし、手狭ゆえに拡張しつつ設備を整えている最中ではあるものの、こうしてしっかりと雨風をしのげる建物の一角に腰を下ろせる場所があるということが幸いしたのだろう

カミューの表面は、意外なほど穏やかだった


「騎士たちから、不満は出ているか?」


問えば、予想の範囲を超えない程度にはね、と落ち着いた声音が返る

常日頃から理知的である男は、しかし、目に見えて険というものがひそめられている

だが、マイクロトフはそれゆえにカミューの本性に近い部分が露見していると思った


こうして慌ただしい中、新しい局面を迎えたマチルダ騎士団を自分たちの手で支え、維持しつつ新たな形を共に作り上げることができたのは幸運だった

騎士団を誇りに思っているのは男も同じなのだ

当たり前のことを再認識し、マイクロトフは心底から目の前の親友を讃えた


実際にカミューが率いる赤騎士団が同盟軍の内部で果たした役割は大きい

仕事柄、対人関係や情報の精査や収集、取引の伝手など、細かな部分では専門家である赤の騎士団には敵わない

青騎士たちが不勉強であるのではなく、まさに専門外だったからだ

一方で、集団での戦闘や役回りと分担に関しては細部まで団長による青騎士たちへの意思の疎通が行き届いており、マイクロトフの教育の賜物だな、とカミューを感心させた

カミューにとっては既知あったろう事実を、赤騎士たちの前で彼らの団長自らが語った行為にこそ意味があったのだろう

結果として、ロックアックス城内で綺麗に上下で分けられていた赤と青の騎士たちの両方に、マチルダ騎士団として結束することの重要性を教えた形になった


カミューが抜け目なく、賢く、やり手であることは前々から、それこそ士官学校に入る前からわかっていたことだったが、放つ言葉の一言一句、動作の一片、行動の一部始終を取って見ても、無駄がなく考えがあってのことだということが具ににわかる

深慮があり、軽率な真似は好まない

これは自分などには到底真似できないことだな、とマイクロトフは即座に思った

加えて人当たりが良いので、敵を作ることがない

媚びているわけでもないのに、不思議だな、と思った


「下手に出れば、付け上がらせるだけだからね」


お世辞も適当であればあるほど良い

カミューが言う適当とは、大雑把な意味合いではなく、要点を絞ったもののことだ

簡潔明瞭で、嫌味がなくわかりやすい語録

無駄のない会話や交流術は、よほど目はしが効くか、頭の回転が早くなければ、それこそ天賦の才に近かった


「…俺には不可能だ」


半ば呻くように呟くと、それを聞いたカミューはうっすらと微笑ったようだ


「おまえにそれを求めること自体、行き過ぎた行為だと思うよ」


人間には長短があるからこそ適材適所で活きるし、精進の指標にもなると


「師のようなことを言う」


どこかで読んだ本の中身の受け売りだよ、と軽く返された

カミューと交わす何気ない一言一言が快く感じる


やがて、一時休戦だ、と男は言った


同盟軍での騎士団としての存在感と在り方が、見える形で彼らの中に浸透し、正規のマチルダ騎士団がこちらであることを知らしめるための努力が今後も続くだろうことを見越しての言だった

カミューの言う休戦とはすなわち、親友との関係が険悪な状態にならないように心がけるという意味だろう

誰の目も憚ることなく団長同士が議論し合える現状は、男にとっては肩肘を張らなくても済む現実なのだろう

力を抜いて、昔のように付き合える、ということだろうか


「カミュー」


行軍の途上、馬上で横に並んだカミューの、風を受けて膨らんだ柔らかな髪色が視界に広がる


「よろしく頼む」


握手を求めて利き腕の手のひらを差し出す

仲直りの証であり、これから先の未来を共に切り拓こうという無言の言葉を乗せて


数瞬間を置いて、そっとそれは握り返された


手袋越しの、一部分での確かな抱擁


男の眼にははっきりと、複雑な色が浮かんでいた


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2025年05月12日

【カミマイ9】始まりの兆し

最近B'zのアルバムを聴いているので
筆が進むカミマイです…^^;

★★★

水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより


幻想水滸伝2【カミマイ】妄想9

カミュー×マイクロトフ

始まりの兆し




これは青騎士の管轄ではない


マイクロトフは即断した


持ち回りで政務室に詰める担当騎士の一人が見つけたという書類を目にするなり、青い騎士団長はこれを携え判断を仰ぎに訪れた自身の補佐役と同じことを言った

とある要人の身辺警護と調査

会場や施設の警備に当たるのであれば青騎士も駆り出され担当することも多いが、諜報の類は赤騎士が請け負う仕事だ

どうやら騎士団内の各部署へ文書を分ける際に誤って混ぜてしまったのだろう


「急ぎ、赤騎士団へ届けてまいります」


政務室に集まった団長の親衛隊ともいうべき補佐の一人が前へ進み出る


「…いや」


俺が行く、とマイクロトフはきっぱりと言い放った


おそらく内容からして、団長以下の騎士に任せて良い代物ではないと見抜いたからだ


特に諜報関係は極秘であることが多く、漏洩を防ぐ目的で人目を避けて策議を開き、適任者を選んで内々で手配をする必要がある

厳選の上、限られたメンバーでチームが組まれるはずだ

それらの人員を選定し、配備するのは赤の騎士団長だと決まっている

他の誰にも任せることのできない、責任者としての職務だ

ゆえに騎士団の上層部でも一部にしか知らされない可能性があることから、マイクロトフが直接カミューに手渡すことを決意した


「承知しました、お気をつけて」


同じロックアックス城に勤める騎士であるとはいえ、赤騎士団は自分たちよりも上の機関だ

横並びで各騎士団が牽制し合うのではなく、飽くまで青騎士は騎士団の礎であり、最終的な決定権は白騎士団にある

赤騎士は白騎士団の片腕となり、青騎士は白騎士団の足となる

首脳陣は白騎士に集まるのが、マチルダ騎士団の独特の編成と歴史だ

無論、白騎士が独断と独裁の道を歩まぬよう、各団長が見張る役目もないわけではなかったが、それは飽くまで建前の上での話だ

少なくとも、現状ではそうなっている

実際には権限のほとんどが目に見える形で白騎士団長の元に集約されていた

それらを赤と青の騎士団長は代々危険視をしており、双方が内密に話し合うことも少なくなかった

しかしそれを離反の心ありとして摘発された過去がある

マイクロトフの前任は早々に予見して、自らの後継を選んだと聞く

多くは団長職の退任に留まらず騎士の名誉を剥奪されたが、赤騎士に白騎士団の仕事の一部を任せたことで内外のバランスを取ったということにして、その場は丸く治められた

だがすべて建前上、見た目だけの話で、結局は指令を出すのも辞令を行うのも白騎士団長の名の下で、最高の権限を白騎士たちが独占している事実に変わりはなかった

現団長職であるカミューとマイクロトフの親交に最初から厳しい目が注がれているのには、そうした理由があった

とはいえ、カミューは上から求められている以上の成果を挙げているので、白騎士団が表立って男の動向を非難することも問い詰めることもできない

足繁く青騎士団の管轄に足を踏み入れ、すぐに出てはまたそこへ向かう

その繰り返しに、不審や不快感を示す上部の連中もいるだろう

とはいえ、精々大量の依頼文書を押し付けて、嫌がらせをする程度が関の山だ

が、カミューからすれば、その行為は白騎士団の形骸化を早めるだけの処置でしかなかった

無能が本当に外側を着飾るだけしか能がない真の能無しの集団に成り果てるのだとすれば、目も当てられない惨状になる

往く往くはマチルダ騎士団そのものを破綻させかねない

カミューはたまに赤騎士団の執務室を抜け出してロックアックス城を散策し、静かにその様を見守っている節がある

情熱に燃えた眼を、長く柔らかい前髪で密かに隠しながら


マイクロトフはマチルダの今後に関して、カミューと語り合いたいと思うことは少なくない

腹を割って、膝を突き合わせて心ゆくまで議論したい

しかし今の自分たちの立場ではそれも騎士団への背反行為だと見做され、告発されてしまうのだろう


このままでいいはずがない

私情を挟まない部分でも、カミューに対してマイクロトフは思うところがあった


もし

もし、マチルダが彼らを裏切ることがあれば、その時は



おまえは


俺は


どうするのだろう



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2025年05月11日

【カミマイ8】黒の悋気

以下は、Ci-enより…!

---
続きを書き進めているのですが
なんか…普通に、普通のBLになりつつあるカミマイです@@

関係ないですが、
カミマイが所属するマチルダ騎士団の組織図が昔から頭の中にあるのですが
自分の中の赤青(カミマイ)の団には『副団長』という役職がないのですね

他の方の作品には普通に当たり前に『副団長』が登場するのですが
うちの騎士団では騎士団長一人に権限が集約されていて
あとは補佐とか部隊長とか相談役(いないかも)とかになるのかなぁ…
という感じに副団長がいない組織になっています

なぜなのかについては、
・団長の権限が強い
・副団長と癒着させない
・副団長一人に責任を負わせない
・団長に何かあったら補佐集団で相談して一時的な代行を決める
・団長が暴走したら、補佐集団みんなで止める←真の目的!
…そんな効率が、青騎士団にはあるのかなと思います

赤騎士団については専門的な仕事が多いので
青騎士団とは異なる編成で、
白騎士団についても違います
三つに分かれた騎士団に上下関係はあるものの、それぞれが独立している感じ

なんで違うのかについては、個別の得意分野があるためと
色んな過去の事件を経て、上から言われたり
上に文句を言われないように作った結果なのかなと思います
もちろん、効率も視野に入れていますが
団長の権限が強い、というのがうちのマチルダ騎士団です^^;
とはいえ、ワンマンではやっていけないので、
騎士団長は大変な役職だと勝手に思っています…
---

という感じの書いているお話の背景でした

騎士団の編成の図を詳しく書き出してもいいのですが
おそらく青騎士団の団長補佐は各部隊長クラスの人間で常に十人ほどいて
(青騎士団の部隊数はもう少し数がありそう)
マイクロトフが団長就任後に選定した執行部(団長補佐)に
かつての部隊長が選ばれたりしたのかな…と思いつつ

団長補佐の権限はあくまで補佐としての権限なので
現行の部隊長の相談役でもあるし指示役にもなれるけれど
団長の命令なしで単独で動くことはないと思います

政務室に詰めて各隊の状況とかを整理した上で
団長に取り次いでいたりするのですが
政務室詰めは各隊からも交代で派遣されていて
色々と連携を図っているのかな、と

マイクロトフは団長になる前に各部隊(全部の部隊)に所属しているので
さらに細かな仕事を理解していたりします
偏った部隊にだけ籍を置いていると全体を見渡せないので
重役につくことなく部隊を回った感じになります
補佐役になると次の執行部には選ばれないので
補佐役はやったことがないような気がしつつ
そこらへんはアバウトです
とりあえず、前任が更迭(?)されたので
マイクロトフが団長についた、という話なのではないかと思います

青騎士団長の就任に関しては白騎士団長から辞令があったのだと思いますが
役職についていなかったマイクロトフが選ばれたことに関しては
内内でなんか仕組まれていたことがあったんじゃないでしょうか

白騎士に対して、こいつ=マイクロトフは白騎士には無害っす!…というのを
アピールしたかったんじゃないかな…とかいろいろです
もちろん無能であっては困るので、マイクロトフの功績については
きちんと上(白騎士団)に報告をしたと思います
実直でまじめ一辺倒だから裏切りませんよ〜みたいなアピールの仕方で

カミューに関しては立ち回りがうまそう
素直に、専門的な部門を統括する赤騎士団の団長として適任だったのだと思います
今のところ、そんな感じで考えています

騎士団は結局、
白騎士団以外は編成と再編成の歴史を繰り返しているというイメージですね…
自分の中では、内外に向けた効率重視なのかなと思います
代々同じ仕様を受け継ぐ、引き継ぐ、という考え方は、自分の中にはないですね@@
やっぱり時代やその時の状況によって
変えられたり変わったりすると考えたほうが楽しいです

★★★

水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより


幻想水滸伝2【カミマイ】妄想8

カミュー×マイクロトフ

黒の悋気




側近の一人から入った情報に、カミューはわずかに表情を曇らせた

白騎士団長を務めるゴルドーが、マチルダ騎士団領の外部の人間と接触している節があると

ゴルドーなる男は見るからに野心家で、人柄を能く見抜く術に長けたカミューなどからすると、人の上に立たせて安心できるタイプではない

かと言って家柄も実力も、勲章の数も功績も文句のつけようがなかった

カミューはロックアックスの人間ではない

だからこそ深入りはしないようにしていたが、マチルダそのものに愛着を感じていないわけではなかった

上の連中はともかく、人材に恵まれ、若い騎士たちには故郷の者達とはまた違ったパワーがあると痛感している

特に青の騎士団などはその代表格で、赤騎士よりも平均年齢が低い

青騎士の執行部は団長の代変わりとともに都度解散し、再編成の際には先任の者は選ばれない

若返りを常に意識して作られているせいだろう

赤騎士であればカミューより年配の者は多く在籍しているが、青騎士の中で年長者と言ってもマイクロトフより十くらい上がいるかどうかが関の山だ

このまま行けばマイクロトフはカミューよりも先に騎士を辞めてしまいそうだが、それゆえ日々精力的に務めることができるのかもしれない


マイクロトフが騎士でなくなったら、自分はどうするのだろう


当たり前の答が用意されているだけだ


カミューはそっと秀麗な眼を細めた



その耳に、聞き慣れた声が届く


考え事をしながら城の周辺を散策していたのだが、いつの間にか廐舎の近くまで足を伸ばしていたらしい

声の主は、珍しく笑っているようだった


マイクロトフ


陽はすでに傾きかけていたが、どうやら今日は定時に上がったようだ

かくいうカミューは早々に仕事を切り上げて提出する書類の類は明日に回してしまっていたが、こんなところで見かけるとは思わなかった

マイクロトフは誰かと話をしている最中だったようで、こちらには気づいていない

声音が意外なほど優しく、後輩の同じ騎士に対してもそんな態度を取っているところは見たことがない

いや、あれは騎士に対するものではないのかもしれない

実の妹や、家族に対する応対に近い

青年の硬質な部分が削げ落ちた、柔らかな春の日差しのような物腰だ

素の、それこそカミューが出逢ったばかりのマイクロトフと同じだ

屈託のない笑みが口元に溢れ、そこからまばゆいほどの白い歯を覗かせる

そんな顔は見なくなって久しい

自分に向けられるのは、常に厳格なマチルダの騎士としての目線だ


「…………」


掃除がようやく終わったのか、用具を片付け、張り番のいない厩舎を後にして、青い騎士服だけに身を包んだマイクロトフが今初めて気がついたように顔を上げる

ゆっくりと、その動作の一部始終が緩慢に見えたのは、自身の錯覚だったのかもしれない

男の存在を認め、わずかに目元がしかめられる

濃いまつ毛と色で縁取られた、精悍な眼がひたと見つめる


そこで何をしている、との問いに、先ほどの穏やかさはなかった


自分以外の誰に対して

心を砕いて和やかでいたのか



心臓を後ろから鷲掴みにしたのは、黒々とした大きな鉤爪


カミューはそれを気取らせもせずに、鷹揚に微笑った


冷笑と自嘲を滲ませながら


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