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2025年05月25日

【カミマイ22】はるかなる青

気になって古のディスクを取り出して
過去の個人HPに掲載していたらしきもろもろのバックアップを
少しあさってみたのですが

ちなみに、当時…二十年以上前だと外付けHDが
めちゃ高いというか、容量も少ないし100GBとかがメジャーだった感じで
CD-R(懐かしい…)やDVDに焼いた方が早かった部分もあったんですね

なので、ディスクを読み込んで…という具合で探してみたのですが
カミマイパラレル長編小説の『ホワイト・ゴースト』と『シェイド』が
見つからなくて、再録は不可能っぽそうな印象です…

その代わり、なんか…懐かしくて
頭の中からすっかり忘れているものたちを少し見つけたので
機を見て公開できればと思いつつ

内容は至極あほです…
カミマイはあんまり遊ばなかった感じもありますが
本家サイトでアニメハム太郎妄想落書きがたくさんあるので
はじけていたと言えばそうなのですが
なんかね…笑ってしまうほどわが道を行っていて面白かったです
赤青は面白かったですね…!
なんであんなに面白かったのか、謎であります

ということで、現在進行形で完結に突き進む
カミマイの『空の民草の民』シリーズの更新はこちら…!

pixivでもシリーズでまとめてますので、気になる方は是非どうぞ…!

★★★

水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより


幻想水滸伝2【カミマイ】妄想22

カミュー×マイクロトフ

はるかなる青



グラスランドに帰ったら忙しくなる


カミューはそんな風に言いながら、部屋にあった私物の処理をしていた

ロックアックスで手に入れたものはすべて処分をして、元々持参してきたものと馬と剣を伴って、身ひとつで帰るという

処分と言っても捨てるのではなく、後輩や同僚に譲る方法で片付けていく手はずらしい

手伝いに訪れた者に優先的に手渡しているようで、すでにかなりの量がなくなっていた

すべて片付けられなければ、どこかに寄贈することも検討しているらしい

その過程で、出てきたのが先の台詞だ


「まず手始めに、私の自由騎士としての功績と実績を作らなければならないからね」


マチルダ騎士団との国交を確立するためには、カミューがそれなりの地位と信用を地元でも得なければならなかった

とはいえ、男の兄の勧めで、かなり上等な席をカマロの側で用意して待ってくれているらしい

統一戦争に参加した騎士団長の一人ということで、向こうがカミューをかなり高く評価してくれたようだ

しかし一方で、それがプレッシャーにもなるだろう

カミューは不敵にも、それくらい困難な方が面白いと言って眼を細める

元々負けず嫌いのたちで、幼い頃は喧嘩っ早くもあったらしい

ロックアックスに着いて、騎士としての体面上柔和を繕うようになってからはすっかりなりを潜めたが、カミューは元々が火のさがだ

易い道よりも、そうではない方を選ぶ

その方が、生きている実感や手応えを感じるからかもしれない

親友に語る様は、難関や難問をいくつも超えてきた男の目だった


「マチルダ騎士団長のお相手を務めるのであれば、相応の地位を得なければ釣り合わないだろう?」


…なんのお相手だ、と、若干胡乱そうな目つきで見返すと、男は肩をすくめてやり過ごした

マイクロトフは余暇を過ごすために、カミューの元へやって来たのだ


「部屋が片付いた後は出発までの日数、寄宿舎で過ごすと聞いたが」


男の動向について、マイクロトフは側近から耳にしている

元々赤騎士の団長の近くで働いていた騎士の一人だ

密命も密使もこなしてきた人物で、カミューも知っているので問題はない


「私としては宿舎などよりも、おまえの私的な寝室に泊めてもらいたいところだけれどね」


減らず口は健在らしい

故郷に帰る日が近づくにつれて肩の荷が軽くなったというよりも、重責から解放されたことが原因だろう

カミューは自らの仕事をきっちりと後任の騎士たちに分け与え、彼らをサポートしながら慣れるまで指示を行い、徹底的に教え込んだ

半端にはしたくなかったと言って、その分出立の日が後ろ倒しになったが、大事な親友を任せるのだという強い責任感も理由としてあったのだろう

すでにマチルダ騎士団の相談役の肩書きはなく、今のカミューは元赤騎士団長というだけの、役職を持たぬ一介の騎士でしかない

現役の騎士であることに間違いはないが、今度はカマロ自由騎士連合に所属することになる


マイクロトフは、騎士見習であった頃から男とは知り合いだが、赤騎士でなくなったカミューというものを知らない

自身でも持て余すような感慨にとらわれながら、友人が過ごした部屋の片付けの作業を手伝った


「それで、返答は?」


なんの話かとマイクロトフは本を片手に考えたが、どうやら寝室云々の返事を催促しいるらしい


「…宿代はどこから徴収すればいい?」


問えば、軽快な口調が返る


「騎士団長様のご所望とあらば、不肖わたくしめの体でお支払いいたしますが…?」


本気とも冗談ともつかぬ本音だった


「…有難い申し出だが、辞退する…」


わずかに染まった頬を自分でも意識しつつ瞑目しながら丁寧に断ると、くっくと男が肩を揺らしながら笑った


今だにカミューとマイクロトフの関係は清いままだ

いや、本番を抜きにした付き合いというか、睦みあうことは頻繁にあっても、結果として最後までには至っていない

カミューがその気にならないのではなく、そうなれないのではないかとマイクロトフは考えていた

今この時期に関係を深めて、行くな、帰るな、と言うことはできはしない

カミュー自身も、マイクロトフに止められることを望んではいないからだ



「私が騎士であることを辞めないように、おまえはロックアックスから離れることはできない」


いつかカミューが、戯れの最中、何度か口にしていたことを反芻する


「それでも私は、おまえがおまえの意思で私の元に現れる日が来ることを待ち望んでいるよ」


そして、目の前に姿を現した暁にはもう離すつもりはない


カミューは静かな声調でマイクロトフに宣言した

誓言と言っても良かった

そしてそれは予見であったのかもしれない


マイクロトフはカミューの一見横柄とも思える物言いに、なぜか反論する気が起きなかった


いつかは

いつかは必ずカミューに会いに行く

それでロックアックスに戻れなくなろうとも、その時は自身がマチルダを、騎士を辞す時だ

なんらかの決定を求められた時には、必ずそうする

それはマイクロトフの誓いだった

だからマイクロトフは、カミューの言葉に、ああ、と力強く頷いた


カミューには伝わったと思う

俺がおまえの元を訪れる時は、騎士ではなくなったときだ

願わくば、その時の自分が男に誇れるような存在であり続けられるように

それだけがマイクロトフの望みだった



「今日はこの後、遠乗りに出かけないか」


マイクロトフからの提案に、カミューは片言で、良いね、と言った


カミューにロックアックスとマチルダ騎士団領の景色を覚えていてもらいたい


二度と帰らぬつもりでここを立つ友人に、すべてを記憶に刻んでもらえるように


共に過ごした青春時代を忘れないように


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2025年05月24日

【カミマイ21】故郷からの来訪者

昨日『犬夜叉』のコミックを読破し終えて(やっと…)
最近何度も読み返しているのは『半妖の夜叉姫』なんですが
まだコミックが短いから読めるのですが、これが50巻とかになったら
何度も読み返す行為自体が難しくなるので
可能であれば、一部二部とかコミックの
タイトルを変えてくれるといいのかな…と思いつつ…
同じシリーズを長く続けると読み手側が疲れてしまうので
大変だな…と思ったり

某『ワンピース』は100巻まで買ってとまりましたが
本当にここまでくると、完結するまで買わないという選択肢も出てくると思います

自分のオリジナルの受メンコミックも
完結するまで買わないという選択肢も大様にしてあると思いますので
(ネーム自体はもう完結まで手元にあるのですが)
なんかもういろいろとブーメランもある
続きもののコミックに関しての感想だったり…

作者が急逝されて未完で終わったコミックも小説もあるので
やっぱりどこを切っても金太郎あめ…ではないですが
きっちり区切りよく終わって、終わって、…を繰り返すのも
シリーズ物の一つの案ではないかと感じました

永遠に続ける、というのは、作者の遺志をチームで引き継ぐことはできても
読者が永遠ではないので(苦笑)無茶や…と思ったりすることもあったりなかったりです

ということとはあまり関係はないはずですが
カミマイの『空の民草の民』シリーズは徐々に完結へ近づいております…!

★★★

水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより


幻想水滸伝2【カミマイ】妄想21

カミュー×マイクロトフ

故郷からの来訪者



おや、とカミューは自身の私室で珍しいものを見つけた


懐かしい、グラスランドで使われる公用文字のひとつだ

紙片の表と裏一杯に所狭しと書き込まれている

インクが乾かないうちに何度も書いてはその上に文字を重ねたので、所々に穴が空いており、もはや誰が見ても一様に口を揃えて紙ごみと呼ぶべき物体と化していた

何者の仕業であるのか、男は正しく理解をした上で、久しぶりだねとその犯人に声をかけた


勝手に使ってすまない、と小さな影から声が届く

カミューの机の引き出しから、彼に当てて届けられた書簡を取り出し、そこに書かれた文字を写し取っていたらしい

そもそも意味がわからないのではないかと思ったが、事実そうであったらしい

あとで訊こうと思っていた、と机の前の椅子の上から正直に答える

カミューは思わず苦笑した


「筆跡は誰のものかわかるかい?」


小さな頭のマイクロトフの隣に覆いかぶさるようにして机上に肘をつき、その顔を覗き込む

すぐにかぶりが振られたのを確認し、カミューは手紙の中の一節を読んだ

男の妹の名がその中にあることに気づき、あ、と少年は思い至ったらしい

彼女だ、と言って、しかし同時に首をかしげる

あまりよくは彼女のことを覚えていないらしい

どういういきさつやからくりがあるのかは不明だが、時折カミューの元に姿を現すこの幼いマイクロトフの姿をした少年は、親友と同じ名前と、おそらく彼に近い思考を持っていた

深く追求をしなかったのは、どこをどう解釈しても彼が誰に対しても無害であることと、カミューの生き方や方針にその存在が何の影響も与えなかったからだ

たまに来て、話をして、お茶を飲んだり、時には外へ一緒に出かけたりする

お守りをしているという認識がカミューの中にあったわけではなかったが、ロックアックスで赤騎士の団長を務めていた頃は、せがまれてよく城内を散策したものだ

マイクロトフは男に手を引かれたまま物珍しげに、自分が統括しているだろう青騎士団の詰める館内を眺めているだけだったので、カミューにとっても気分転換にはなっていた

団長としての責務を果たす大きい方のマイクロトフとも会っていたはずだが、予想通り、自分以外は感知できないものの類であるようだ

当初は疲れて幻覚でも見ているのかと考えたが、ひたむきでその上邪気もないことから、もう自然とそういう客人なのだと解釈して受け入れてしまった

その上、小さいマイクロトフは自身にひどく同情的で、何かあるたびに、その言動からは慰めるような必死さを感じた

青年騎士であるマイクロトフがこちらに素っ気ない、他人行儀な態度であれば、何だあれはと腹を立てるし、なじったりもする

大事な親友に対する態度ではないとカミューよりも先に非難をするので、大人気なくこちらが怒る気にもなれない

カミューが感情的になる前に先手を制されているようでもあり、文字通り少年によって慰められている印象だった

ゆえにこの少年の存在は、カミューにとって不思議で奇特な、そして明らかに害のない友だと言えた



「マイクロトフは、私と私の母のことは覚えているんだね」


以前、大分昔の話になるが、彼女の誕生日の贈り物を共に選んだという奇妙な経緯がある

しかし、カミューの兄妹たちに関してはよく覚えていないようだ

ほぼ記憶から欠如しているらしい

…おかしなことだが


マイクロトフ当人は自分の故郷で暮らした経験があるということだろうか

もはや詮索をする気がないので、どんな事情があっても別段驚きはしないが

子どもが好きな対象の名前だけを鮮明に覚えているということは、確かにあるのだろう

好きな、というものの中に、自分の名が含まれていることは光栄だったが


「マイクロトフは、帰りたいと思うのかい…?」


抽象的な問いかけだったが、少年には伝わったようだ


「今はまだ駄目だ」


カミューが心配で、と継ぐ


「私が?」


わずかに目を見開いて少年の頬に視線を当てると、懸命に文字を写生しながら小さな友人は言った


「カミューはまだ、俺のことを気にかけているのだろう?」


だから、心配だと言う


毎度のことながら、重要な部分が完全に欠落している回答だった

けれど具体的ではないおかげで、余計な波風が立たずに済む

思いつきで答えれば、それが答になる

そんな問答だった


「…もはや、習性に近いだろうね」


マイクロトフの身を案じるのは


うむ、とまた小ぶりの頭が頷いた


「俺は石頭なので、カミューには迷惑をかける」


そう言って見上げてくる少年の頬を、カミューは手袋を脱いだ手で優しく撫でた


「あいつにも、マイクロトフほどの殊勝な心がけがあればね」


明らかな皮肉だったのだが、少年ははたと思いついたようだ


足が届かなかった椅子から飛び降り、ばたばたと急ぎ足でドアへ向かう

小柄な姿態が纏う腰帯のない大きめの衣服が、動きに合わせて波のように揺れた

また来る、と言って、カミューの見送りの言葉を待たずに開いた扉の奥へ吸い込まれるように消えてしまった


慌ただしいことは今に始まったことではないので、若干呆れつつも、カミューは笑い出したい気分にとらわれた

少年が残していった書きかけの用紙とペンを元の位置に戻し、引っ張り出された家族からの書簡を片付け、上着を脱ぐため寝室へ移動しようとしたその耳に、ノックの音が届いた

今日はおとないが頻繁らしい


「俺だ」という明瞭な一言だけで、カミューは即座に踵を返した

ジャケットは無造作に机の上に放り投げて


部屋のぬしが扉を開ける動作の一部始終を見守っていた青年の顔を見るなり、カミューの相貌には自然と笑みが刷かれた

そこに見つけたのは、仕事着を脱いで私服に着替えた長身の仏頂面だったからだ

本人にその意識はないだろうが、綺麗に短く切り揃えられた頭髪の下で口を噤んでいると、少々虫の居所が悪そうに映る

けれど目配せをするように視線がかすかに動くと、途端にそれが偶像であったということを見る側に知らせる

黒く濃いまつ毛で縁取られた目元は、凛として艶があり、美しい

男にこの形容を当てはめる行為自体が不遜だと思ったが、マイクロトフはカミューの中で賞賛に値する特別な容姿の持ち主だった


その口で、実家から、と青年は挨拶もなく切り出した


「俺の実家から、執行部宛に酒が届けられていたのだ」


カミューに手渡すのを忘れていた、と訪問の理由を淡々と語る


入口での立ち話も何だから、と言い、室内へ招こうとすると、マイクロトフはためらった

明らかな拒否ではなかったが、すぐに戻るつもりだったのだろう

このあとに予定でもあるのかと問えば、特にないとの返答だった

時間があれば馬の様子を見て、見回りをしてから外で夕食にありつこうと考えていたと

欠かさず街を見て歩くのは、もはやマイクロトフの日課だと言っていい

酒の贈り主についてもついでに問うと、妹が、とわずかに言い淀みつつ最後まで答えた


「仲良くなった騎士がいるらしい。その延長だ」


今回の贈り物の理由は、と

延長上であるとの意味は、お目当以外にも贈ることで本命があきらかになるのを誤魔化した、という主旨なのだろう

周囲に悟られないための、撹乱作戦

彼の実の妹御も所謂適齢期になったのか、と思わずカミューは内心で感嘆した

生まれつき身体が弱く、マイクロトフとは離れて暮らしていたが、その彼女が騎士団で良い相手を見初めたらしい

話もなく勝手に…、と一瞬マイクロトフは兄らしく不満な顔つきになったが、さすがに身内に関わる話題だったので態度を改めた

事情を正確に理解し、マイクロトフが持参した酒瓶を恭しく受け取った後、カミューは、では、と断ってから自身の意思を表明した


「私がおまえに、今夜のお付き合いを申し込んでも?」


構わないかと尋ねると、夜は久しぶりに空いたのではないか?、と逆に問い返された


城勤めはいつものことだが、私的な時間の確保はお互いにまだ難しい

貴重であるならばいっそ、心許せる相手と過ごしたい

そう正直に本音を明かすと、マイクロトフは少し虚を突かれたような眼をして黙り、そして言った


「俺もだ」


俺もカミューと過ごしたかった


あの少年が見せた混じり気のない心と同様の恋人のその純な言葉に、カミューは心底から歓迎の意を示した


腕を伸ばし、引き寄せる


抱きしめた体に、自分の体温が直接伝わるように

何度もなんども、マイクロトフの米神に口づけた


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2025年05月23日

【カミマイ20】忘れじの空

カミマイ(赤青)本の再録というか
どうしようかなと思いつつ…
空の民草の民シリーズも長いし
ホワイト・ゴーストも長いし…
馬王子は雑ネタだし…という感じで悩む今日この頃です…!

★★★

水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより


幻想水滸伝2【カミマイ】妄想20

カミュー×マイクロトフ

忘れじの空



故郷から仕官しないかとの誘いを受けている

抑揚なく発された男の言葉を、マイクロトフは静かに聞いた


カミューの生まれであるカマロ自由騎士団領については、度々話を聞いている

そして男がいずれはそこへ帰ることも

騎士になる以前から決めていたことで、故郷を離れたカミューがロックアックスに単身で訪れたのは正騎士としての称号を得るためだ

騎士という身分を抱える国は他にも幾つかあるが、領地の内外でその存在を認められ、身の保証となるような正式な官職や役職として通用するところはさほど多くない

世の中には、後ろ盾のない自称であったり、あるじを持たない信条だけの騎士もいる

マチルダ騎士団も、組織として独特の設立と遷移の歴史がある

土地とその領民、そして都市同盟のために、騎士たちだけで作られた自治の象徴

三つに分かれる騎士団で構成された形態そのものに、幼いカミューは興味を引かれた

そこへ仕官し、正式な騎士としての地位を得て、おのれの力を試す

とはいっても高潔な志だけでなく、三つある騎士団とやらの一つに食い込み、名を挙げたいとの野心ももちろん少年の頃のカミューにはあった

次男坊ゆえに一家のしがらみも少なく、それゆえふるさとでの存在意義というものがカミューにとって希薄だった所為だろう

どこへでも自由に行って、職を探し、安定してからは家族を持って暮らせばいい

ただ、自身がどこまでやれるのか、カミューにとっての力試しの意味も当然あった


明らかな目的を持って訪れた城塞都市ロックアックスで、カミューはマイクロトフと出逢い、彼という素直な魂に惹かれた

風土を象徴するような純粋な黒に最初は目を奪われたが、マイクロトフの中に土着の騎士であるマチルダの根源を見たからだ

騎士になるために生まれたような、というのは過言であったが、マイクロトフは彼の尊敬する祖父の姿を追い、追い越そうとひたむきに努力を積み重ねる少年だった

当時は背丈もなく、大きな目とあたたかい手のひらと丈夫な骨格を持つ、少し頑固なところのあった一つ年下の彼が、カミューの初めての異郷の友人となった

マイクロトフは、特に世話焼きだったわけではないのだろう

士官生にあてがわれた宿舎を管理する上官から気にかけるよう頼まれたと出逢ってすぐに理由を明かしたが、長男としての生来の責任感の強さからか、カミューが慣れない土地や習慣に難儀をしないよう彼なりに便宜を図ってくれた

それこそ毎日、顔をあわせる都度、色々なことを話したと思う

日常や非日常の些細なことから、将来の在り方、身の振り方のことまで

色恋に疎い朴訥な、わるく言えば面白みに欠けるマイクロトフとは、艶っぽい話をあまりしたことはなかったが

カミューはマイクロトフを快い存在だと感じ、彼の真白の肌と黒髪と真っ黒な珠玉の宝石を愛した

真っ直ぐに視線を伸ばし、常に真正面から対峙する、その頑なな魂を愛した

彼の中には、カミューにとっての果てしない空があった



空はここにある


いつかマイクロトフから聞いた言葉だ

ロックアックス城から離れた教会の近く、肌寒い時期であるにも関わらず晴れた蒼天に片方の腕を伸ばし、騎士見習だった時分、故国を別にする友にマイクロトフはそう答えた


ロックアックスの城は、彼にとっての空だった

だから決して手の届かぬ、遠い存在ではないと

ロックアックスとマチルダという名と象徴は、マイクロトフの心そのものだった




マイクロトフはカミューの言を受けて、少し思案したようだ

カミューにも、その心が伝わる

長年、ツーカーの仲でやってきただけのことはあるのだろう


「…カマロ自由騎士連合か」


グラスランドに存在する自治領の一つだが、歴史はある

マチルダとは異なるが、同じ騎士を輩出する国だ

どちらが上であるかという議論よりも、同業者的な意識をマイクロトフは持っていたらしい

故郷の手紙でも度々同じ内容が添えられていたので、今の情勢についてもカミューはよく理解していた

両親の息子を呼び寄せたいというささやかな意思を感じ取りつつ、そろそろ身を固めても良いのではないかとあちらは考えたのだろう

元々戻る方針でいたカミューには、好きにしてよいという親の気持ちと、息子の身を思う親心の二つが見え隠れする

無論、カミューとてここまでロックアックスに長居をするつもりはなかった

伴侶や家族をここで得たとしても、彼らを連れてグラスランドに帰る気でいた

要は、デュナン統一戦争が収束してしばらく経ち、そろそろ良い頃合いだろうと考えて、向こうから打診をして来たのだろう

その事実を隠すつもりはなかったので、カミューはマイクロトフとのいつもの会話の中でそのことを切り出した

もしここが食堂などの公の場であれば、日常会話として流されていただろうが、そこはカミューとマイクロトフが詰める政務室だった

カミューは元赤騎士団長として、今は期限付きの相談役の一人としてマイクロトフをサポートする任に就いている

なぜそんな抽象的な役に就いたのかという、その理由は簡単だ

マイクロトフが請け負った最高責任者の座の一つに権限を集約させるためと、騎士団の分断を阻止するため

大きく環境が変わった騎士団内部の派閥争いを抑え、一枚岩となる必要があったためだ

その目的を果たすために、カミューとマイクロトフはかつて三つに分かれていた騎士団の間を行き来し、伝手を広げて信頼できる人材や人員を確保して来た

協力が得られるまで粘り、現状を正しく理解した上で、根気強く交渉を続けた

そのために、彼らがえがく未来というものを具体的に組み立てて組織し、騎士たちの前に提示しなければならなかった

マイクロトフだけでは回らない諸々の手はずをカミューが指揮して調整を繰り返し、困難の一つ一つを解決した

マイクロトフのみでは到底補いきれない大仕事だとわかっていたからこそ、敢えて相談役として、期限付きの片腕の一人として奔走した

裏からの手はずも取引も、マイクロトフに事前に説明をし、了承を得た

内部の透明化こそが、信用を得る第一歩だったからだ

マイクロトフは生来策謀などを苦手とし、交渉は飽くまで戦術の上でしか用いない

対人の場面や組織の中ではやはり駆け引きが重要であったので、その役割分担が必要だったからだ

マイクロトフは万能ではない

だからこそ彼を補佐し、時に矢面に立って議論できる人材が要る

部下ではなく、共に築きあげることのできる気骨のある騎士たちが

カミューは色の区別なく、それが可能となる現役の騎士や元騎士たちの人選を行って登用した

最高位はマイクロトフだが、青年自身は独裁を嫌う

マイクロトフは時に熱弁を振るうが、頭に血が上って見境がなくなることはない

彼は自身の剣に懸けて誇り高き騎士であることを信条とし、彼の心身は民衆を守るために存在する

人間関係を重んじ、謙虚で礼節をわきまえ、人々を守るという大義の前には私情をころせる騎士だった

他者への強制を殊の外きらい、相手がうんと言うまで妥協をしないし途中で投げ出しもしない

大体はマイクロトフの相手が根負けをするか、その志を汲んでくれるかして折れるのだから、まったく裏工作の必要がない稀有な人物だった

しかし、順序の省略、彼の負担を軽減するためには、立ち回りのうまさも有用になる


このまま自身が彼の側でサポートを続ければ、安泰だったのかもしれない

けれど、自分もマイクロトフも先を見ていた

統一戦争で活躍した英雄たちも、時代が過ぎればいずれ忘れられてゆく

名をほしいままにしたかつての勇者が驕り、誤った道を歩み、部下や仲間や民衆の手にかかって非業の、自業自得の結末を迎えた事例も多い

幼い頃から本の虫だったマイクロトフはよく口にしていた

彼を真の意味で騎士の鑑と言わしめたのは、そうした伝記の類から自らを戒めることを常に知っていたからだ

だからこそ頭が硬いし、一本気に一つのことに専心し、最後までおのれを貫けるのかもしれない


カミューはマイクロトフに、グラスランドの一領地であるカマロと国交を持つ気はあるか?、と尋ねた

マイクロトフもそれを予期していたのだろう

ああ、と深い頷きとともに肯定が返った


マイクロトフにとっても同じ騎士の名を頂く自由騎士団には興味があったようだ

交流して交易や和平は疎か、騎士同士の意見交換や留学などの行き交いが活発化すれば良いと考えたからだ

領主を君主として持たない自治権を持つ正規の騎士団とその連合というのは、やはり珍しい


そうでなくてはな、と思うと同時の、離れがたい感傷

カミューはロックアックスを後にしたら、故郷に骨を埋めるつもりだ

その真意は、もしマイクロトフが昔の自身の言葉を覚えているのだとすれば、自然と伝わったはずだ


私はもう二度と戻らない


グラスランドに帰るということは、そういうことだ



「カミュー」


マイクロトフは最高職である白の長衣に身を包み、立ったままでいる

男の前では、彼一人が席につくことはない

それがマイクロトフの親友に対する正直な態度と意志だからだ


「今、俺たちが手がけていることを中途半端にしてはおけん」


カミューが請け負っていた部門の管理や業務の引き継ぎもあるだろう

それまで出立の日を延ばしても良いか、と尋ねてきた


「今すぐに実家へ帰るつもりはないよ、マイクロトフ」


おまえの気が済むまでここにいる

見届ける役目は、自分にしかできないだろう?、とカミューは言った

いつもの余裕のある笑みを口元に載せると、青年は、そうだな、と頷いた



別れは、もうすぐそばまで来ていた


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posted by 水堂とらく@はりこのとら紙老虎 at 10:38 | 日々の更新2025
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2025年05月22日

【カミマイ19】戦いのあと

昨日ようやく、壊れた洗濯機の代わりの新しい洗濯機が届きました…!
容量は以前と同じなのですが、ほんとにスリムになったというか…
昔の洗濯機よりも余計な部分をそぎ落として
掃除がしやすくなったのかなぁ…と思いつつ
お風呂の水を活用するタイプではなかったので
別売りでポンプを購入することになりました

そして、カミマイは今日の更新から
いよいよ佳境に入るのかなぁ…と思います

引き続き読んでいただけるととてもうれしいです…!

★★★

水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより


幻想水滸伝2【カミマイ】妄想19

カミュー×マイクロトフ

戦いのあと



デュナン統一戦争が終わり、ロックアックスで待っていたのはマチルダ騎士団の再建という大仕事だった

すでに予想していたことであったとはいえ、マチルダに属する騎士を一人残らず掬いあげた上で改革を実行するのは並大抵の作業ではない

離反側についた者、ゴルドー派、中立派、そしてゴルドー監視の下で謹慎や蟄居を命じられていた元騎士など

赤青白の騎士団の垣根にこだわらず、マイクロトフはカミューとともに編成案を作り、練り、事ある毎に吟味して意見をぶつけ合った

とにかく情報の量が足りず、各所に足を運んでは騎士たちの処遇と今後の配属について奔走し、時間を尽して話し合った

一から作り上げるのと、壊れたものを拾い上げてすべてを丸く収めるのと、どちらが楽かと問われれば断然前者だ

しかしマイクロトフはマチルダ騎士団にこだわり、その名を維持することで騎士たちと領民たちの身の安全を図った

自身もそれに異論はなかった


思い返すだけでも、本当によくやったと思う

不和がないように人材を振り分け、能力と経歴を見比べて適所に配置する

騎士団が再建されるまで青騎士のまとめ役として最高責任者の位に就くことを辞退していたマイクロトフは、カミューとともになんとかそれをやり遂げた

それでも地盤が固まり騎士団内部が安定するまで数年はかかるだろうと言った青年の顔には疲労感が滲み出ていたが、カミューが居てくれて良かったと、心からの謝意を伝えてきた

その様をわずかに眩しげに見返しながら思った

彼は確かに数多の功績を挙げ、一騎士団長から最上位へと上り詰めたが、果たしてそれが正解だったのか

永遠に手の届かない存在になってしまったのではないか

正しいことだとは頭で理解しつつも、後悔がそこになかったわけではない

そう思った



自分はマイクロトフを手に入れたかった

現時点でも肩を並べることのできる唯一の、稀有な存在である事実は認めよう

高め合い競い合う好敵手として常に傍らで、彼の一歩前を征き、道を切り開く友でありたかった

同時に、如何ともし難いかつえを身のうちに抱いたまま、マイクロトフ一人を高い位置まで押しやった


カミューは後悔していた

そして後悔していなかった

マチルダを維持するためにはマイクロトフは不可欠だろう

少なくとも、この変革の時期と、しばらくの間は


後悔は、その言葉の次に興るものだ

だが、と


抱きたい、手に入れたい、おのれだけのものにしたい

現実はその欲求とは真反対であるからこそ、カミューはわずかであれ悔いていた



多忙を極める互いに、時間は残されていないことを正確に理解しながら


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2025年05月21日

【カミマイ18】有色の日常

洗濯機がようやく今日届く手はずなのでワクワクしつつ
…早くお洗濯がしたいです^^;

ということで、今日は病院へ通院してきます…!
天気が晴れたり雨が降ったりと色々ですが
どなたさまもつつがなくお過ごしください…!
カミマイの完結まで、あと10話…!

あ、あと、原稿作業中に過去の赤青作品を発掘できたものについては
どこかで公開できればと思います

空の民草の民シリーズはもしかするとすべて再録できるやもしれませんが
内容的に…というか文字数的に非常に長いです!
HPの更新アプリが手元にないのでサイトに載せることもできず…
悩みますね……うーん…!

★★★

水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより


幻想水滸伝2【カミマイ】妄想18

カミュー×マイクロトフ

有色の日常



カミューから指摘されるまでもなく、マイクロトフはサウナが好きだった

水風呂はどちらかと言えば苦手だった

全身の肌がふやけるようだし、個々で水温の好き嫌いがあるし、湯船に浸かったままでじっとしている時間が無駄のように思えたからだ

同盟軍の居城であるデュナン湖のほとり、マチルダ騎士の駐留場所にサウナが設置されて以来、マイクロトフは可能な限り就寝前にはそこへ行くようにしていた

たまに午前中の任務が終わるとその足で向かうこともある

自分一人しかいない時は静かに目を閉じて熱さを感じて滲んでくる汗を堪能し、前後に人が居合わせた場合は彼らと簡単な話題で盛り上がった

サウナはマイクロトフにとって小さな社交場だった

そして何よりも喜ばしかったのは、垣根があると思われていた赤騎士たちからも話を聞く機会が増えたことだ

カミューについての噂もよく耳にする

今でもやり手だと評判で、若い時分から種々の戦功と戦績を挙げていたので団長の任に就く前からの有名人だったと

もちろん過去には手痛い失敗もあったが、元々気が利くということで周囲の覚えがめでたかったし、円滑な組織の運営の手腕に関しては皆一様にその成果を褒め称えた

無論、騎士として剣士としての技量や腕に関してはその役職に恥じないくらいカミューは強い

士官学校時代の同期だったマイクロトフが公言するくらいだ

カミューの場合は強いと言うより巧みだ、と表すのが適していたかもしれない

あれは元々喧嘩慣れをしているのだろうと、マイクロトフは昔から考えている

戦いの駆け引きがとにかく旨い

状況判断が教本通りではなく、文字通り手慣れている者の動きだった

しかも、抜群に運動神経がいい

高位の紋章を扱える資質もさることながら、やはり騎士としては自分よりも一段上にいる人物なのだろうとマイクロトフは思った

しかしそれゆえに鍛錬の指導者としては、幼い頃からから祖父の手ほどきを受けていたマイクロトフほどには適さない

カミューの高度すぎる技術について理解して実践できる者が赤騎士内でほとんどいないというか、伝わらないというか、要するにお手本にならない

精々紋章に関する知識と実践の話を交えて、使いどころや戦術を指南するくらいが向いていた

カミューは多方面で努力家である一方で、個々の戦闘に関することに対しては天才というか秀才なのだろうと、マイクロトフなどは思う

生まれがそもそもロックアックスではないのだから、長短がそれぞれにあって然るべきだとも考えた


赤騎士たちからカミューの話を聞いて、部下たちに対して手厚いのだな、とマイクロトフは実感した

組織の長として気遣いもしっかりしており、細部への声かけも頻繁で、そのやり方も嫌味がないし、指示や説明も丁寧でわかりやすい

嫌な素振り一つ見せずに淡々と実務をこなすし、上下への対応にも差がないし、受け答えがさらっとしており、熱くなる場面が一切ない

加えて、理解力に優れている

それゆえに下からは慕われているという

実際のカミューはな…、と言い募りたい気持ちを抑えつつ、マイクロトフは良い気分で親友である男の評価に耳を傾けた


「われらが団長の話を聞いている時のマイクロトフ様は、実に嬉しそうですね」


ふとそんな感想を聞かされ、マイクロトフはそれは当然なのではないかと即答した

友を褒められて喜ばぬ人間などいない

そう答えた

相対した側はかすかに驚いたようだったが、青年が冗談ではなく本心から言っていると認めたようだ


「…カミュー団長は、この地に来てからよくマイクロトフ様のお話をされるようになりました」


「…………」


一瞬言葉に詰まったが、そうか、と答えたマイクロトフの相貌には、意識せずに笑顔が生まれた

専ら仕事の場面では堅物だと表されるが、裸になってしまえば肩肘を張っていても仕方がない

自然と漏れた笑みに、赤騎士たちは青騎士団長に親しみやすさを覚えたかもしれない

それくらい、サウナでのマイクロトフは素直だった




カミューが変わったことに、赤騎士たちも気づいていたか


身近に接する上司なのだから、当たり前かと思い直す

マイクロトフ自身も、城を出たカミューの変化を強烈に感じている

物腰がさらに柔らかくなった上に、何というか、盛大に余裕がある

本部での会議があって、その帰路、遅い昼食をデュナン城の酒場で共に摂った時も、あれやこれやとマイクロトフの世話を焼いていた

少々うるさくはあったが、カミューの声は耳に優しい

それが本来のカミューという人間であることを昔から知っていたので、マイクロトフは男の好きにさせた

カミューがしたいことをさせ、自分もやりたいようにやる

たまに喧嘩腰になりそうになるが、カミューは終始機嫌よさげにマイクロトフを見る

自分が親友を誰に憚ることなく独占していることに悦を感じているのかもしれないが、それはお互い様だ

二人で居られる時間の、なんと温かいことだろう

人目があっても構わず顎に指を伸ばしてこちらを振り向かせる行為は行き過ぎだと思うが、いちいち目くじらを立てるのも疲れてしまった

カミューのさせたいようにさせる

どうせそれ以上のことはできないのだから


ただ、これが束の間の出来事であり、戦いの最中のほんの一コマでしかないのは事実だ

明日はどうなるかわからない

だからこそ、今を大切にしなければならない

一歩一歩を踏みしめるように

この先に、自分たちの未来があると信じて





「…おかえり」


執務室の前で待っていたらしき影に、マイクロトフは顔をしかめる

もはや反射的なものなので、決して向こうを煙たがっているわけではない

今夜もロックアックス式の風呂に入ってきたので、マイクロトフの機嫌は良い

カミューも来ればもっと話が弾んだのだが、と言葉をかけると、そのうちご相伴に預かるよ、と返された

就寝前に、男は必ず挨拶に訪れる

それが互いの日課になりつつある



確かめるように口を合わせ、抱き合う、それだけなのに


マイクロトフは常に思う


どこまで絆されるのか、自分はこの男の熱に


それは存外、わるくない気持ちだった



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2025年05月20日

【カミマイ17】甘い仕返し

右手の腱鞘炎はよくなっているのだけれど
悪化する場合はあっという間になりそうな、そんな感じですね…
おそろしい…

壊れた洗濯機の代わりに新しい洗濯機が届くのを待ちつつ
手で洗濯物を洗っている今日この頃です

★★★

水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより


幻想水滸伝2【カミマイ】妄想17

カミュー×マイクロトフ

甘い仕返し



カミューは正直、湯船に浸かる風呂は好きだったが、蒸気にまみれるサウナは好きではなかった

生まれ育った故郷のカマロでは、湯に浸かる習慣よりもどちらかといえば水を浴びるか体を拭くだけで済んだからだ

グラスランドの気候は湿度自体が低いので、汗をかいてもすぐに表面が乾いてしまうので日々の不快感が少ない

そのため、昼夜の寒暖差が激しかったのは余談だが


そんなところで生活をしていたのでロックアックスの、特にマイクロトフら青騎士たちの風呂好きというものは、カミューにとってさほど共感できるものではなかった

とはいえ、公然とマイクロトフの裸身…半裸だが、を至近距離で眺めることが叶う状況というのは思いの外わるくない

士官学校時代にもそれらしい施設へマイクロトフに連れて行かれた経験があったが、当初は襲ってくる熱さと目眩に根負けをしてあまり長居をすることができなかった

しかし今のカミューは誰に憚ることもない立派な成人男性だ

頑丈すぎるマイクロトフの比ではなかったが、耐性は十分についている

何度か水風呂に浸かる行程を含めて、最終的にはこざっぱりできるものだなと、今なら思えなくもない

そもそも、自分以外に青年が惜しげもなく半身を晒しているということが我慢ならないのだ

いや、あの一致団結することしか頭にないような脳筋たちから見れば、マイクロトフは店に並ぶ芋と一緒なのかもしれない

それは言い過ぎだろうとは自覚しつつ、マイクロトフのすべてを色目で眺めているのは幸いにして自分だけなのだろうと考える

実際にマイクロトフの体や見てくれは、石工で作られたどこかの美術品の青年像のような、理想的な体型をしている

芸術を能くする人間からすれば、書き写したくなるほど垂涎ものの見事な体躯だ

プロポーションがいいというのではなく、あるところに必要な肉がついて、それがいささかの嫌味のない肌の色をして輝いている

見る者が見るとおかしな妄想しかできなくなる、一種の男らしさの中の色香がある

嗜好を刺激される者しか感じない衝動であるとはいえ、カミューにとってマイクロトフの体はあまり他人に見られたくないものではあった

騎士服ならばマイクロトフの裸体を存分に隠してしまえるが、サウナでは完全な無防備だ

タオル一枚で下肢を覆い、それ以外を恥ずかしげもなく晒したまま、部下である騎士や、最近では居合わせた赤騎士にまで声をかけて話をしていると聞く

現に、これまで接触の少なかった青の騎士団長の噂が側近以外の騎士たちから聞こえてくるようになったほどだ

思ったよりも気さくというか、分け隔てなく話かけてくるとか、意外と表情が豊かだとか、おおらかで優しい方だとか

そんなものは、お気に入りのサウナに入ったマイクロトフの頭のネジが少々外れているからであって、普段と百八十度変わって見えるだけだ

仕事人間であるマイクロトフは、仏頂面で厳格な騎士の鑑と言われるような男だ

公的な場で顔を付き合わせることがあれば、あの時と同一人物なのかと不思議に思うくらいの豹変振りだ

あれがマイクロトフの素だと思われては心外だ

余計なライバルが増えてしまうだけではないか

恋敵が増えたところで、一向に負ける気はしないが


そんな感じに、カミューの小言というか、嫉妬から来る恨み言は尽きることがない

欲求不満だと言われればそれまでだが、あまり面白くない状況ではある

マイクロトフを独占して堪能する暇がないと言えば、その通りだが


やはり欲求不満なのだろう

自らそう結論を出して、カミューは身を翻した


マイクロトフを襲いに行く


そんなことを胸に秘めているとは思えないほど堂々とした足取りで、赤の騎士団長は廊下を突き進んだ




「人払いを」


入室するなり短く宣言をされ、マイクロトフは固まった

用事のために団長室を訪れていた騎士たちも呆然とした

しかし次の瞬間、火急の用かと思い改めて、真剣な表情で退室の礼を取った

マイクロトフは、終わったらすぐに呼ぶ、と言って彼らを退がらせた

こちらも厳しい表をしている

おそらくこれは反射的にしていることで、業務の一環だと捉えているのだろう


「カミュー」


名を呼ぶなり、マイクロトフは椅子の上から立ち上がった

同盟軍内で、現在の赤青の騎士団は同格だ

そうした編成と実務の内容にしたのは、カミューとマイクロトフだ

ただ、戦術の面では得意分野が異なるので、赤と青の両騎士でバランスよく人員を構成、配備し、任に当たらせるように仕向けている


目線の高さが異なる状態での対話は相手への非礼ではないが、どうやらマイクロトフの体には上下関係の是非というものが本能的に染みついているようだ

目上への礼節無くして騎士道は貫けないという、古風なタイプなのだろう


何かあったのか、と、マイクロトフは逼迫したような雰囲気の中で親友に問うた


そんな青年の腰を無造作に捕らえると、マイクロトフはまた固まった


カミューは何をしている?

何をしようとしている?、と、頭の中で疑問符が浮かびまくっているのだろう

その横髪に親友の鼻先が埋められた瞬間、ようやく全てを察したようだ


「乳繰り合っている場合では―――」


その先は、軽く触れたカミューの唇で封じられた

声にならず、マイクロトフが喉で呻く

そういう反応が余計に嗜虐心を刺激することを知らないのだろう

ぶるりと全身が大きく震えたのを確かめてから、カミューはようやく友人を解放した


声が大きいよ、マイクロトフ、と優しく囁かれて、外に見張り番の騎士がいることに思い至ったのだろう

頬や顎にすり寄ってくるカミューの肌や髪の毛を顔を背けることで避けつつ、マイクロトフは声を潜めて言い募った


「何のつもりだ、カミュー…」


忌々しげに、といった風情だ

しかしカミューは取り合わなかった


「おまえに首輪をはめに来た」


またしてもなんのことか、マイクロトフにはすんなりとカミューの言ったことを飲み込めなかった

考えているうちに団長服の戒めを解かれ、カミューの手がその下に滑り込んでくる

あまりにも滑らかな動きすぎて、逆にマイクロトフは反応しきれなかった

あっという間に青の長衣が足元に落ちる

男の手際の良さと素早さに舌を巻く暇もなく、襟の留め具を外され、そこにカミューの温かな吐息と共に舌を感じた

マイクロトフは反射的に身を震わせ、羞恥に思わず歯を食いしばった


「っ何をしている…」


言いながら、カミューの背中の服を引っ張り、引き剥がそうと試みる

腰を抱えられているので突き飛ばすことができず、逞しい身を捩った

面白いように弄ばれていることを自覚しているのだろうか

精悍であるはずの相貌に朱を刷いて、懸命に漏れる声音をころしている様は、カミューの眼からすれば非常に悩ましい

事を荒立てれば外に聞こえてしまうだろうと懸念しているのは明白だ

張り番の担当騎士に気づかれて乗り込まれでもしたら、どう釈明をすればいいのか、考えつきもしないのだろう


「カミュー、とりあえず、場所を」


上半身の急所を男にねぶられながら、マイクロトフは声調を殊更潜めて訴えた


せめて仕切りの向こうで及べ、と言われ、カミューは仕方なく机の前から移動した

マイクロトフが夜に眠るベッドの位置まで来ると、今度こそ相手を寝台の上に押し伏せた


形ばかりだったが、人目からわずかに遠ざけられたおかげで心に余裕が生まれたのか、昼間から盛っているのか?、とマイクロトフは不機嫌な面で漏らした

赤騎士も暇ではないだろうに、と皮肉を口にする


マイクロトフに触れているカミューは、底抜けに機嫌良く笑っている

楽しくて堪らないといった様子だ


「おまえが協力をしてくれれば、手早く済ませることができるよ」


そう言って、マイクロトフの襟を手際よくくつろげる


「協力…?」


もはや抵抗するよりも、何が目的なのかの真意の方がマイクロトフは気になったようだ

首輪とカミューが言ったことを、その頭の中で反芻する

入室した親友のどこにも、そんなものは見当たらない


マイクロトフの心中を察したのだろう

ここに、とカミューは言った

そのまま再び男の熱い吐息を感じて、マイクロトフは息を飲んだ

舌先の滑りを感じ、マイクロトフが無意識に吐息を漏らす


白過ぎる肌の色の所為だろうか?

感度が良すぎるな、と、カミューは一人苦笑を浮かべながら、マイクロトフの反応を楽しむように首筋を辿り、吸っては止まり、長い接吻の旅を繰り返した


しばらくして、マイクロトフは男の真の目的を正しく理解した


なるほど、首輪か……


きっちりと肌の表面に浮かんだらしい所有印の列に満足したのか、カミューは満面で微笑んでいる

これで人前で半裸を晒す気にはならなくだろうと、勝ち誇ったような顔をして


相手の嬉々とした顔つきを下から正視して、マイクロトフはようやく意図を察したようだ


「カミュー……」


呆れていたそれが、徐々に怒気へと変わる

騎士服を着ていれば誰に見咎められることもないその場所は、服を脱げば途端に周囲に悟られる

公然と見せて良い代物ではない

特に、意図を持って何度もつけられたものに限っては


自分を気持ちよく風呂場へ送り出したくないという、そういう魂胆か、と

気づくのが遅すぎだ、と言わんばかりの男の態度に、さすがのマイクロトフも頭に来たようだ


意趣返しとばかりに相手の胸ぐらを掴んで睨みつける

カミューは可笑しそうに笑ったままだ


「おまえにもつけるぞ」


目には目を、と言った途端、その明るく透明な瞳の色が光を得てきらりと瞬いた

いたずら心を刺激された子どものような目つきだった


「それは光栄」


にっと口端が持ち上がり、草原の狼のような笑みを浮かべる


瞬間、マイクロトフは何を言われたのかがわからなかった

しかめっ面のまま、きりりと男らしい眉を更に寄せる

その黒い宝玉のような双眸を見つめて、カミューは鷹揚に笑んだ


「私にとっては勲章だよ、マイクロトフ」


言うなり、どうぞ、と、わざわざ赤い団長服の襟元を片手でくつろげて肌を見せつけてきた男に、マイクロトフは絶句を通り越して唖然とした

要は、同じように首に口付けろと言われているのだ

今、ここで


「…………」


挑まれて引き下がることもできずに、マイクロトフは瞑目した

諦めというよりも、自尊心と葛藤しているような、祈るような、聖職者を堕とした瞬間のような、カミューの嗜好を根本から満足させる姿だった

こんなこととはいえ時間が惜しいと考えを改め、マイクロトフは覚悟を決めたのか、その口元がきゅっと真一文字に引き結ばれた


カミューの笑みは途切れない


意を決してマイクロトフが口先を寄せると、次の瞬間カミューに抱きかかえられるようにしてベッドの上に押し倒された


約束通り最後まではしなかったが、その夜から数日間、サウナで赤青両騎士団長の姿を見かけた者はいなかった

―――そんな、戯れの日常


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2025年05月19日

【カミマイ16】憩いの夜

わが家の洗濯機が突如動かなくなりましたので
買い替えをすることに…!

電化製品の買い替えってほんとに……(大変)……なのですが
耐用年数が10年でそれ以上を超えると必然的というか
良く持った方だという話がもっぱらなので
成人後の人生60年とか想像すると
六回は買い換えなければならない計算になるのかもしれません
洗濯機に限らず、冷蔵庫とかコンロとかレンジとか…なのかなぁ
給湯器も暖房もそうですね…

とはいえ、15年持てば御の字なのかな?…と思いつつ

わが家の愛猫おひめよりも若かった(洗濯機が)、と身内が教えてくれました
うちのおひめには長生きをしてほしいです

★★★

水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより


幻想水滸伝2【カミマイ】妄想16

カミュー×マイクロトフ

憩いの夜



……できた

完成した、というのは、騎士団長の執務室の改装の話ではない

それはもう大分前にやり終えており、マイクロトフを一瞬呆けさせたのはそんなことではなかった

彼らの団長が座す室内にやって来て青騎士たちの目を輝かせたのは、ロックアックス式サウナがデュナンの同盟軍本拠地に設置し終わったという報告だ

これにはマイクロトフ以下青騎士たちによる盟主への説得というか力説というか働きかけが功を奏して、騎士団が配置された城の一角に大浴場とは言えないけれどそれなりの人数を入れられる施設を作ることに成功した

石と岩とレンガを組んで作った秘密基地のような岩屋に窓と扉がついているだけのような一見簡素な設えだったが、中は結構広い

水風呂は外に設置してあり、そこには屋根があるので一応雨はしのげる

ロックアックス式のサウナは焼いた石を準備してそれに水をかけるだけなので、場所と建物さえあれば簡単に作れた

もちろん熱した石の交換は重労働だが、長時間持つように石材を厳選した

入れば体が温まり、体温調節は水風呂で事足りる

まさに、簡易なリラクゼーションと言っても過言ではない、ロックアックス出身者にとっての憩いの施設の完成は正に朗報だった

今から入れます、との連絡を受けて、マイクロトフはさすがに一番風呂ならぬ一番サウナは労をねぎらう意味で部下たちに先に入るよう勧めた

サウナという言葉を聞いて、マイクロトフの本心は浮き足立ったが、その姿を配下の騎士たちの手前、見せるわけにもいかない

後始末の仕方も知っていたので、自分は最後でいいと断った

疲れている者や夜勤明けの就寝前の者たちが先に入るよう指示を出し、自らは夜に入ろうとそう決めた

そして、思い出したように付け加えた


「完成の報告は、赤騎士団にも伝えてくれ」


マチルダ騎士団が誇るサウナは、騎士団であれば誰もが遠慮なく使っていいし、誰の入浴も歓迎する

ただ、使用や作法、健康面での注意は慣れている者が必ず周知するように、と付け加えて


見張り番を立てる必要はないが、使い方くらいは紙に書いて入口に貼っておいても良いかもしれない

サウナと聞いてからの青騎士団長の血色は、顔の表情と相まって、めちゃめちゃ良い男振りだったので、周りを惚れ惚れとさせたことは言うまでもない




一日の業務と依頼をきっちりと片付けたのち、机の上を綺麗にして、青の団長であるマイクロトフは意気揚々と新設された風呂場へ向かった

さすがに混雑をしていたようだが、夕食の時刻を過ぎてからしばらくすると、ピークは徐々におさまったようだ

脱衣所ではすでに身綺麗になった騎士たちで溢れている

最高の気分転換でしたと晴れやかな顔を見せる面々を見送り、マイクロトフも脱いだ騎士服を手早くたたみ、ブーツを置いて石造りの建物のドアを開けた



居合わせた騎士たちと透明な湯気の中で談笑をしていたマイクロトフが何気なく戸口に目をやったのは、ほんの偶然だった

そろそろ夜も更けた頃に、また一人、足を踏み入れる者があったからだ


「カミュー」


マイクロトフの声には、珍しいなという響きがあった


「おまえの服が脱衣所にあるのを見つけたのでね」


視界に現れたのは、騎士団の中では珍しい肌の色を持った親友の姿だ

さすがに青の長衣は団長職のみ身につけることができる代物だったため、かなり目立っていたようだ

綺麗に畳んだつもりだったのだが、確かに染まった青色の範囲が通常の騎士服よりも断然多いので、見つけやすかったのだろう

あとはブーツのサイズでわかったとカミューに言われ、マイクロトフを含めた一同の首を一様に傾げさせた


男は辺りを見回し、居並ぶ騎士たちの顔を確認した


「周知は受けたが、赤騎士団は私一人のようだね」


カミューはタオルを巻いた腰に優雅に手を当て、軽く嘆息をしたようだ

単に青騎士が作ったと聞いたので、初日に入るのを遠慮しただけかもしれない

そうは思いつつも、マチルダの騎士は青だけではないのだからと思い直したようだ


「明日、私の方からも彼らに伝えておくとしよう」


折角の施設なのだから騎士たち全員が利用した方が賢明だと


「是非そうしてくれ。ここに来れば、自然と会話も広がり、人の輪も広がる」


色の別なく裸の付き合いができるぞと、マイクロトフは笑顔を見せた

カミューはそれにちらりと一瞥を送ると、「おまえはサウナの申し子だよ」と言って肩を竦めた

根っからのサウナ好きはマイクロトフだけに限ったわけではなかったが




「…昔から思っていたことだが」


隣に腰掛けた親友に、すっかり忘れていたとはさすがに言うことはできなかったが、マイクロトフは何気なく声をかけた


「カミューは優男ではないのだな」


着瘦せをするのか、はたまた愛刀が細身だからかどうかはわからないが、男はよくそう評される

背丈はマイクロトフの方がわずかに高いが、騎士たちの中でも彼らは長身の部類に入った

あとは身のこなし方が原因か、と考えながら、改めてカミューの半身をマイクロトフはしげしげと眺めた


入浴中の面々同様、カミューも半裸というか足のふくらはぎまで布で覆われているが、上体のバランスはマイクロトフの目から見ても綺麗なものだ

両肩にもしっかりと肉がつき、胸や鎖骨にも無駄のない筋肉がついている

マイクロトフより若干柔らかそうな肉質だが、元々の地肌がわずかに濃いため異郷の雰囲気が強い

カミューの柔和な印象を与える顔立ちと比較して、かなり男性的だと言えた

マイクロトフは評論家ではないので細かなことは言えないが、立派に雄の体をしている

そんな気がした


男同士だし、見習の寄宿舎生活時代に他のメンバーたちと一緒に風呂に入った経験があるので、マイクロトフには気恥ずかしさというものがない

裸の付き合いは青騎士団では珍しくないものだし、恥じらう方が異常に映る


どういう意味かな?、と憐れむような目線がカミューから投げかけられる

具体的な理由までは念頭になかったので言葉に詰まり、マイクロトフは少し眉を寄せた

けれど思ったことを臆することなく口にした


「カミューは元から肉付きがいいだろう。士官学校時代から、すでに鍛えられていたからな」


当時を回想するに、同年やそれに近い少年たちと比べてもカミューは上背があって目立っていたし、体も完全に仕上がっていた

鍛錬を積んだというよりも、日々の生活で培われてでもいたかのように


その理由は極単純なことだよ、とカミューは言った

苦笑のようなその表情はやはり、マイクロトフを気の毒だと思っているようにも映る


「元々私の実家は裕福と言える家系ではなかったので、幼い頃から働きに出ていた。思いつく理由はそれだけだよ」


年少者といえど、力仕事でなくとも一日中体を動かし家畜の世話や店を手伝うことはできる

特にカミューの故郷ではよほどの名家でなければ大抵の子どもは、体がある程度出来上がれば稼ぎに出ていたと聞く

そこで早くから社会性と自立心が養われ、自然と必要な場所に肉がつき力を養うことができたと

ロックアックス生まれのおまえとは環境が違うのだと言っているようだった

資質という部分もなかったわけではないだろうが、そもそもが違うのだとカミューは言った

おかげで休んでも筋力は衰えないし、今も少ない鍛錬で肉体の維持ができると


マイクロトフは思わず唸ってしまった

羨ましい限りだと言ってしまいたくなったが、働かねばならなかった境遇が半ば慣習化していたという文化の違いを同時に痛感せずにはいられなかったからだ

カミューの故郷の方針と、こちらの生活は違うのだなと改めて思う


「俺は剣を振るのが子どもの頃から趣味だった。だから鍛錬を苦だと思った経験はないが…」


体を動かしているおまえは水を得た魚のようだからね、と男は微笑った

そして腰掛けた椅子の真横から手で顎を下から掬われ、何事かと目線をカミューに向ける

すると、話し込んでいるうちに二人きりになったぞ、と男は周囲に視線を巡らせて示した

マイクロトフは、今度こそ絶句した

用が済んだからというには、人があまりにもきれいにいなくなり過ぎている

話をしていたカミューとマイクロトフ以外、いつの間にかサウナの中は無人と化していた


「大方、私たちに気を利かせてくれたんだろう」


マイクロトフは思わず額を押さえたくなった


「…それは一体、何の冗談だ…」


騎士たちが団長相手に回す気など、仕事の場面だけで十分だ

余計な詮索をされたのであれば、明日弁解をしなければならない

気にするな、と

無茶なことを言っている自覚はありつつも、言わなければ気が済まないと思った


その瞬間、マイクロトフは別のことに思い至った

そういえば、と、カミューに問う

口調には、どこか気遣うような気配があった


「あれから、よく眠れているのか…?」


マイクロトフは、赤騎士団長室で就寝するようになったカミューの様子を尋ねた

寝床が同室だった頃は、どうやら寝付くまで大分難儀をしていたようだ

自分の所為であると決め付けてはいなかったが、もしかするとと思わなくもない

それをカミューに直接問うことは、それこそ男が以前言った野暮というものだろう


カミューに欲されている

そのことはマイクロトフも常に自覚しなければならない

それでもカミューは待っていてくれているのだから


誓わせたのはこちらだ

承諾したのがカミューであっても



おかげさまでね、と友人は答えた

マイクロトフの顎の下にはまだカミューの長い指が触れている

首が疲れると思ったが、じっと男を見つめることをやめる気にはならなかった


測るようなマイクロトフの眼差しに、カミューは苦笑を漏らした

そんな顔で見つめられたら、ただで帰したくなくなってしまうよ、と言って


マイクロトフは意表を突かれたのか、む、とわずかに顔をしかめた

しかし、逃げ出す気はなかった

それ以上のことはできないとわかっているからこその度胸だったのかもしれない

意外とこいつは性格がわるいな、とカミューは本気で思ったが、表には出さなかった


「では、しばらくここに留まろう」


そう言って、マイクロトフはカミューを見た

マイクロトフにとっての就寝の時間はとっくに過ぎていたが、後片付けも残っていることだし、焼き石が冷めるまで待ってもいいと考えたのだろう

何よりもカミューと過ごす時間が大切だと思った



わずかに湿った明るい色の頭が持たれ、マイクロトフの肩に髪が触れる


相手の心の内を占め、また独占しているということがこんなに快いことだとは思わなかった

互いにそれ以上踏み込むことを禁じているからだろうか

カミューは内心で焦れているだろうに、勝手な話だが、満たされる

危うい綱渡りの上にいるというのに、この場に二人しか残されていないことに安堵する


帰したくはないな、とカミューから低い呟きが聞こえる


そうだな、と同意を示すことは余計に相手を苦しめるだけだろうと思った


体の脇に回ったカミューの腕に触れ、マイクロトフは再び窓の外を眺めた



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2025年05月18日

【カミマイ15】暁は遠く

ギリギリ路線を歩む(?)カミマイです

★★★

水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより


幻想水滸伝2【カミマイ】妄想15

カミュー×マイクロトフ

暁は遠く



溢れる吐息がどちらのものかわからなくなった頃、ようやく体を離され、マイクロトフは深いため息を全身で吐いた

カミューは名残を惜しむようにしばらくその黒い睫毛をじっと見つめた後、マイクロトフから離れ、自身のベッドの上に戻った

ただ口を合わせて互いを耽溺し合っただけなのに、マイクロトフの脳髄は痺れるような陶酔に体の底からわなないている

カミューという毒であり薬である男は、マイクロトフのつぼを確実に抑えて逃がさない

触れれば触れるほど毒が回って、更に手を伸ばしてしまいたくなるほどの危険な熱そのものだった

マイクロトフは決して詩人としての素質があるわけではないが、そんな男もいるのだなと、この親友と関係を深めてからというもの、つくづく実感させられた


「よく眠れそうかい…?」


暗がりの中、くぐもった笑い声が密かに届いて、青年の顔をむっとさせる

カミューといると、最低でも一度は不機嫌な面構えになってしまうのはなぜだろう

相手が常に自分に心地よい敗北感を抱かせるからかもしれない

まったく歓迎できないことではあったが、今となってはそれも普通のことになりつつある

カミューとこうすることが、ごく自然の日常に


ああ、と強く言い捨てて、就寝のためにマイクロトフは目を瞑った


「おまえも早く休め」


意識が落ちる前にそう命じると、努力するよ、と応答が返った

おやすみ、と、いつもの声が聞こえ、マイクロトフから小さく応答が聞こえた瞬間、安らかな呼吸とともに青年の全身がベッドに沈み込んだ


「おやすみ、マイクロトフ」


カミューは声を潜めて謳うように囁いた



やがて完全に親友の意識が闇に飲み込まれた様を確認すると、再び床に降り、カミューはマイクロトフを見下ろした

白い容貌には昔と変わらぬ安らかさがある

同室だった当時も同じようにこのはっきりとした目鼻立ちの親友の寝顔を眺めたような気がする

頬の赤みは減ったが、先ほどまでカミューになぶられ、自らも求めてきた唇の色は変わっていなかったかもしれない

大人びて、確かに大人だが、格段に手に入れ難いものになった

マイクロトフは自分のことをしかと欲したが、体の関係は、少なくともロックアックスに戻るまで深まることはないだろう

それが口惜しくもあり、渇きを思い起こさせる原因になっているが、マイクロトフの考える通り、愛だの恋だのに興じていい状況ではないのだろう

自らであればそれすら飲み干して戦況に臨む気概でいるが、おそらくマイクロトフ自身はこの戦いのもっと先を見ているはずだ

自分自身で所属した組織に疑問を持ち反旗を翻した責任、マチルダ騎士団の本来の在り方、そして改革を、身を賭して実行に移す腹積りでいる

目の奥にある志は、確実に未来を見ている

それを揺るがないものにするには、色恋は邪魔なのだ

マイクロトフは二つを同時に両立、行使できない狭量であるとも言えるし、一方で一途でもあるのだろう

ひとつに専心し、必ず成し遂げるという強い意志は、揺るぎなきものでなくてはならない


それを助ける立場になることはあっても、挫く者になってはならない

カミューが思うほど、マイクロトフの愛は軽くないのだろう

一見穏やかで深く、そして太くどこまでもつながるものなのだ

だから


カミューはふと自身の顔に自嘲が浮かんでいることを自覚した

頭ではわかっていても、腕を伸ばして手に入れたいという欲求が常につきまとい続ける

例えあちらからいくら唇を重ねられようと、見つめられようと、カミューを真の意味では満たせない


私の切り札はおまえが持っている


そうつぶやいて、カミューは部屋を後にした


マイクロトフの隣で全てを忘れて眠るためには、まだ時間がかかりそうだった



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2025年05月17日

【カミマイ14】朴訥が花

朝から食器というかガラス製の重い(…)
計量カップを割ってしまったので
百均で買ってきます…!重くないやつを…!!!!!

ということで、カミマイは続くのでした…!

★★★

水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより


幻想水滸伝2【カミマイ】妄想14

カミュー×マイクロトフ

朴訥が花



本拠地の増設にマチルダ騎士団の力を借りたいとの要請を受け、マイクロトフは即座に補佐役の一人を呼んで手配に当たるよう指示を出した

元々関所の修理や修繕など、簡易なものであれば自分たちの手でやっていたし、ロックアックスでは専門職を招いて定期的に指南を受けていた

マイクロトフは団長位に就くまでは青騎士の各部隊に籍を置いていたという経緯もあり、その担当になったこともあるので抵抗はない

人手が足りなければ、今でも彼らに遠慮なく手を貸した

元々、体を動かすことが本分のような騎士団だ

土木関係に専門的な見識と腕のある補佐役も数人かかえており、彼らの判断で作業に適した騎士らを選定させ、素早く任に当たらせた

城や拠点の拡張や改築などは、青騎士たちにとっては朝飯前で、警戒に当たる警護や見回りなどよりもひっきりなしに動き続けられるのでむしろ有難いと思う者も少なくなかった

土埃や泥にまみれるのが好きな騎士と言っては少々言い過ぎの感はあるが、マイクロトフ自身も皆と汗する手作業や肉体労働がきらいではなかった



朝の件があったのち、特にそのことに関して誰も忠告も懸念も指摘もしなかったが、団長補佐の一人が当たり障りのないようにマイクロトフの前に進み出て、殊更きつく詰襟を着込んだ上司の許可を得てから思うことを伝えてきた


「団長専用の寝所を我々が空けますので、今夜からそこで休まれては如何ですか」


上下の別なく騎士たちが数人で一部屋に集まり、今でも寝泊まりを続けている

さすがに色の違う騎士団同士が同室になることはなかったが、皆で詰めれば一部屋くらい空けられるとその騎士はマイクロトフに提案した

正式な同盟軍内での会議の出席のみならず、各所での打ち合わせや手配などで忙しく立ち働く団長である青年を気遣って、しかと休眠ができるように計らうという主旨の内容だったが、彼らの本音はマイクロトフの身の安全にあるのだろう

例の赤騎士団長に無体な真似を強いられているのではないかと、大方心配をしてくれているのだろう

プライベートな事柄なので敢えてはっきりとは誰も明言しなかったが、マイクロトフは部下たちに案じられているのだということをすぐさま理解した

しかしそんなことくらいで彼らの懸念材料になってはならないと考え、弁解も謝意もマイクロトフは彼らの前では口にしなかった


「俺は今後、執務室にベッドを運んで寝る。おまえたちは今まで通りを続けてほしい」


正直なところ、マイクロトフは専用の個室などあてがわれても、着替えと就寝以外に私的に利用する目的がそもそもなかった

青騎士団の執務室は、ロックアックス城のものよりも狭い

大勢の青騎士が行き交い、別々の部署の責任者が詰めて話せるような広い会議室もない

入れ替わり立ち替わり騎士たちが入退室を繰り返し、マイクロトフも執務机の前で立ったまま指示を出すことが多かった

就寝場所として適していないことは確かだが、長椅子を運び込むよりはベッドに横になれるだけでも大分ましなのだろう

訪問者からは見えないように仕切りを作り、そこに団長服をかけて休むことができればそれでいい、とマイクロトフは言った

寝入ってしまえば、どうせ朝まで起きないのだから


「…この際、我々の手でこの部屋を拡張してはどうですか?」


建築や建造の心得のある者が多い青騎士らしく、騎士団長室の敷地面積を増やしてはどうかという意見があがる

実際に、自分たちにはそれが可能だ

マチルダ随一の団結力を誇るがゆえに、おそらく驚くほどの短期間でそれを成してしまえるだろう

また、その作業は戦場に出るわけではないので、騎士たちにとっては比較的安全な仕事であるとも言えた


「…俺は構わないが、問題がいくつかある」


ひとつは、青騎士団の執務室だけを拡張してはカミュー以下赤騎士たちに示しがつかない

次に、城の内部を自由にいじって良いのか許可がいる

最後に、安全性はもちろん、予算の確保


後ろの二つは盟主と軍師に直接尋ねることとして、問題は一つ目だ


カミューの許可をもらいに行くことそれ自体は構わないのだが、やはり一方だけの執務室を広くするのは恰好がよろしくない

バランスを取るべきだと、マイクロトフは考えた

無論、騎士団内に不平が出ないことを慮ってだ

そんな些末なことに目くじらを立てる輩は赤騎士の中にはいないよとカミューに諭されるのが落ちだろうが、問題はそこではない

団結を必要とするなら、必要最低限の体裁は整えるべきだ

対外的にも、内面的にも


「では、赤騎士団長の執務室も同じように拡張しましょう」


うむ、とマイクロトフは大様に頷いた


「できれば、赤騎士団の部屋はこちらより豪勢に頼む」


一瞬虚を突かれたようだが、確かに体面上そうした心積もりは必要であるだろうと察し、進言した団長補佐の騎士は、図面に書き起こしてまいりますと断って、知識のある騎士数人を伴い、別の部屋へ移動した

ここがロックアックス城内であれば青騎士団の政務室の一角を借りれば済むのだが、彼らの駐留を許されたこの場所がまだまだ手狭であることは否めない


「もう少し、軍師殿に融通をしていただくか…」


今でも十分、大所帯であるマチルダ騎士団には無心してもらっている気がするが、組織ゆえに割かねばならない経費や、回してもらいたい設備や部屋はある

これ以上わがままを言って、迷惑がかからねば良いが



だが、マイクロトフは完全に失念していた

拡張工事が済むまでは、カミューと寝所を共にしなければならないという現実を



マイクロトフから工事の件を聞かされたカミューは、実直な親友の詰めの甘さに呆れたような苦笑をその頬に滲ませた


マイクロトフがその意味に気づくのに数分の時間を要したことは言うまでもない


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2025年05月16日

【カミマイ13】深層の露見

カミュ―には幸せになってほしいカミマイです

★★★

水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより


幻想水滸伝2【カミマイ】妄想13

カミュー×マイクロトフ

深層の露見



駄目だ

駄目だ、とマイクロトフは苦しげに息を吐いた


こちらが怯んだ隙を見逃さず、追い詰めるような強さで、マイクロトフを引き寄せたカミューの唇が頬を避けて喉を這う

生殺与奪の権利を男が有するかのように、喉仏に舌を這わせ、歯を立て吸い付き音を立てる


何が駄目なのかとカミューは間近で問うた

熱い滾りを宿した声はマイクロトフの鼓膜に直接届いた

光をひそめ、色を濃くした飴色の双眸には赤を思わせる炎が揺らめいている


マイクロトフは深いため息をついた

すべてだ、と言ってしまいたい衝動をなんとか抑える

言ってしまえば、臆病だとカミューはマイクロトフを罵るだろう

そんな屈辱に耐えられる自信は、今はなかった


カミューの指先が耳裏を伝い、少し緩んだ横髪に触れる

朝の鍛錬で水をかぶり、しとどに濡れた黒髪に鼻先を寄せる

そのまま後頭部を抱くように手のひらが回され、もう片方の腕で腰を捕らえられ身動きができなくなる

いや、はねのける意思さえあればそうすることは容易かったのかもしれない


カミューはマイクロトフの視線を正面から捉えたまま、シャツのボタンを器用に外した

均整のとれたマイクロトフの腹筋が露になり、カミューは指の腹でそこをなぞった

鍛錬だけでここまで見事に鍛え上げられる者はいないのではないかと思われるほど、恵まれた肉質だ

所々に傷痕の残る表面は張りがあり、意外と手触りがよい

カミューはマイクロトフの体が昔から好きだった


触れる都度、びくりと大きな震えが走る

嫌悪の反応でないことは、上気した青年の顔と、わななく唇から不規則に漏れる呼吸からも明らかだった

カミューの手全体で存分になぶられたマイクロトフは、しかし懸命に口中で舌を動かし、言葉を継いだ


「…婚前での交渉は、駄目だ」


「……………」


やっとのことで口から出たのは、自分でも時代錯誤な言い訳だったと思う

マイクロトフはそれでもなんとかこの窮地を切り抜けようと試みた

触れてくるカミューの熱さに、これ以上この場で絆されるわけにはいかない


騎士たちに痕を見られたことも痛手だが、さらに朝の公務に遅刻をした上、体の動きが鈍くなっていたら弁解のしようがない

なんで自分がされる側だと決めつけているのかはさて置いて、私的な情事でそんな事態になったのだとしたら、指導者として周りに示しがつかない

部下たちへの申し訳なさに、自分はその場で団長の職を辞してしまうかもしれない


それだけは、今の現状、マチルダの未来のためにもあってはならない

どんな理由があったとしても、祖国への離反の引責は自身が取る

マイクロトフはそう心に決めていた


だから、駄目だと言った

流されて、うやむやのままにこの先を受け入れて、迎えて良いはずがないと

仮にカミューとそうなったら、マイクロトフは今の自身の信条が揺らぐ気がした

石頭だと罵られようが、流されたままで志を二つも両立し、維持し続けられる自信がなかった



マイクロトフの発した言葉はカミュー自身を拒否しているとも取れるし、期限付きの停戦を嘆願しているようでもある

マイクロトフはこの行為自体を「やめろ」と言っているわけではないのだから


だとしたら、それが甘さだな、とカミューは思った


そして自分も、大層この親友に対しては詰めが甘いようだと自覚する


本来であれば、このまま膝を割って押し伏せても相手は拒めない

拒めない決定的な理由があると、カミューは直感した


しかしこの先に至った場合、強引に事を進めた場合、マイクロトフの側に今度は別の理由を与えてしまう

カミューが無理に進めたから、自分の意思ではなかったと

本心を自覚することなく、相手に責任の一端を押し付ける

それすらもマイクロトフは自らの不徳、不覚悟の結果だったと自責の念をいだくかもしれない

それがカミューは気に入らなかった

一方だけの思い込みで深まる関係など、あってはならない

笑い話で終わらせてはならない

真に相手を欲するのであれば



「…仕方がないな…」


マイクロトフは婚姻を約束した良家の子女や生娘ではない

なのに自分は何をやっているのだとカミューは思った


どうかしている

そうまでしてでも、意固地なこの男を、深い部分から絡めとって手に入れたいらしい


自嘲を滲ませ、押し伏せた相手の剥き出しになった肌にカミューは強く吸いついた

明確な意図を持って、きつく、さらに痕が残るように


「っつ……」


マイクロトフから押し殺した呻きが漏れる

痛みを訴えてはいたが、苦痛だけではなかったようだ

頬を紅潮させ、睨みつけてくる夜闇のような深い色の眸には、薄い靄のようなものが浮かんでいる

生理的なものだろうが、戦いの傷や痛みに体が慣れていても、一方的な戯れには不慣れであったようだ

亭主のいるご婦人に押さえつけられ、関係を求められるような場面など彼の過去にはなかったのだろう

この堅物を相手にそんな暴挙に出る勇気のある女性ならば褒めてやりたいところだが、単なる想像であっても深い嫉妬を覚えずにはいられない

それが男であれ女であれ、この友人に無体を強いることが叶うのは自分一人であれと心の底から願った



「…今はまだ駄目だ、という解釈で良いのかな?」


マイクロトフ、と、カミューは底冷えのするような低い声で囁いた


確認を促され、さすがに「今後も一切手を出すな」とは言い難い状況であることをマイクロトフは理解した

もう、戻れないところまで来てしまったのだと


マイクロトフにはカミュー以外の男に迫られた経験はない

ない、と断言してもおそらく良いはずだ

慕われた経験はある

しかし断固として、マイクロトフの心も体も動かなかった

なのに、カミューに対してだけは、理由をつけなければはねつけることができなかった


団長職だから

色が違うから

監視下にあるから

マチルダの行く末が目の前にあるから


すべて真実であったし、正論だと思った

今、カミューに自制を促している理由もそのためだ


だとしたら、ここでマイクロトフ自らも覚悟を決めなければならない

ぎりぎりの境界で踏みとどまっているカミューに対して、誠意を見せる覚悟を



「カミュー…」


マイクロトフは目を瞑った

一回、二回と深呼吸を繰り返してから、厚い瞼を持ち上げた


ゆっくりと拓かれた視界には、烟るような淡く明るい頭髪を持った友の顔があった

その先をと願うように、長い睫毛が秀麗な男の眼差しに深い影を落としている

流されては駄目だと自身を戒めながら、マイクロトフはため息のような言葉を自分が吐くのを聞いた


「俺は、おまえを」


カミューはその続きをしかと耳にし、喉の奥でかみしめた


だが今は駄目だと続けるマイクロトフのひそめた目線を、ひどくつらいもののように見つめた


白い頬を何度も指の腹で撫で、やがてカミューは深い嘆息を吐いた

本当であれば、思いと真反対の要求を突きつけるマイクロトフを殴りつけても良かったのだろう


マグマのようなうねりが、カミューの中にはある

堰を切って溢れ出すのを今か今かと待ちわびているそれを宥めるには、まだ足りないと思った


マイクロトフは苦しそうな表情で、その様を見返している

互いに溺れるには時期がまだ整っていないとマイクロトフは考えているのだろう

……それでも


カミューが動くと、マイクロトフの首筋に小刻みな震えが起こり、反射的に瞼を閉じた


唇に当てられた温もりに、マイクロトフはカミューを感じた

啄むような優しい接触でマイクロトフを解し、やがて促されるように開いたわずかな隙間を見つけ、カミューの舌先が滑り込んだ

友愛でも親愛でもない証のそれは、カミューの乾いた大地に流れる河を潤した

マイクロトフが自身を受け入れ、応えていることに、徐々に理性が麻痺していく



時間が止まったように互いの温もりに溺れ、耽溺し、やがて瞼を持ち上げた

初めて真正面から受け止めた接吻は、現実味があるのにひどく穏やかな心地を誘った



誓ってくれ、とカミューは言った


マイクロトフの痺れた脳に直接語りかけるように

心の臓に刻みつけるように




私以外に決して心を許さないと


私以外には体を許さないと



「カミュー」


喘ぐようにマイクロトフはその名を呼んだ


「誓ってくれると言うのなら、私はおまえのためにどんな困難にも耐えよう」


これから起こるすべてを指して、内包して、カミューは言った


マイクロトフはカミューを自身の道連れにするつもりはなかった

マチルダ離反の責任を取り終えた後、必ずカミューの思いに応える

応えるという答をカミューに出す


とはいえ、それを公言するのも恥ずかしいというか、今はまだ腹立たしい

大体、カミューの口づけは巧みで旨すぎる

どこで学んだんだと不審に思いながら、自らと比較して些細なことに憮然としてしまう


内心を誤魔化すように、照れくささを隠すように、マイクロトフは横を向いた


「カミューは俺に、修道士になれとでも言うのか…?」


ぶすっとむくれたような青年に、男は微笑いかけた

騎士団きっての色男の名に恥じぬ、晴れた秋の空のように鮮やかな風貌だった


常に騎士としての節制に努める手前、禁欲を貫くのは大儀でないこととはいえ、なんだか腑に落ちない

最初にカミューに提示したのは自分だとはいえ


しかし宥めるような甘さの残る親友の顔を見ているうちに、マイクロトフの不満は自然と消えた

カミューという風に吹かれて、呆気なくどこかへ吹き飛んだのかもしれない



その代わり、私の魂はおまえのものだ



とろけるような笑みを深くして耳元に息とともに吹き込み、カミューは再びマイクロトフに口づけた

もう二度と忘れられないように、逃れられないように

長い指を、頬に首に指に絡めながら


渇きから解放されたカミューの温もりがわずかに離れ

その唇が続く音を形にする



―――永遠に



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2025年05月15日

【カミマイ12】青い覚醒

文字の行間のお話

個人的に昔は文字を詰め詰めにしてテキストを書いていたのですが
今は改行のみでただただ書き連ねる形態にしている理由は、
文章を段落分けするのがめんどくさいというだけの
箇条書きの延長上であるのではないかと思います

思ったことをつらつら書いている…
キーボードではなくタブレット端末の画面から打っている…という感じなので
多分これ自体、小説とは言えない感じなのがいやだと思う方も多いと思います

昔は詰め詰めに書いていた反動…だとも思うような…

視力が低下していくと
大きめの読みやすい文字と行間がほしくなるのかなぁと思いながら
【カミマイ】のみならず、オリジナルの【龍飛王×鼓翼】も
どんどん話を書き進めているといった具合です

ある意味で、
頭の中のものを書き出すペース(速さ)維持のための
変な文章…文章とは言えない文章になっていると思います

おかしいという自覚はあるけれど、
段落分けをして文字を清書(整理)する暇すら今は惜しい…!…という感じですね…
どんどん書きたい…!という…!

色々とご迷惑をおかけします…@@

そして、こんなものでも構わないぜよ…と言って
お付き合いくださる方には本当にありがとうございます…!

★★★

水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより


幻想水滸伝2【カミマイ】妄想12

カミュー×マイクロトフ

青い覚醒




重い、と一言口に出してしまえば、この拘束状態から抜け出せたかもしれない


マイクロトフの目醒めの時刻は早い

明けの鷄が鳴くまでに細胞が起床のシグナルを全身に送る


なぜこんな事態になっているのかわからなかったが、狭いベッドでさながら獣の親がわが子に寄り添うようにカミューが自分に密着した体勢で眠っている姿を見て、マイクロトフは唖然とした


カミューの顔が近い

間近にある男の少し甘みのある容貌に、反射的にマイクロトフは顔をしかめた


…狭い寝台に無理矢理収まって、全身が痛くならないのだろうか

そんなこと考えながら、マイクロトフは居心地がわるそうにわずかに身をずらした


昨夜は寒かったのだろうか

ということは、自分を布団代わりにしたのか?、との疑念が一瞬脳裏をよぎったが、かけたはずの毛布はカミューの寝床のシーツと一緒に無造作にまとめられていた

この状況に対する判断に迷いつつも、とりあえずマイクロトフは朝練の約束があったので青騎士たちが待つ中庭へ移動することにした

体をどかすようにしてカミューを自分のベッドの上に残し、相手を動かした拍子に乱れた自身の夜着の襟を正す

カミューの端正すぎる鼻筋からは規則正しい寝息が漏れ、存外よく鍛えられている肩や胸筋がゆっくりと揺れていた

熟睡できているらしい様を認め、マイクロトフは無意識に胸を撫で下ろした

さすがに蹴り飛ばして追い出す気になれなかったのは、あまり寝つきが良くないらしいカミューの体調を慮ってだ

さほど休眠は必要ないと男は豪語するが、疲れを感じていないわけではないだろう

それでなくとも赤騎士団は、ロックアックスで行っていた公務とは九十度違う任に就いている

現場での仕事は主に青騎士が担当していたのだから、同じような任務に交代制とはいえ内政担当だった頭脳派集団の彼らが当たるとなれば、過重労働だと訴えられても仕方がない

マチルダ騎士が屈強とは言わずとも逞しい部類であるのは騎士として当然だが、中には新たな体制に不慣れな者もいるだろう

カミューは環境の変化に苦心する部下たちに気を配りつつ、自らの職務もきっちりと遂行してきた

一方でカミュー自身の意思であるとはいえ、同盟軍への加入はマイクロトフに共感して従った形であるのは事実だ


カミューには借りがある

マイクロトフはそう考えた



朝の稽古は元々マイクロトフ一人でやっていたのだが、マチルダを離れてから日が経つうちに、自分も、と参加を表明する騎士が相次いで出てきた

自身の管轄外である赤騎士はここには見当たらないが、警護ばかりでは体が鈍ってしまいそうだと懸念して志願する者たちが徐々にだが増えている

一応は同盟軍から彼らに許された一角の庭を使っているが、そのうちもう少し広い場所を探すことになるかもしれない

マイクロトフは参加者が増えても減っても構わなかった

しかし、皆と桶を持ち寄って鍛錬後の水浴びをしていると、なんとなく味気ないなと感じてしまう

ロックアックスの大浴場が懐かしいと思ったが、敢えて口には出さなかった

ここは本拠地であるとはいえ戦場なのだ

贅沢を言ってはいられない


マイクロトフの心中を知ってか知らずか、同じことを考えた騎士はいたようだ

なんとかサウナをこの地でも再現できないか、と

行軍中に大掛かりな陣営を作った時には、手狭でも自分たちの手で略式のものを拵えたりしたものだが

意外とロックアックスの出身者は風呂好きなのかもしれないなと苦笑を浮かべながら、マイクロトフは配下の騎士たちと共に持参したタオルで水気をぬぐった


ふと、いつの間にか周囲の騎士たちの手が止まっていた

沈黙が落ち、誰も微動だにしない

鍛錬後の体を皆で清めていたはずだが、何か異変でもあったのだろうか


彼らの視線の先は自分の半身だ

マイクロトフはどこかおかしいのかと訝り、裸の上半身を捻ってみた


「…………」


先刻の打ち合いで、模擬の剣先が掠め、傷めたのだろうか

左肩のあたりに赤らんだ部分を見つける

ただ、それは視界に入ったものの一部分でしかなかった


共に訓練に励んだ騎士たちは一様に目を逸らし、朝食の用意ができたか見てまいりますと言って足早に去る者や、朝練で使用した用具を手早く片付けようとする者がそれに続いた

蜘蛛の子を散らすように、団員たちの姿がマイクロトフの視界から散り散りに消えていく

どういうことだと、さすがに鈍いマイクロトフでも気がついた

慌てる必要はないぞと注意を促しつつも、マイクロトフの動揺は明らかだった

脱いでいたシャツを素早く羽織り、前を止める

まるで急ぎの用を思い出したと言わんばかりに、騎士服の上着を拾い、大股で庭を後にした





「カミュー!!」


寝起きに盛大な怒声を浴びせられ、男は癖がついた柔らかな頭髪を緩慢な動作で搔き上げた

すでにマイクロトフのベッドの縁に腰掛けて、覚醒はしているようだった

しかし眼は胡乱として、まだ本調子ではなかったようだ

抗議があるらしい青年のおとないを受けて、おはよう、と朝の挨拶をする

それに思わず律儀に同じ言葉を返し、はっと我に返ったマイクロトフは、これはなんだとカミューに詰め寄った


「私の口から言わせるのは野暮だと思うが」


責めるような目つきの友人を軽んじているわけではなかったが、鼻白んだような様子でカミューは言った

寝起きなので、声調にいつもの張りがない


「…犯人は、やはりおまえか」


マイクロトフは思わず唸った


寝付く前まではどこにも何もなかったはずだ

首にも肩にも、そして胸や腹にも

腰骨のきわどい位置にまで

肌に浮き上がる鬱血のような赤い痕はまぎれもない前戯の痕跡だ

マイクロトフといえど、男所帯の騎士団を束ねる身である

そうした知識は大様にして頭の中に存在した


なぜこんな真似をした、と非難混じりに問うと、カミューは不敵に笑った

やっていないと否定もせず、弁解もしない

起床の直後ゆえに普段の人当たりの良さが欠如した双眸は、どこか野生の獣を思わせた


マイクロトフはぞくりとした

ゾッとしたのではなく、カミューの目線に感じるものがあったからだ


初めてでもないだろう、とふてぶてしくカミューは言った


「私の想いをおまえはすでに知っていると思ったが」


悪びれもせず確認でもしてくるような口調に、マイクロトフは素直に顔をしかめた

あからさまな不快感ではなく、カミューの不遜な態度が気に入らなかったからだ


「知っていれば、何をしてもいいとおまえは言うのか」


憮然とした口調を耳にし、そうだ、とカミューは言った


気のある者の前で、無防備にしているおまえがわるいと


しかし痕をつけた以上のことはしていないのだから、今日一日は詰襟の騎士服をきつめに着込んで大人しくしているんだなと、親友だったはずの男はことも無げに放言した


責任を転嫁され、マイクロトフは怒りを通り越して呆れ返った

だがマイクロトフが言い負かされて終わりかと思ったが、カミューの話には続きがあった


「マイクロトフ」


名前を呼んだカミューの声音は、すでに平素のものだった


次の瞬間聞こえてきた台詞の中身を正しく理解した途端、マイクロトフの背筋を細かな震えが走った



私はおまえの本心が聞きたい



ひそめたように低くなった男の声と優れた容貌が見せる真摯な眼差しに、マイクロトフはまたしてもぞくりとした

悪寒でも不快でもないそれは、追い詰められた獲物の胸中にも似て、マイクロトフから正常な判断力を奪う先触れのようだった


やめろ、と言ったような気がする

それ以上は、と、咄嗟に静止が口を突いて出た


マイクロトフが何を考えたのか、得心したかのようにカミューの瞳が鋭く細められる


マイクロトフは男と目を合わせ続けることができず、その場できつく瞑目した



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2025年05月14日

【カミマイ11】禁欲は飽和する

空の民草の民シリーズのカミマイは
禁欲生活を強いられる(苦笑)二人の期間が多くて
やきもきしますが、同盟軍に参加している間にかなり進展してくると思います

ゴルドーの監視下から解き放たれた赤青(カミマイ)…!
というわけなので……………
策謀渦巻くロックアックスから解放された
二人のムフフの運命は…!?

えっくすなどでもつぶやいておりましたが
カミマイの空の民草の民シリーズは全28話で完結します…!
やったぜ…!!
最後までどうぞお楽しみに…!

★★★

水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより


幻想水滸伝2【カミマイ】妄想11

カミュー×マイクロトフ

禁欲は飽和する



マイクロトフは友としてのカミューを愛していた

愛と言っては語弊があるかもしれないが、カミューの存在を大きな心で受け止め、捉えていた

それはすなわちマイクロトフにとっての友愛であり、恋情とは遠く、求められていないからこそいだくことのできる、ほぼ一方的な感傷だった

よく言えば無償の愛であり、マイクロトフからすれば、無意識であるとはいえ、それは非常に価値のあるものなのだろう

カミュー自身がそれとは異なる感覚をマイクロトフに持っていたとしても、マイクロトフが感じる友としての愛を簡単に覆すことはできない

そもそもマイクロトフはカミューを憎いとは思っていない

長所と短所がまるきり逆で、敵わない相手であるからこそ、マイクロトフにとってカミューはライバルであると同時にかけがえのない存在だと言えた

自分に持っていないものを、カミューが全て持っている

マイクロトフにとって、学び高められる存在として、友がある

それを愛する、という行為は、どこをどう切り取っても整えられたように清潔で汚れがなく、それひとつで完全なるものだった


友愛は、その一言だけで足りぬものがなく

それひとつで、すでに完成形だった


それが、マイクロトフという人間だった




マチルダ騎士団の一部が同盟軍に荷担したことで再編成を余儀なくされ、奔走した時期が過ぎてしまえば、あとは夜を静寂が包むのみ

出兵の命令が直接下されなければ、存外のどかな時間が長く続いた

それと同時に、大義という名目を前にして本能的に隅へ追いやっていた生身の部分が表に出てくる

カミューはその事実を歓迎しながらも、この部屋の中はまるで沙漠のようだと感じた


背後に、自分以外の気配を感じる

マイクロトフは一度寝入ってしまうと誰が何をしても一向に起きない体質であることは、寄宿舎時代に同室だった者たちの間ではかなり有名だ

戦場であれば常に気を張っているが、私生活では見た目よりもはるかに図太い

どこであろうと横になったらすぐに寝付くことができる様は、こどものようだと表すよりも、就寝すると決めた直後にすべての回路が切断されてしまうかのような、マイクロトフの特技とも言える代物だった

得意なのは剣術と馬術だが、とにかくすこぶる寝つきが良い

代わりに朝が早い本人には自覚がないことだったらしいが、眠った時の記憶がない、と昔からよく漏らしていた

寝る決心をした途端に思考が事切れるのであれば、それは当然のことだろう


今も隣の寝台の上に姿勢の良い姿で仰臥し、枕に頭を乗せ、一定のリズムで胸をかすかに上下させている

カミューは毎晩マイクロトフに背を向ける形で横になっていた

寝る間も惜しんで今後の騎士団の在り方について相談し合っていた以前であれば、自身も疲れ果て、意識の外に追いやることもできたが、そろそろそれが難しくなりつつある

マイクロトフはそんなカミューの胸中など知らず、呑気に寝息を立てている

士官学校で同室だった時分とは明らかに違う、大人の顔で



同盟軍の本拠地にある赤青騎士団の執務室はそれぞれ個別に分けられるようになったが、当初は部屋数が足りずに二人で机を横に並べた室内に、各団の騎士たちが入り乱れて入退室を繰り返していた

しかし拡張工事が進むにつれ、せめて団長が詰める部屋だけは鍵を付け、別々にした方が指示が伝えやすいということで分けてもらったが

眠る場所は相変わらず、他の騎士と同様、数人単位で割り当てられた

団長職といえど、例外ではない


マイクロトフ自身は、野営の最中も部下たちと並んで寝ていたので違和感はないらしい

赤騎士である自分は常にひとりで机をあてがわれ、眠る場合も天幕の奥で仕切りを作り、割と自由に単身で寝ていた

騎士団内での環境の違いだと言ってしまえばそれまでだが、カミューはあまり健全な意味合いで他者と寝所を共有したことがない

マイクロトフと寝食を共にした騎士見習時代であれば、マイクロトフが館内の責任者に異郷から来た志願者の世話係を頼まれた経緯もあり、また、自身も初めて見知った異国の友人という理由もあって素直に受け入れたが、今のカミューにとってマイクロトフと枕を別にしているとはいえ共寝するという状況は、二重にも三重にも意味が違った

恋う相手の存在を背後に感じ、いささかの気負いもなく眠れる方が不健全であるように思う


あちらが何の考えもなく就寝していることは事実だとしても、カミューの方はそうではない

いっそ、執務室に移って適当に眠ろうかとも考えたが、夜着の恰好で鍵を探すのも面倒だった

その上、日が落ちれば建物の中といえども寒い




マイクロトフは自分をどのように捉えているのだろう

ゴルドーや白騎士の管理下から解放されて、昔のような友人としての付き合いに戻れたことを純粋に感謝し、今を享受しているのだろうか

騎士団の重役に就いて以降、マイクロトフの側から故意に親交を断絶した状況が、自身の執着に油を注いだことは確かに認めよう

だが、一度火が点いた灯火は、燻火は、決して消えることなく我が身にくすぶったままだ

おまえ自身を灼いても飢えて渇き、飽くことを知らないだろう



いつの間にかカミューは体ごと相手の方を振り向き、長い四肢を伸ばして横臥していた


そして気配を殺して寝台を降り、隣で安らかな眠りに就いたその姿態を見下ろした


無言でマイクロトフの体に馬乗りになると、狭いベッドのスプリングが軋んだ音を立てた


マイクロトフの薄い寝巻きの襟の内側に、指先を忍ばせる

烏の羽よりも光沢のある黒髪との対比で、ほのかに輝いて浮かび上がる白い喉に口付ける

跪く敬虔な信徒のように、しかし明確な目的を持って、息を吐く

寝ついた青年の喉元を通り、吐息は鎖骨へ

そこで立てた濡れたような音とともに、カミューは乗り上げた上半身を横へずらした

マイクロトフの綺麗に隆起した胸と肩の筋骨を長い指と掌で味わうように動かすと、密になった部分がしっとりと汗ばんだ


「マイクロトフ」


名を囁いてもいらえはない


男の手で暴かれてゆく白磁の肌膚に、音も立てずにカミューは歯を立て、自身の足跡を刻んだ



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2025年05月13日

【カミマイ10】変転の友愛

日記ブログと一緒に(並行しているというわけではないのですが)
pixivとクロスフォリオでもカミマイの更新をしているのですが
好きな場所で読んでいただけるのが一番適していると思います

今のところ、30話前後で完結できるのかな…といった具合で
カミマイがベッドインするまでの道のりはちょっと遠そうです
最後ら辺になるかも…

でもその間に、恋愛の駆け引きではないですが
カミマイらしい恋情未満の友情っぽいやり取りが
そこはかとなく繰り返されているという具合ですね…

あの時代に流された騎士たちの変遷…恋物語(!)…といった印象です

カミューがマイクロトフのことが好っき!なのは
見たままが好き、みたいなところがあるのですが(恋)
マイクロトフはカミューすごいな…で惹かれているので
カミューがんばれ…おまえはいい男だ…という
書き手側の応援する気持ちも大いに無きにしも非ずです
個人的に常に攻めキャラを応援したいので………

わけがわかりませんが、お話はじゃんじゃん続きます…!

元ネタを知らない方にこそ、気軽に気楽に読んでいただきたいBL物です

★★★

水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより


幻想水滸伝2【カミマイ】妄想10

カミュー×マイクロトフ

変転の友愛




マチルダから離れることを選び、祖国に反旗を翻したマイクロトフは、カミューの助力を得て騎士団の再編成にすぐに取り組むことができた

団長である彼ら二人についてきたのは赤青の上層部を含めた団の半数の部下たち

カミューとマイクロトフの側近の面々は直属の上司である彼らに追従し、ロックアックスに残ったのは内情を漠然としか知らされなかった、かなり末端の騎士たちだった

例え所属する騎士団の最高責任者が彼らの直接の指導者であったとしても、国と家族のことを思えば二の足を踏むだろう

今頃白騎士団長であるゴルドーが権威を嵩にカミューたちに代わる責任者を指名し、団長職に就けたはずだ

あるいは白騎士の名の下にすべての権限をゴルドー一人に集約し、実権を握ったか

マイクロトフたちの離反と同盟軍への参加は、マチルダ騎士団そのものには何の痛手でもなかったという内外へのアピールのためであるのだとすれば、それは成功しただろう

しかし騎士団のカリスマは間違いなく正式な騎士団長であったカミューとマイクロトフであり、団長補佐役の誰一人として彼らの元から離れる者はいなかった

ついてきた騎士の中にも、途中でロックアックスに戻った者はいる

故郷での懲罰を免れるよう直々に書簡を手渡して見送ったが、無事に親族と再会できたことを願うばかりだ

各々の事情を抱えたそれらの騎士たちを除けば、カミューとマイクロトフの側についた面々は騎士団の中でも錚々たる顔ぶれだった

結束力は青の騎士団が誇り、騎士団の統率力は赤騎士が担う

同盟軍と合流した彼らの堂々とした姿は、そんな印象を周囲に与えた


これから、忙しくなる


マイクロトフがそう考えたのは、同盟軍内部での騎士団の立ち位置だ

マチルダ騎士団を名乗る以上、自分たちがすべきことは戦闘員として戦力面でのリーダーシップか若しくは助勢であり、同時に警備や密偵、情報収集などの組織的な知識と手腕を求められているはずだからだ

要するに傭兵とは異なる大きな枠組みの中の組織のやり方で同盟軍に力を貸し、自らの志を変えることなく軍の中で騎士団の名と身を立てる

簡単に言えば、ロックアックスにいた頃と立ち回りが変わるので、そのための再編成と心構え、それに伴う人員の配置と騎士たちの再教育が不可欠だった

とはいえ、勝手知ったる何とやらで、騎士たちは自分たちこそが団長を頂く正規のマチルダ騎士団を自負する手前、こまごまとした指導までは改めてする必要がないように思えた

彼らは誇りを持って騎士以外の人々と気さくに接し、様々な事情を抱えるメンバーとも紳士的且つ理性的に相対することができた

戦闘では実践力と経験者のどちらが優れ適しているかの判断を迫られる場面もあったが、理性ある彼らが半歩引いた姿勢を見せることで、同盟軍への貢献に毎回成功をしていた

すべては赤騎士団長と青騎士団長の意向に沿うやり方だったが、目立った諍いも少なく、事なきを得ている

それもすべて、カミューとマイクロトフが寝る暇を惜しんで熟考と討論を重ねてきた結果だ

正式に軍師を招いて意見を交換し合う場面もあれば、双方の騎士団の執行部の面々にも同席を頼んで騎士団の在り方について説明をし、理解を得られるまで議論した

納得した上で決定を下した目的意識を、その日のうちに全騎士に通達したので、故郷とは異なる役割であったとはいえ比較的円滑に方針が行き渡ったと言える

領内を治めるのではなく、同盟への実質的な参加だったので、寧ろ騎士たちにとっては個々の煩雑な仕事の量が減ったくらいだ

無論、これらが一時的なもの、つまりはロックアックスの城の外に出た戦闘中の状態、すなわち非常事態であることに変わりはない

しかし騎士たちに常在戦場の心構えがあったとしても、明らかに見える形で負担が軽減されたことも事実だった


「上流階級との付き合いが減っただけでも、私にとっては快適な居場所だよ」


腰を落ち着けられる場所は狭いが、文句を言っていい立場でもないと、赤い騎士服の男は半ば諦観したように口にする


ロックアックスにいた頃よりも、そこから飛び出して自由を得たカミューは明らかに以前よりも明るかった

山々が犇めく城塞都市の石畳を吹き抜ける風に吹かれるのではなく、緑が多く茂る大地に足を踏みしめ、全身をいだかれているからかもしれない

確かにマチルダを任務で離れる時は野営が常であったし、手狭ゆえに拡張しつつ設備を整えている最中ではあるものの、こうしてしっかりと雨風をしのげる建物の一角に腰を下ろせる場所があるということが幸いしたのだろう

カミューの表面は、意外なほど穏やかだった


「騎士たちから、不満は出ているか?」


問えば、予想の範囲を超えない程度にはね、と落ち着いた声音が返る

常日頃から理知的である男は、しかし、目に見えて険というものがひそめられている

だが、マイクロトフはそれゆえにカミューの本性に近い部分が露見していると思った


こうして慌ただしい中、新しい局面を迎えたマチルダ騎士団を自分たちの手で支え、維持しつつ新たな形を共に作り上げることができたのは幸運だった

騎士団を誇りに思っているのは男も同じなのだ

当たり前のことを再認識し、マイクロトフは心底から目の前の親友を讃えた


実際にカミューが率いる赤騎士団が同盟軍の内部で果たした役割は大きい

仕事柄、対人関係や情報の精査や収集、取引の伝手など、細かな部分では専門家である赤の騎士団には敵わない

青騎士たちが不勉強であるのではなく、まさに専門外だったからだ

一方で、集団での戦闘や役回りと分担に関しては細部まで団長による青騎士たちへの意思の疎通が行き届いており、マイクロトフの教育の賜物だな、とカミューを感心させた

カミューにとっては既知あったろう事実を、赤騎士たちの前で彼らの団長自らが語った行為にこそ意味があったのだろう

結果として、ロックアックス城内で綺麗に上下で分けられていた赤と青の騎士たちの両方に、マチルダ騎士団として結束することの重要性を教えた形になった


カミューが抜け目なく、賢く、やり手であることは前々から、それこそ士官学校に入る前からわかっていたことだったが、放つ言葉の一言一句、動作の一片、行動の一部始終を取って見ても、無駄がなく考えがあってのことだということが具ににわかる

深慮があり、軽率な真似は好まない

これは自分などには到底真似できないことだな、とマイクロトフは即座に思った

加えて人当たりが良いので、敵を作ることがない

媚びているわけでもないのに、不思議だな、と思った


「下手に出れば、付け上がらせるだけだからね」


お世辞も適当であればあるほど良い

カミューが言う適当とは、大雑把な意味合いではなく、要点を絞ったもののことだ

簡潔明瞭で、嫌味がなくわかりやすい語録

無駄のない会話や交流術は、よほど目はしが効くか、頭の回転が早くなければ、それこそ天賦の才に近かった


「…俺には不可能だ」


半ば呻くように呟くと、それを聞いたカミューはうっすらと微笑ったようだ


「おまえにそれを求めること自体、行き過ぎた行為だと思うよ」


人間には長短があるからこそ適材適所で活きるし、精進の指標にもなると


「師のようなことを言う」


どこかで読んだ本の中身の受け売りだよ、と軽く返された

カミューと交わす何気ない一言一言が快く感じる


やがて、一時休戦だ、と男は言った


同盟軍での騎士団としての存在感と在り方が、見える形で彼らの中に浸透し、正規のマチルダ騎士団がこちらであることを知らしめるための努力が今後も続くだろうことを見越しての言だった

カミューの言う休戦とはすなわち、親友との関係が険悪な状態にならないように心がけるという意味だろう

誰の目も憚ることなく団長同士が議論し合える現状は、男にとっては肩肘を張らなくても済む現実なのだろう

力を抜いて、昔のように付き合える、ということだろうか


「カミュー」


行軍の途上、馬上で横に並んだカミューの、風を受けて膨らんだ柔らかな髪色が視界に広がる


「よろしく頼む」


握手を求めて利き腕の手のひらを差し出す

仲直りの証であり、これから先の未来を共に切り拓こうという無言の言葉を乗せて


数瞬間を置いて、そっとそれは握り返された


手袋越しの、一部分での確かな抱擁


男の眼にははっきりと、複雑な色が浮かんでいた


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2025年05月12日

【カミマイ9】始まりの兆し

最近B'zのアルバムを聴いているので
筆が進むカミマイです…^^;

★★★

水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより


幻想水滸伝2【カミマイ】妄想9

カミュー×マイクロトフ

始まりの兆し




これは青騎士の管轄ではない


マイクロトフは即断した


持ち回りで政務室に詰める担当騎士の一人が見つけたという書類を目にするなり、青い騎士団長はこれを携え判断を仰ぎに訪れた自身の補佐役と同じことを言った

とある要人の身辺警護と調査

会場や施設の警備に当たるのであれば青騎士も駆り出され担当することも多いが、諜報の類は赤騎士が請け負う仕事だ

どうやら騎士団内の各部署へ文書を分ける際に誤って混ぜてしまったのだろう


「急ぎ、赤騎士団へ届けてまいります」


政務室に集まった団長の親衛隊ともいうべき補佐の一人が前へ進み出る


「…いや」


俺が行く、とマイクロトフはきっぱりと言い放った


おそらく内容からして、団長以下の騎士に任せて良い代物ではないと見抜いたからだ


特に諜報関係は極秘であることが多く、漏洩を防ぐ目的で人目を避けて策議を開き、適任者を選んで内々で手配をする必要がある

厳選の上、限られたメンバーでチームが組まれるはずだ

それらの人員を選定し、配備するのは赤の騎士団長だと決まっている

他の誰にも任せることのできない、責任者としての職務だ

ゆえに騎士団の上層部でも一部にしか知らされない可能性があることから、マイクロトフが直接カミューに手渡すことを決意した


「承知しました、お気をつけて」


同じロックアックス城に勤める騎士であるとはいえ、赤騎士団は自分たちよりも上の機関だ

横並びで各騎士団が牽制し合うのではなく、飽くまで青騎士は騎士団の礎であり、最終的な決定権は白騎士団にある

赤騎士は白騎士団の片腕となり、青騎士は白騎士団の足となる

首脳陣は白騎士に集まるのが、マチルダ騎士団の独特の編成と歴史だ

無論、白騎士が独断と独裁の道を歩まぬよう、各団長が見張る役目もないわけではなかったが、それは飽くまで建前の上での話だ

少なくとも、現状ではそうなっている

実際には権限のほとんどが目に見える形で白騎士団長の元に集約されていた

それらを赤と青の騎士団長は代々危険視をしており、双方が内密に話し合うことも少なくなかった

しかしそれを離反の心ありとして摘発された過去がある

マイクロトフの前任は早々に予見して、自らの後継を選んだと聞く

多くは団長職の退任に留まらず騎士の名誉を剥奪されたが、赤騎士に白騎士団の仕事の一部を任せたことで内外のバランスを取ったということにして、その場は丸く治められた

だがすべて建前上、見た目だけの話で、結局は指令を出すのも辞令を行うのも白騎士団長の名の下で、最高の権限を白騎士たちが独占している事実に変わりはなかった

現団長職であるカミューとマイクロトフの親交に最初から厳しい目が注がれているのには、そうした理由があった

とはいえ、カミューは上から求められている以上の成果を挙げているので、白騎士団が表立って男の動向を非難することも問い詰めることもできない

足繁く青騎士団の管轄に足を踏み入れ、すぐに出てはまたそこへ向かう

その繰り返しに、不審や不快感を示す上部の連中もいるだろう

とはいえ、精々大量の依頼文書を押し付けて、嫌がらせをする程度が関の山だ

が、カミューからすれば、その行為は白騎士団の形骸化を早めるだけの処置でしかなかった

無能が本当に外側を着飾るだけしか能がない真の能無しの集団に成り果てるのだとすれば、目も当てられない惨状になる

往く往くはマチルダ騎士団そのものを破綻させかねない

カミューはたまに赤騎士団の執務室を抜け出してロックアックス城を散策し、静かにその様を見守っている節がある

情熱に燃えた眼を、長く柔らかい前髪で密かに隠しながら


マイクロトフはマチルダの今後に関して、カミューと語り合いたいと思うことは少なくない

腹を割って、膝を突き合わせて心ゆくまで議論したい

しかし今の自分たちの立場ではそれも騎士団への背反行為だと見做され、告発されてしまうのだろう


このままでいいはずがない

私情を挟まない部分でも、カミューに対してマイクロトフは思うところがあった


もし

もし、マチルダが彼らを裏切ることがあれば、その時は



おまえは


俺は


どうするのだろう



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2025年05月11日

【カミマイ8】黒の悋気

以下は、Ci-enより…!

---
続きを書き進めているのですが
なんか…普通に、普通のBLになりつつあるカミマイです@@

関係ないですが、
カミマイが所属するマチルダ騎士団の組織図が昔から頭の中にあるのですが
自分の中の赤青(カミマイ)の団には『副団長』という役職がないのですね

他の方の作品には普通に当たり前に『副団長』が登場するのですが
うちの騎士団では騎士団長一人に権限が集約されていて
あとは補佐とか部隊長とか相談役(いないかも)とかになるのかなぁ…
という感じに副団長がいない組織になっています

なぜなのかについては、
・団長の権限が強い
・副団長と癒着させない
・副団長一人に責任を負わせない
・団長に何かあったら補佐集団で相談して一時的な代行を決める
・団長が暴走したら、補佐集団みんなで止める←真の目的!
…そんな効率が、青騎士団にはあるのかなと思います

赤騎士団については専門的な仕事が多いので
青騎士団とは異なる編成で、
白騎士団についても違います
三つに分かれた騎士団に上下関係はあるものの、それぞれが独立している感じ

なんで違うのかについては、個別の得意分野があるためと
色んな過去の事件を経て、上から言われたり
上に文句を言われないように作った結果なのかなと思います
もちろん、効率も視野に入れていますが
団長の権限が強い、というのがうちのマチルダ騎士団です^^;
とはいえ、ワンマンではやっていけないので、
騎士団長は大変な役職だと勝手に思っています…
---

という感じの書いているお話の背景でした

騎士団の編成の図を詳しく書き出してもいいのですが
おそらく青騎士団の団長補佐は各部隊長クラスの人間で常に十人ほどいて
(青騎士団の部隊数はもう少し数がありそう)
マイクロトフが団長就任後に選定した執行部(団長補佐)に
かつての部隊長が選ばれたりしたのかな…と思いつつ

団長補佐の権限はあくまで補佐としての権限なので
現行の部隊長の相談役でもあるし指示役にもなれるけれど
団長の命令なしで単独で動くことはないと思います

政務室に詰めて各隊の状況とかを整理した上で
団長に取り次いでいたりするのですが
政務室詰めは各隊からも交代で派遣されていて
色々と連携を図っているのかな、と

マイクロトフは団長になる前に各部隊(全部の部隊)に所属しているので
さらに細かな仕事を理解していたりします
偏った部隊にだけ籍を置いていると全体を見渡せないので
重役につくことなく部隊を回った感じになります
補佐役になると次の執行部には選ばれないので
補佐役はやったことがないような気がしつつ
そこらへんはアバウトです
とりあえず、前任が更迭(?)されたので
マイクロトフが団長についた、という話なのではないかと思います

青騎士団長の就任に関しては白騎士団長から辞令があったのだと思いますが
役職についていなかったマイクロトフが選ばれたことに関しては
内内でなんか仕組まれていたことがあったんじゃないでしょうか

白騎士に対して、こいつ=マイクロトフは白騎士には無害っす!…というのを
アピールしたかったんじゃないかな…とかいろいろです
もちろん無能であっては困るので、マイクロトフの功績については
きちんと上(白騎士団)に報告をしたと思います
実直でまじめ一辺倒だから裏切りませんよ〜みたいなアピールの仕方で

カミューに関しては立ち回りがうまそう
素直に、専門的な部門を統括する赤騎士団の団長として適任だったのだと思います
今のところ、そんな感じで考えています

騎士団は結局、
白騎士団以外は編成と再編成の歴史を繰り返しているというイメージですね…
自分の中では、内外に向けた効率重視なのかなと思います
代々同じ仕様を受け継ぐ、引き継ぐ、という考え方は、自分の中にはないですね@@
やっぱり時代やその時の状況によって
変えられたり変わったりすると考えたほうが楽しいです

★★★

水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより


幻想水滸伝2【カミマイ】妄想8

カミュー×マイクロトフ

黒の悋気




側近の一人から入った情報に、カミューはわずかに表情を曇らせた

白騎士団長を務めるゴルドーが、マチルダ騎士団領の外部の人間と接触している節があると

ゴルドーなる男は見るからに野心家で、人柄を能く見抜く術に長けたカミューなどからすると、人の上に立たせて安心できるタイプではない

かと言って家柄も実力も、勲章の数も功績も文句のつけようがなかった

カミューはロックアックスの人間ではない

だからこそ深入りはしないようにしていたが、マチルダそのものに愛着を感じていないわけではなかった

上の連中はともかく、人材に恵まれ、若い騎士たちには故郷の者達とはまた違ったパワーがあると痛感している

特に青の騎士団などはその代表格で、赤騎士よりも平均年齢が低い

青騎士の執行部は団長の代変わりとともに都度解散し、再編成の際には先任の者は選ばれない

若返りを常に意識して作られているせいだろう

赤騎士であればカミューより年配の者は多く在籍しているが、青騎士の中で年長者と言ってもマイクロトフより十くらい上がいるかどうかが関の山だ

このまま行けばマイクロトフはカミューよりも先に騎士を辞めてしまいそうだが、それゆえ日々精力的に務めることができるのかもしれない


マイクロトフが騎士でなくなったら、自分はどうするのだろう


当たり前の答が用意されているだけだ


カミューはそっと秀麗な眼を細めた



その耳に、聞き慣れた声が届く


考え事をしながら城の周辺を散策していたのだが、いつの間にか廐舎の近くまで足を伸ばしていたらしい

声の主は、珍しく笑っているようだった


マイクロトフ


陽はすでに傾きかけていたが、どうやら今日は定時に上がったようだ

かくいうカミューは早々に仕事を切り上げて提出する書類の類は明日に回してしまっていたが、こんなところで見かけるとは思わなかった

マイクロトフは誰かと話をしている最中だったようで、こちらには気づいていない

声音が意外なほど優しく、後輩の同じ騎士に対してもそんな態度を取っているところは見たことがない

いや、あれは騎士に対するものではないのかもしれない

実の妹や、家族に対する応対に近い

青年の硬質な部分が削げ落ちた、柔らかな春の日差しのような物腰だ

素の、それこそカミューが出逢ったばかりのマイクロトフと同じだ

屈託のない笑みが口元に溢れ、そこからまばゆいほどの白い歯を覗かせる

そんな顔は見なくなって久しい

自分に向けられるのは、常に厳格なマチルダの騎士としての目線だ


「…………」


掃除がようやく終わったのか、用具を片付け、張り番のいない厩舎を後にして、青い騎士服だけに身を包んだマイクロトフが今初めて気がついたように顔を上げる

ゆっくりと、その動作の一部始終が緩慢に見えたのは、自身の錯覚だったのかもしれない

男の存在を認め、わずかに目元がしかめられる

濃いまつ毛と色で縁取られた、精悍な眼がひたと見つめる


そこで何をしている、との問いに、先ほどの穏やかさはなかった


自分以外の誰に対して

心を砕いて和やかでいたのか



心臓を後ろから鷲掴みにしたのは、黒々とした大きな鉤爪


カミューはそれを気取らせもせずに、鷹揚に微笑った


冷笑と自嘲を滲ませながら


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2025年05月10日

【カミマイ7】偽りの逢瀬

右手の腱鞘炎の調子は良くなったり悪くなったり…というか
親指の付け根部分の炎症はなくなっていませんので
いかんともしがたい状態です…@@

うおおん!;;

★★★

水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより


幻想水滸伝2【カミマイ】妄想7

カミュー×マイクロトフ

偽りの逢瀬




団長服の青を剥ぎ、マイクロトフを抱いたことは数えきれないほどある

逞しい筋骨の白い肌に無数の花を刻み、咲かせ、手のひらに相手の屈従の証を強いる

甘美と思われる夢想は、すべてカミューにとって悪夢でしかない


親友だと自他共に認めている者を下し、おのれの体の下に従える光景は、正に悪夢だと言って差し支えがなかった


自分以外の誰にも組み敷かれたいわけなどもちろんないが、マイクロトフを自らの劣情の匂いに浸して嗜虐を満たし、悦楽を得るほどカミューは下劣ではない

何よりもマイクロトフが許さないだろうと考えた

そもそも相手は一時と言えど、恥を受け入れて生きながらえる騎士ではない

自刎を許さぬ規律のマチルダの騎士であるマイクロトフに自害の作法や心得があるのかどうかはともかく、殺せ、と相手は言うはずだ

辱められた後に、絶命を願う

そんなものを、未来を、カミューは手に入れたいなどと思ってもいなかった


あの魂ごと食らいつくしたい

黒のぬばたま、額に輝く指導者の光輝を

感覚も思考も、肉体も何もかも


それは衝動であり情動だったが、もっと奥底から焦がれるものだ

でなければ無理強いをしてでも、それこそ支配する側に立てば済むだけの話だ

しかし、欲しいのはそんな安いものではない



マイクロトフは、カミューから視線を外さない

自らを揺さぶり細胞の隅々まで汚し動き続ける男を、透明な眼で見つめ続ける





どこか調子が優れない様子の少年に気づき、マイクロトフは部下にするように声をかけた

厳しさを欠いた平坦な声調だった


「今日は早めに休んだらどうだ」


なぜ?、と端的に返され、至極尤もな意見を述べる


「おまえは騎士ではないのだし、ここに詰める必要がないからだ」


青騎士団のいる場所で仕事をするのはその任に当たる者だ

おそらく未就業者である異郷の衣装に身を包むカミューには付き合う義理はないはずだからだ


「私が居てはお邪魔なのかな?」


「そういう意味ではない」


きっぱりと断言する

マイクロトフの側には隠すことが何もない

見たままをそのまま告げるだけだ

そのどこにも、背徳や後ろめたさはない


「普段よりも居心地が悪そうだからだ」


それに対するカミューからのいらえはなかった



良くない夢を見る、と、少年の口からぽつりと独白が聞こえてきた


マイクロトフにとっては今日中にしたためなければならない書簡と向き合っている最中での会話だった

話をしながらでも仕事の手は休めない


「…悪い夢の対処法は知っているか?」


「袋の中に吐き出して、それを燃やして捨てる」


「……………」


カミューの故郷では子どもにそう教えるのか、と青年は嘆息したようだ

実に簡潔で具体的な内容だったからだ

幼い頃から育ての親である実の祖父の元で読書を嗜んでいたらしきマイクロトフは、その中に書かれていた一例だが、と断ってから言い継いだ


「誰かに聞かせたあとに忘れればいい」


「聞かせられない、…と言ったら?」


そんなにひどい内容なのか?、と思わずその白皙の頬に苦笑が浮かんでしまったようだ


言えるわけがない

カミューの友情と尊厳に関わることだ


マイクロトフがふと、持っていた筆の動きを止める


「…では、つらいままでいるのか」


「…わからない」



夢を実現すれば、とカミューは言った

自らに確認するような語調だった

実際の現実にすれば忘れられるのか?、と



「中身によるのではないか?」


実現可能な夢というのは確かにあるだろう

しかし見たのは悪夢だったはずではないか?


じっとこちらを凝視するカミューは、何かを思い出しているようだった

気恥ずかしさもなく食い入るように見つめられ、マイクロトフの方が気後れしてしまうような

そこにあるのは、無限の魅力ある虚無だった



やがて、駄目だ、とカミューは言った

捥ぎ取るように、マイクロトフの上から視線を無理矢理別の場所へ移した


「カミュー」


マイクロトフは筆の先が乾かないように何度かインクをそこに馴染ませる動きをしてから、このあと時間はあるか?、と尋ねた


「おまえに余力があるなら、俺の馬を見に行かないか?」


馬の話でもしてはどうかと問われ、カミューは聞くなり幼くとも端正な顔に苦笑いを浮かべた


軍馬の産地としてもマチルダ騎士団領は有名だ

駿馬との聞こえの高い馬を数多く産出している

赤騎士団長であるカミューも、任に就いた際に白騎士団長の名で名馬を一頭贈られている

対外的に見劣りしないよう、良き手駒になるよう、物言わぬ公然の賄賂であったのかもしれないが、生き物の命そのものに罪はない

マイクロトフの持ち馬は騎士になる前にカミューの見立てと自分の足で見つけて、今は二代目となっていたが、共に幾度も戦場をくぐり抜けた列記とした相棒だ


カミューの故郷であるカマロはグラスランドにある領内だ

当然、人々の往来は馬やその他の動物が引く車が担うことになる

年少の頃から働きに出ていたカミューにとって、それらの世話も乗馬も、そして目利きも大したものだ

昔から働いていたくらい元々が利発であるし、種々の人々の対応に細心を払う手腕に長けていた


「いいよ、マイクロトフ。行こう」


快諾した少年の表情は、見えない靄が晴れたように健やかだった


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2025年05月09日

【カミマイ6】湯上りの蜜

走り抜けろ上舞!…じゃない、カミマイ!…ということで
元ネタを知らない方も大歓迎の更新です

二人はどうなるのでしょうか…!?

★★★

水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより


幻想水滸伝2【カミマイ】妄想6

カミュー×マイクロトフ

湯上りの蜜




ロックアックスでの風呂と言えば、サウナが常識だ

蒸気で全身を温めて血行の促進を促し、身体の内外を同時に整える

個人の邸宅にはそれほど大掛かりなものはないが、街には男性専用の大衆浴場が幾つか点在するほど市民にとってはメジャーな代物で、騎士団内でも各部署に詰める騎士専用の大浴場が備わっていた

特にマチルダ騎士団で最大の団員数を誇る青騎士団の詰め所では、入れ替わり立ち替わり、芋洗い状態で騎士たちが汗を流す光景も珍しくない

もし仮にマチルダ騎士団をスポーツが盛んな学園に例えるならば

青騎士団は体育会系の部員たち

赤騎士はそれ以外の学術的、芸術的、工学的な趣味が犇めく文科系

白騎士は彼らを取り仕切る執行部

…という具合になるだろう


市民の間で騎士団の色の違いと役割については漠然としか把握されていないが、かなり細部まで各々の長短に見合う役割が決められていた


そしてその運動部の猛者たちで溢れかえるイメージのある青騎士団は、団長であるマイクロトフを中心に、やはり体育会系のノリで結束をしていた

水を被った熱された石から水蒸気が勢いよく立ちのぼり、湯気が彼らの体全体を覆う大きな浴場で、団長を中心に、男同士、裸での打ち合わせに余念がなかった

本来であれば政務室の長い机の前で点呼を行ってから確認作業行うのだが、演習から帰った者や砦の任から帰還した者の慰労を兼ねて、ここで報告会を開きたいというマイクロトフ立っての望みを聞き入れた形になる

青騎士団ではそれが半ば慣例化していたので、全員が長いタオルを腰に巻いた上半身裸の恰好で、上下の別なくマイクロトフを囲むように、突き出した岩のようなものを椅子に見立てて腰掛けている

所謂裸の付き合いで、酒が絡まない分、蒸し暑さに耐性があれば誰もが快適に議事を進められる環境だった

無論、その間も夜の勤務を終えた担当騎士がサウナに出入りを繰り返す

水分の補給をしかと各自で確保させ、マイクロトフは居並ぶ部下たちの話に耳を傾けた

錚々たる青騎士団のメンバーが集う中、肌の色も髪の色も、もちろん体型は疎か筋肉のつき具合、バランスまで、見事に皆バラバラだ

マイクロトフだけが飛び抜けて色が白いというわけではないし、癖のある毛髪の黒髪の騎士もいる

茶系でも赤の騎士団長ほど明るい色の頭髪はないが、焦げた茶色や赤土色、グレーからアッシュ、白まで様々だ

一様に短く髪の裾を切り、清潔感が保たれている

爽やかなロックアックスの若者らしい佇まいだった

先代を補佐した青騎士団の執行部は、解散した後は後輩の育成に尽力している

若い世代が多く、年長であってもマイクロトフより八つか九つ上がいるくらいだ

騎士となり、十年も経てば進退の都合によっては騎士を辞めたり、騎士学校で責任ある立場を任される

マチルダ騎士団では白騎士以外はかなり引退時期が早い

若い力を重要視して世代交代を早めている理由は、マチルダ騎士団の上層部が手駒として扱いやすいと考えているからだろう

戦闘が必要な場面では元騎士も駆り出されるので、実質、騎士団を退いても忠誠は常にマチルダに在る、帰属する、ということになる

それでもマチルダの騎士たちが、夢や希望に満ち溢れている若者たちであることに間違いはない

マイクロトフが団長の任を引き継いだのは確かに若い時分だったが、歴代の騎士団長の中で最年少というわけではない

しっかりと後任を任せられるだけの器に仕上げたいとの前団長の意向の下、マイクロトフは青騎士団の各部隊を隅々まで回らされた経緯がある

どこで誰が何を担うのか、実地で事細かに教えられ、覚えさせられた

並大抵の根性と努力の積み重ねなくしては、大抵の者は途中で根を上げる

白騎士や赤騎士がキャリアだというのなら、青騎士は現場で叩き上げられた精鋭揃いだ

それを束ねる者は、更に並大抵の努力では事足りない

青騎士団が多くの人員を有し、しかも中身は体育会系だと囁かれる理由はそんなところにあった


「報告は以上です」


秘密裏に行った業務ではなかったので、同じ青騎士に聞かれても問題はない

ご苦労、とねぎらい、マイクロトフは会の解散を宣言した

机上で立ったまま行うよりは、他の騎士たちも幾分リラックスできる

そう考えたからこそ風呂場での開催を提案したのだが、マイクロトフ自身も話をしているうちに十分に体も温まり、あとは冷たい水を頭から被って出て行けば済むところだった

肌の上に無数の玉となって浮かんだ水滴を拭い、身につけた長布を解くと誰もが見惚れる見事な裸身が露になった

脱衣所で元の騎士服に着替え、残り時間で他の政務に当たることを決める

蒸気を満たした室内から散っていく団員たちは、これから休暇に就く者、担当部署に戻る者、口頭以外の報告書と向かい合う者、書類と再びにらみ合う者、様々だ

マイクロトフは頭に叩き込んだ諸々の報告内容を上層部に提出する用紙に書き起こすため、おのれの執務室に戻ろうと決心した




大浴場を出て、庭を突っ切り上への階段を目指そうとして、見知った影を見咎める


カミューだ


何をしているのかと思ったが、大方いつも通りの散策だろう

一応、体面としては別部署の管轄内ではあるのだが


赤騎士の仕事は自分のように机にかじりつくか、対外的なものが多い

白騎士の代わりに社交の場に駆り出されて騎士団代表の代理としての役目を果たしたり、簡易な挨拶や懇談など、町議会に召集されたり、婦人たちの社交の場に呼び出されたり、裁判の担当をしたり、揉め事の解決に奔走したり、色々だ

肉体労働よりも社会的な細かな任に当たることが多いので、マイクロトフから見れば非常に苦手で厄介な役どころだし、覚えることも実際に多いと聞いている

それなりの地位にある人物の顔と名前と役職と家柄と家族と歴史を個別に記憶し、それぞれに当てはまる様式、仕様、仕来り、手法、嗜好をすべて頭に入れた上で交流し、友好を結び、時に駆け引きを交えて辞令を実行し、成果を上げなければならない部署だ

年末や年始の挨拶に出向いたり招待される数と量が、青騎士団長であるマイクロトフの比ではなかったことからも容易に推測できる

加えて、その体一つで騎士団と他の場とのパイプ役を努めねばならない

精神的にすり減るので、天才的な手腕か、天性の資質がないとやっていけないと見習だった頃に同期だった赤騎士から耳にしたことがある

同じ騎士でも、青騎士の方が段違いでわかりやすい職務に就いていることをマイクロトフは理解している

例え、前線で働き続けるための肉体的疲労が青騎士たちには常に付随していたとしても



ここまで声が聞こえてきたよ、と男は言った


大声を張り上げたつもりはない、とマイクロトフは返した


カミューという名前を持つ赤騎士団長は、意外と張りのある良い美声だと友人を褒め称えた

お世辞と思えなくもなかったが、今度からは声量を抑えるようにする、とマイクロトフは顰めっ面で答えるにとどめた

次いで、先日は手間をかけた、と言葉を継ぐ

何のことを指しているのか、カミューはすぐには思い至らなかったようだ


意識を失った自分をソファまで運んでくれたのだろう?


そう水を差し向けると、ああ、と合点したような声がその口元から漏れた

カミューは笑みを絶やさないままでいる

それほど、風呂場から聞こえた歓談の中身が面白かったのだろうか


気にしなくていい、と、いつもならばそう返したのかもしれない

いつもの親友であれば


礼をもらっていないな、とカミューは笑った

その瞳には不敵な光が見え隠れする


陽光に透けてベージュ色をしたブロンドのように輝く髪と同じ、それよりも少し濃い色調の品の良い睫毛が揺れる

礼などない、と言いかけて、カミューがゆっくりと前進してくるのをマイクロトフは肌で知覚した


一歩一歩、歩を進める者を相手に逃げる行為など愚の骨頂だし、突き飛ばすのも同じ団長としてやっていいことではない

近づいてきたところで戦場の敵ではないのだし、ここは戦場ではないのだし、無害だろうとは確信していたが、相手が何を考えているのかまでは見透かすことができなかった


何も考えていない

そう答を弾き出し、ただ正面から対峙したまま、待つ


カミューの手袋に包まれた指が、額にかかる短い前髪を払うように触れ、離れた


「………?」


まだ濡れていたのだろう

確かに適当にしか水分を拭っていなかったが、カミューの白い愛用の手袋を湿らせるほど毛先に集まり、滴るほどではなかったものの透明な雫が生まれていたのだと気がついた

そのまま手は体の横脇には戻らず、カミューは水の香りを楽しむように鼻先でそれを探る優美な仕草をした

瞼を浅く伏せ、意味ありげにつぶやいた


夜の匂いがする


時刻的に、そんなものが来るにはまだ数刻を要する

耳に届いた感想に、詩的なのかそれ以外の意味合いがあるのかを判断しかね、風邪を引く前に戻る、と断ってからマイクロトフは友人に背を向けた



なぜかはわからない


触れていないはずなのに、額が炎を掠めた時のように熱い


そんな気がした



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2025年05月08日

【カミマイ5】遠き誓い

カミマイは2003年ぶりの更新となるのですが
空の民草の民シリーズを完結させるべく
かなり速足で駆け抜けます

二人がゴールインするまで…!

★★★

水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより


幻想水滸伝2【カミマイ】妄想5

カミュー×マイクロトフ

遠き誓い




愛している、と男は言った


昔からよく知る、親友の顔で

その表面には苦しそうな影が見てとれ、騎士団が誇る玲瓏たる美丈夫の、涼しげな目元はなりを潜めていた


隠すことのできない激情を、烈火の如き本性を、友である自身は知っている

それが男の持つ、雄々しく強大な、羽ばたける真の自由、翼であることも


外面などどうでもいい

本当の姿を、本心を、おまえにだけは見せられる

そして告げたい

嘘偽りのない姿で


物言わぬ口が、眼が、真っ直ぐに自身に向かい、目を瞑っても瞼を灼いて射抜いてくる


わかっている、とすぐさま思いが喉まで出かけた


その苦渋とも苦悶ともつかぬ秀貌を前にして、理性がたじろぐことはなかった


よく知っている

よく見えている

その心も、面差しも、そして相手が見ている景色も目指すものも

あれだけ飽くことなく共に語らい、作り上げた時間がある

かけがえのないもの

何にも代え難い、代えてはならない刻そのもの



わかっている、と自分は答えた

だが、それ以上言葉が続かない

俺も、とは言い出せない

愛よりも、今は、もっと



大事の前に、自分たちには、少なくとも自身には、完璧に果たさねばならない役目がある

重責が

自らが好んで背負った責務

マチルダの現状と未来

人々の顔

故郷に根ざした志を、明確なこの想いと両天秤にかけることはできなかった



目の前の男は笑っている

口元だけを器用に歪めて

哀しげではなく、自嘲がそこに浮かんでいるかのように


手をこまねいているうちに、どこかへ行ってしまうよ、と訴えているようでもある


ならば、俺は孤独を選ぶ

そう答える前に、利き腕を伸ばされ、相手の長い指が手袋越しに口元に当てられた


使い慣れた、しかし清潔な香りが鼻腔を過ぎる


それを許すと思うのかと


唇の動きだけで、男は無言のまま告げた





ハッと意識が目覚めた瞬間、ひどく汗をかいていたと思う


団長服の上着をかけられ、ソファの上に仰臥していたようだ


机の上で意識を失っていたよ、と少年の声が聞こえる


ああ、と片言で返事をする


外にいた騎士の一人が気づいてここに寝かせてくれたのか

少年の姿の彼には、成人男子でその上重い騎士服を着込んだ体を運ぶことなどできないだろうから、誰かを呼んで手助けを請うたのかもしれない

カミューの容姿や声は自分以外には感知できないもののようだが、他者の意識にささやきかける作用はあるようだ

気のせいか?、と思われることを、見えない者が誰に命じられたわけでもなく自然とやってのけるというか

カミューの存在というのは不思議なことだが、悪霊でも幽霊でもない、空気や風に近いものであるのかもしれなかった


「…手間をかけた」


もう大丈夫だと、それほど長くないと思った休眠が完了したとの旨を簡潔に伝えると、カミューは神妙な面持ちでこちらを見た

マイクロトフ、と名を呼び、少し遅れてから、大分魘されていたよと告げた


それに対して端的な応答を返す

悪夢のような正夢のような世界から完全に自我を切り離し、すでに平素の自分に戻っている

覚醒後のコンディションを意識的に整える作業ができることは、指揮官にとって不可欠な要素だ

いつまでも、部下たちの前で疲労困憊であってはならない


「大事ない、心配をするな」


ロックアックスで士官学校を受験した頃よりも前の背格好なのだろう

マイクロトフの知っている昔のカミューよりもわずかに背の低い少年は、じっとこちらを凝視したままだ


何かを言いたげであることを察し、どうした、と穏やかに促す

自分はこの少年に気を許しているのだということを、しっかりと自覚しながら


「おまえをここへ寝かせたのは、私だよ」


赤い騎士服の方の


「……………」


咄嗟に言葉が出てこなかった

しかし一方で、やはり、という自意識がある

おそらくまた男の気まぐれで、青の騎士団長が詰める執務室に乗り込んできただけなのだろうが


小さき友であるこのカミューがわざわざ大人の方のカミューに働きかけたとの想像はしづらい

ただでさえ愛する弟を独り占めにされているのだから、同じカミューであるとはいえ、もう一人の自分に塩を送る真似はしないだろう

親友をソファに運ぶだけの行為が、果たして何の得になるのかは甚だ疑問だが


空気が違うのだ

あちらのカミューが訪れると

今目の前にいる少年は陽光を一身に浴びた葉と風の匂いがする

けれど親友の場合はその居場所に、どこか甘美で、そしてそれに劣らぬ整然とした、寂寥たる沙漠の香りが残る

人当たりの良い柔らかな笑みの裏、ひどく困難な場所に隠された、誇り高き民としての矜持が空気を変える

誰も気づかぬことであったろうが、自分には彼という存在の持つ、本当の魂の在り方がわかる

色がわかる

世界を感じる


そうか、と、乾いたような声を発して、マイクロトフはかすかにその表を俯けた





「愛しているんだよ、マイクロトフ」


少年の姿のカミューは言った


主語はなかった

一人称はなかった



夢の中同様に、マイクロトフは即座には答えられなかった

あるいは、あれは夢などではない、現実の出来事であったのかもしれない

実際にカミューは、ここに来て、ここで告げたのかもしれない

独白のような告白を



わかっている

わかっていた

おそらくすべて、自分は知っている

その内情、劣情、過剰とも思しき火のさがを

自分など足元に及ばぬほどの高潔な魂の道筋も何もかも



だが、今は



今では駄目なのだと




呼吸が詰まる苦しさを感じながら、口中で真理が出口を求めて彷徨った



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2025年05月07日

【カミマイ4】カミューの大事な小さな弟

本日腱鞘炎の通院日でしたが
あまりぱっとしない感じで、症状の進展はあまりあるようでないような
(引かない腱鞘炎の(腱の炎症の)状態が悪化することもあるとのことなので)
担当された方には本当に毎度ご迷惑をおかけします

ホルモンが影響することもあるとのことで
内在的なものが要因になるとのお話も

季節的なものでもホルモンのバランスが崩れるので
良くなっても再発することが多いとかそうでもないとかで
ドケルバン病は個人差が極めて出る病気のようです

頭が痛くなるぅ…!

ということで、
完治の日は…現段階では未定です…!!!


そして一気にゴールインまで書き上げたい気持ちにとらわれながらの
十数年ぶりのカミマイ更新の続きです…!

★★★

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幻想水滸伝2【カミマイ】妄想4

カミュー×マイクロトフ

カミューの大事な小さな弟




カミューには小さな弟がいるらしい

その弟が赤騎士団長室に入り浸り、あろうことか帰って来ないのだと言う


カミューが語る話の中身は、マイクロトフの硬い脳味噌では何ひとつ理解することができなかった

わからん、と一言口にして匙を投げてしまえばすぐに片がつくところだが、親友であるはずのあの男の下に兄弟などいただろうかと思い直し、僅かに首を傾げる

マイクロトフは記憶力が良い方であるとは言えなかったが、カミューが話したことのある内容についてはしっかりと覚えている自信があった

特に家族構成については、対人の場面で相手の人となりを知る上で不可欠な要素だと感じている

カミュー以外でも、家族の面々を知ることは人付き合いで最も重要なことだと考えていた

どんな素地があって目の前の人物が育成、形成されたのか、ある種の考えの基となるからだ


大事な下の弟に関して、カミューは多くを語らなかった

とにかく無心で心を削るほど大切な者であるらしい

溺愛しているらしき素振りは、団長であるカミューへの嫉妬にも似た感情からも明らかだった


同じカミューなのにな


そう思うと、マイクロトフは就業中であるというのに不謹慎だとは自覚しつつも、少し笑いたい衝動に襲われた


「笑い事じゃないんだよ、マイクロトフ」


正直に表面に出てしまった感情を見咎められ、年下のなりをしている親友から真剣な眼差しで注意を受ける


「す、すまん」


反射的に謝ってしまったが、それにしても奇妙だなと思わずにはいられない

今以てマイクロトフの頭の中を占めているのは、カミューには確か、弟はいなかったという事実だ

カミューの故郷には、上には兄が、下には妹が一人ずついるだけのはずだ

寄宿舎暮らしをしていた時分に、本人の口から直接聞いた思い出がマイクロトフの中にある

異郷から来た親友だからこそ、時間を惜しんでかつては色々な話をしたものだ


「…弟のようなものだよ」


曖昧な断定に、更に首を横に傾ける


今日割り当てられた仕事は、カミューの手伝いがあって思いの外早く切り上げられた

普段ならば終わった途端即座に部屋を出て、青騎士たちが詰めている政務室へ移動して手伝えることがあれば助力を惜しまず、なければ外の見回りに飛び出しているところだが

珍しく話し込んでいることに自分でも気づいていたが、特段わるい気はしなかった

そもそも提出された大量の報告書の確認作業を短時間で終えられたのは、眼前の少年のおかげなのだから


「…ということは、カミューとは血が繋がっていないのだな?」


カミューは否定をしなかったので、恐らくそうなのだろう


とにかく一刻も早くうちへ連れて帰りたかったらしいが、相手はいやだと言い張っているらしい


「面と向かって言われたわけではないけどね…」


カミューらしくもなく、言葉を濁す


聞けば聞くほどよくわからない


この場合、年齢こそ違えど同名且つそっくりな人物がこの世界に二人同時に存在しているということ自体、わからない方がいいのかもしれない

深入りしていいものかとふと考えたが、困っている者を助けないというのも騎士の恥ではある

カミューはマイクロトフに尽力を求めてはいないが、事情を話してくれたことはマイクロトフにとって喜ばしくない事実ではなかった

親愛を感じていると言えば奇妙な心地にとらわれるが、年下の者の相談に乗ってやれなくて何が騎士なのかと思うからだ

そんなことを考えつつ、マイクロトフは気負いなく言い継いだ


「ほとぼりが冷めるまで、待ってやるというわけか…」


カミューが故郷の人間としては珍しくないほど家族思いであることは熟知している

自分のように幼い頃から実の両親と離れて暮らしていたわけではないし、一家の次長として責任感が殊の外強いことも知っている

家長である兄を立て、妹の面倒を看つつ、遠くで働く父親の代わりに母を支える

そのために立身の口を求めて、わざわざ遠いグラスランドの地からカミューはマチルダ騎士団領まで単身でやって来たのだ

そのカミューを手こずらせ、しかも深い愛情を持って接している対象であるのだとすれば、尚更踏ん切りがつかなくなるのも無理はない

どうしても今はいやだと言うのなら、仕方のないことなのだろう

言動の中には、無理強いをして嫌われたくはないらしいカミューの本音が見え隠れしているようだった

そしてその相手にも、自分の無様な姿を見せたくないのだと言う

今の赤騎士団長であるカミューも同じことを言うだろう、とマイクロトフは思った


「こちらとしても、余裕を見せなければいけないからね」


カミューの言に、大変だな、とマイクロトフは内心で苦笑を漏らした

体面上、どうあっても本心を好いた相手に見せるわけにはいかないらしい

溺愛するほどの存在がいないマイクロトフには半分しかその気持ちを理解することはできないが、男としての意地があるのだということはよくわかった


「それにしても、頑固なのだな」


カミューの弟は


マイクロトフの感想に、それはおまえのことだよ、とカミューは胸中で嘯いた


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2025年05月06日

【カミマイ3】少年カミューとの出逢い

ということで、二人の出逢い編

★★★

水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより


幻想水滸伝2【カミマイ】妄想3

カミュー×マイクロトフ

少年カミューとの出逢い




初めてマイクロトフが少年の姿をしたカミューと対面したのはいつだったのか、とうに忘れた


始めは、子どもの幽霊か妖の類と思い、取り立てて気にはしなかった

彼が育ったロックアックスでも昔話やおとぎ話の内容には事欠かない

生憎それらの知識を幼年期に摂取しなかったマイクロトフは、そんな言い伝えもあるのか、という程度の感慨しか念頭になかった

この歳になって怯えることなどないし、遭遇したところで肝を冷やすような繊細さも持ち合わせてはいなかった

マイクロトフが気がつきながら見て見ぬ振りをしていた理由のひとつには、何かを探しているかのように、その人物が館内の廊下を通り過ぎるだけだったことも挙げられた


とはいえ、すれ違うだけとはいえさすがに管轄の騎士団が務める部署の最高責任者だったマイクロトフは、警備に当たる騎士たちにその場で異常はないかどうかを何度も確認した

しかし部下たちの口からは、平常通りです、の一言しか常に聞こえてこない

マイクロトフの背後では、カミューによく似た少年が探すような素振りで周囲を窺い続けているにも関わらず


どうやら自分にしか見えていないのだな、と悟った超現実主義であるマイクロトフは、実害がないのならば放っておくとの自身の方針の下、カミューに似た存在を意識の外へ追いやるよう努力した

けれど数日経ったある日、軽いため息を吐きながら執務室にやって来て、そこにあるソファの上に当たり前のように腰掛けた少年に、思わず声をかけてしまった

それほど、不意の来訪者が落胆した様子だったからだ


「失せ物は見つからなかったのか…?」


カミューに似た少年は、わずかに憔悴したような顔つきだったが、声色には変化がなかった

私よりもあちらが好もしいらしい、と、大人びた口調が返る


こちらからの呼びかけには、反応を示すらしい

しかし他の者には姿形は疎か、声も音も聞こえないようだ

マイクロトフの中では常識的に幽霊を相手に深入りしていいという道理はなかったのだが、返答の内容を聞いてさすがに心配になった

カミューとはいえ、まだ子どもなのだ


「…恋煩いか何かは部外者である俺にはわからないが、あまり無理をするな」


そう言って慰めると、ありがとう、マイクロトフ、と『カミュー』は言った


その日からカミューは探し物をやめ、マイクロトフがひとりで詰める執務室に顔を出すようになった




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タグ:カミマイ
posted by 水堂とらく@はりこのとら紙老虎 at 14:31 | 日々の更新2025
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