完結編が無事に完結してから
更新するのは『ニェーバ/空』の方から…のはずなのですが
書いているうちに『ポーリェ/野』の方から更新したい気持ちもありつつの
なんだか暑い一日です
病院へ行ってきましたが、
右手拇指サポーターはまだ作業するときと就寝中はつけてね!
…という感じでした
★★★
水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより
幻想水滸伝2【カミマイ】妄想25
カミュー×マイクロトフ
かなたの変革
どういうことだ、と言いだしたい思いを、カミューはぐっと堪えた
意味を問い質したところで、マイクロトフの返答は変わらないだろう
繰り返し尋ねることそのものが愚問であると断じるかのように、彼の言葉には一切の余分がない
冗談もストレートだし、重大な局面で回りくどい言動を絶対にしないのがマイクロトフの流儀だ
それゆえに言葉の重みや信頼感には並々ならぬ定評があり、マイクロトフという人物の価値を高めてきた
ゆえに、そういう意味だ、と訴える相手のまっすぐな眼差しは、カミューからの問いを拒絶していた
「…詳しい事情を訊いてもいいか?」
今以てマイクロトフに対して見せる心理的な余裕は少なかったが、再会した当初よりもカミューの側も大分落ち着いてきた
直筆の文面などではなく、現実の存在としてマイクロトフの体温や息遣いを真横に感じているためだろう
彼の揺るがない呼吸、どっしりと構えた姿勢、そして信用に足る友人としての安心感と存在感を、傍らで覚えたからだ
マイクロトフはカミューの反応を見守りつつ、言葉を放った
少し長い話になりそうだった
マイクロトフがカミューをはじめとした周囲の強い熱意と熱望によってマチルダで全権を握る役目を任じられ、最高指導者としての席に就いた理由は、騎士団の再建が自身の重要な役割であると考えたからだ
騎士を含めた領民たちの安全と保全を最優先にして人選を行い、先の未来を見据え、組織を改革し、さらに組み立てる
任期については明らかにしていなかったが、騎士団が安定するまで尽力するという主旨をマイクロトフは前々から周囲に伝え、説得を続けてきた
過去の英雄が返り咲いた役職に長く居座り続ける事態を、マイクロトフは歓迎しなかったからだ
後任についても、マイクロトフは自らが指導者としての立場に立った時点で選定を進めてきたという
これは青騎士団のみならず赤騎士団でも慣例であったが、マチルダでは自らの進退を常に意識して最前線での活躍を期されていた
組織の中枢部分に、空席の期間をつくってはならない
それはマチルダ騎士団では当たり前の考え方であり、白騎士団に両騎士団の全権を一時的にとはいえ委ねてはならないという各団長の堅固な意志と姿勢であると同時に、白騎士の手足である以上、彼らの足手まといになってはならないという、赤青の二つの騎士団が常に抱える暗黙のルールでもあった
その慣習に倣い、マイクロトフもいつ何時なにがあっても、どのような非常事態に陥ろうと、決して騎士団全体が揺るがないよう、信頼できる部下たちの手を借りて後任の育成や指導にも精を出してきた
青騎士たちの前線での活躍期間が短い理由も、後輩となる騎士の卵をしっかりと導き教育する役に当てられるためだ
無論、最前線での任務を常態的に任されている手前、短い間であっても任地や戦地で殉職する者も多い
騎士団を代表して彼らの葬儀に参列しながら、マイクロトフはカミュー同様、常にそのことを意識してきたはずだ
然るに、責任を丸投げしてここへ訪れたわけではない
だが、ダンスニーを手放して、マイクロトフが慣れない剣を身につけていることはそれとは無関係であるとカミューは思った
この親友の身に何か起こったのだと直感した瞬間、カミューの脳裏は怒り以上のもので溢れ返った
おのれにもここまで理性を垣根なく打ち崩すものがあったのだなと、頭の隅で冷静に捉えながら、カミューは無意識に両膝の間で指を組んだ
そうしなければ、わずかであるとはいえ、醜態をこの目の前の友人に晒すと懸念したからだ
彼に対して見せなければならないのは、頼れる存在としての自身だ
自我をコントロールできない者など、マイクロトフは求めていないだろう
マイクロトフはさらに続けた
その口調は淡々としていたが普段通りしっかりとしており、むしろどこか穏やかであるとさえ言えた
賊がロックアックスに忍び込んだ情報は、事前に受けていたと
領内の護衛を強化し、潜伏先を探ったが、奴らの動きが早かったと説明する
直接こちらに刃を向けてくれれば助かったのだが、その矛先は何の力も持たぬ住民に向けられた
反勢力の残党は民家に立て篭もり、マイクロトフの身を差し出せと言ってきた
彼らにとっての謀反人である現騎士団長に、一矢報いなければ気が済まないのだと
マイクロトフはその要求を呑んだ
しかし帯剣を解くことは辞さなかった
おまえもマチルダで騎士の端くれを名乗ったことがあるのなら、堂々と出てきて俺の相手をしろと
力ずくで押さえ込んでみろ、という意思表示だった
なぜなら罪のない者たちを巻き込むことは、マイクロトフの矜持に関わることだったからだ
多勢と言っても精々四、五人と関係者ではないだろう徒党が数人
部下の騎士たちの再三の加勢の申し出を、マイクロトフは拒んだ
マイクロトフが彼らを侮っていたわけではなく、あちらに侮らせるためだ
実際に単独で数人を相手にする立ち回りは、マイクロトフは日々の鍛錬を通じて彼が配下を指導する際に行い、慣れている
ダンスニーがたとえどんなに重くとも、太刀筋を極めれば、馬上でなくともマイクロトフは他者に遅れをとらなかったからだ
勝負は、真剣勝負の実践にいやというほど慣れたかつての青騎士団長が勝り、実戦経験と力と技量で賊を抑えることに成功したかのように思えた
けれど、あるじであるマイクロトフを見守る騎士たちが気づくよりも先に、一本の矢が、残党の立て篭もっていた家屋の脇で状況を震えながら見ていた無辜の少女目掛けて放たれた
凶弾とも言うべきそれが、図らずとも部外者に向けて牙を剥いたのだ
しかもマイクロトフの側から見て、剛剣を盾にかばえる間合いではなかった
自らが動き、放った賊を仕留めることはできても、逆賊の牙から少女を護ることができない
マイクロトフの判断は神をも超える迅速さで、少女の五体をその一身と腕の中に収めることに成功した
利き腕とは反対の腕に、深く鋭い矢傷を受けて
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