悪化する場合はあっという間になりそうな、そんな感じですね…
おそろしい…
壊れた洗濯機の代わりに新しい洗濯機が届くのを待ちつつ
手で洗濯物を洗っている今日この頃です
★★★
水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより
幻想水滸伝2【カミマイ】妄想17
カミュー×マイクロトフ
甘い仕返し
カミューは正直、湯船に浸かる風呂は好きだったが、蒸気にまみれるサウナは好きではなかった
生まれ育った故郷のカマロでは、湯に浸かる習慣よりもどちらかといえば水を浴びるか体を拭くだけで済んだからだ
グラスランドの気候は湿度自体が低いので、汗をかいてもすぐに表面が乾いてしまうので日々の不快感が少ない
そのため、昼夜の寒暖差が激しかったのは余談だが
そんなところで生活をしていたのでロックアックスの、特にマイクロトフら青騎士たちの風呂好きというものは、カミューにとってさほど共感できるものではなかった
とはいえ、公然とマイクロトフの裸身…半裸だが、を至近距離で眺めることが叶う状況というのは思いの外わるくない
士官学校時代にもそれらしい施設へマイクロトフに連れて行かれた経験があったが、当初は襲ってくる熱さと目眩に根負けをしてあまり長居をすることができなかった
しかし今のカミューは誰に憚ることもない立派な成人男性だ
頑丈すぎるマイクロトフの比ではなかったが、耐性は十分についている
何度か水風呂に浸かる行程を含めて、最終的にはこざっぱりできるものだなと、今なら思えなくもない
そもそも、自分以外に青年が惜しげもなく半身を晒しているということが我慢ならないのだ
いや、あの一致団結することしか頭にないような脳筋たちから見れば、マイクロトフは店に並ぶ芋と一緒なのかもしれない
それは言い過ぎだろうとは自覚しつつ、マイクロトフのすべてを色目で眺めているのは幸いにして自分だけなのだろうと考える
実際にマイクロトフの体や見てくれは、石工で作られたどこかの美術品の青年像のような、理想的な体型をしている
芸術を能くする人間からすれば、書き写したくなるほど垂涎ものの見事な体躯だ
プロポーションがいいというのではなく、あるところに必要な肉がついて、それがいささかの嫌味のない肌の色をして輝いている
見る者が見るとおかしな妄想しかできなくなる、一種の男らしさの中の色香がある
嗜好を刺激される者しか感じない衝動であるとはいえ、カミューにとってマイクロトフの体はあまり他人に見られたくないものではあった
騎士服ならばマイクロトフの裸体を存分に隠してしまえるが、サウナでは完全な無防備だ
タオル一枚で下肢を覆い、それ以外を恥ずかしげもなく晒したまま、部下である騎士や、最近では居合わせた赤騎士にまで声をかけて話をしていると聞く
現に、これまで接触の少なかった青の騎士団長の噂が側近以外の騎士たちから聞こえてくるようになったほどだ
思ったよりも気さくというか、分け隔てなく話かけてくるとか、意外と表情が豊かだとか、おおらかで優しい方だとか
そんなものは、お気に入りのサウナに入ったマイクロトフの頭のネジが少々外れているからであって、普段と百八十度変わって見えるだけだ
仕事人間であるマイクロトフは、仏頂面で厳格な騎士の鑑と言われるような男だ
公的な場で顔を付き合わせることがあれば、あの時と同一人物なのかと不思議に思うくらいの豹変振りだ
あれがマイクロトフの素だと思われては心外だ
余計なライバルが増えてしまうだけではないか
恋敵が増えたところで、一向に負ける気はしないが
そんな感じに、カミューの小言というか、嫉妬から来る恨み言は尽きることがない
欲求不満だと言われればそれまでだが、あまり面白くない状況ではある
マイクロトフを独占して堪能する暇がないと言えば、その通りだが
やはり欲求不満なのだろう
自らそう結論を出して、カミューは身を翻した
マイクロトフを襲いに行く
そんなことを胸に秘めているとは思えないほど堂々とした足取りで、赤の騎士団長は廊下を突き進んだ
「人払いを」
入室するなり短く宣言をされ、マイクロトフは固まった
用事のために団長室を訪れていた騎士たちも呆然とした
しかし次の瞬間、火急の用かと思い改めて、真剣な表情で退室の礼を取った
マイクロトフは、終わったらすぐに呼ぶ、と言って彼らを退がらせた
こちらも厳しい表をしている
おそらくこれは反射的にしていることで、業務の一環だと捉えているのだろう
「カミュー」
名を呼ぶなり、マイクロトフは椅子の上から立ち上がった
同盟軍内で、現在の赤青の騎士団は同格だ
そうした編成と実務の内容にしたのは、カミューとマイクロトフだ
ただ、戦術の面では得意分野が異なるので、赤と青の両騎士でバランスよく人員を構成、配備し、任に当たらせるように仕向けている
目線の高さが異なる状態での対話は相手への非礼ではないが、どうやらマイクロトフの体には上下関係の是非というものが本能的に染みついているようだ
目上への礼節無くして騎士道は貫けないという、古風なタイプなのだろう
何かあったのか、と、マイクロトフは逼迫したような雰囲気の中で親友に問うた
そんな青年の腰を無造作に捕らえると、マイクロトフはまた固まった
カミューは何をしている?
何をしようとしている?、と、頭の中で疑問符が浮かびまくっているのだろう
その横髪に親友の鼻先が埋められた瞬間、ようやく全てを察したようだ
「乳繰り合っている場合では―――」
その先は、軽く触れたカミューの唇で封じられた
声にならず、マイクロトフが喉で呻く
そういう反応が余計に嗜虐心を刺激することを知らないのだろう
ぶるりと全身が大きく震えたのを確かめてから、カミューはようやく友人を解放した
声が大きいよ、マイクロトフ、と優しく囁かれて、外に見張り番の騎士がいることに思い至ったのだろう
頬や顎にすり寄ってくるカミューの肌や髪の毛を顔を背けることで避けつつ、マイクロトフは声を潜めて言い募った
「何のつもりだ、カミュー…」
忌々しげに、といった風情だ
しかしカミューは取り合わなかった
「おまえに首輪をはめに来た」
またしてもなんのことか、マイクロトフにはすんなりとカミューの言ったことを飲み込めなかった
考えているうちに団長服の戒めを解かれ、カミューの手がその下に滑り込んでくる
あまりにも滑らかな動きすぎて、逆にマイクロトフは反応しきれなかった
あっという間に青の長衣が足元に落ちる
男の手際の良さと素早さに舌を巻く暇もなく、襟の留め具を外され、そこにカミューの温かな吐息と共に舌を感じた
マイクロトフは反射的に身を震わせ、羞恥に思わず歯を食いしばった
「っ何をしている…」
言いながら、カミューの背中の服を引っ張り、引き剥がそうと試みる
腰を抱えられているので突き飛ばすことができず、逞しい身を捩った
面白いように弄ばれていることを自覚しているのだろうか
精悍であるはずの相貌に朱を刷いて、懸命に漏れる声音をころしている様は、カミューの眼からすれば非常に悩ましい
事を荒立てれば外に聞こえてしまうだろうと懸念しているのは明白だ
張り番の担当騎士に気づかれて乗り込まれでもしたら、どう釈明をすればいいのか、考えつきもしないのだろう
「カミュー、とりあえず、場所を」
上半身の急所を男にねぶられながら、マイクロトフは声調を殊更潜めて訴えた
せめて仕切りの向こうで及べ、と言われ、カミューは仕方なく机の前から移動した
マイクロトフが夜に眠るベッドの位置まで来ると、今度こそ相手を寝台の上に押し伏せた
形ばかりだったが、人目からわずかに遠ざけられたおかげで心に余裕が生まれたのか、昼間から盛っているのか?、とマイクロトフは不機嫌な面で漏らした
赤騎士も暇ではないだろうに、と皮肉を口にする
マイクロトフに触れているカミューは、底抜けに機嫌良く笑っている
楽しくて堪らないといった様子だ
「おまえが協力をしてくれれば、手早く済ませることができるよ」
そう言って、マイクロトフの襟を手際よくくつろげる
「協力…?」
もはや抵抗するよりも、何が目的なのかの真意の方がマイクロトフは気になったようだ
首輪とカミューが言ったことを、その頭の中で反芻する
入室した親友のどこにも、そんなものは見当たらない
マイクロトフの心中を察したのだろう
ここに、とカミューは言った
そのまま再び男の熱い吐息を感じて、マイクロトフは息を飲んだ
舌先の滑りを感じ、マイクロトフが無意識に吐息を漏らす
白過ぎる肌の色の所為だろうか?
感度が良すぎるな、と、カミューは一人苦笑を浮かべながら、マイクロトフの反応を楽しむように首筋を辿り、吸っては止まり、長い接吻の旅を繰り返した
しばらくして、マイクロトフは男の真の目的を正しく理解した
なるほど、首輪か……
きっちりと肌の表面に浮かんだらしい所有印の列に満足したのか、カミューは満面で微笑んでいる
これで人前で半裸を晒す気にはならなくだろうと、勝ち誇ったような顔をして
相手の嬉々とした顔つきを下から正視して、マイクロトフはようやく意図を察したようだ
「カミュー……」
呆れていたそれが、徐々に怒気へと変わる
騎士服を着ていれば誰に見咎められることもないその場所は、服を脱げば途端に周囲に悟られる
公然と見せて良い代物ではない
特に、意図を持って何度もつけられたものに限っては
自分を気持ちよく風呂場へ送り出したくないという、そういう魂胆か、と
気づくのが遅すぎだ、と言わんばかりの男の態度に、さすがのマイクロトフも頭に来たようだ
意趣返しとばかりに相手の胸ぐらを掴んで睨みつける
カミューは可笑しそうに笑ったままだ
「おまえにもつけるぞ」
目には目を、と言った途端、その明るく透明な瞳の色が光を得てきらりと瞬いた
いたずら心を刺激された子どものような目つきだった
「それは光栄」
にっと口端が持ち上がり、草原の狼のような笑みを浮かべる
瞬間、マイクロトフは何を言われたのかがわからなかった
しかめっ面のまま、きりりと男らしい眉を更に寄せる
その黒い宝玉のような双眸を見つめて、カミューは鷹揚に笑んだ
「私にとっては勲章だよ、マイクロトフ」
言うなり、どうぞ、と、わざわざ赤い団長服の襟元を片手でくつろげて肌を見せつけてきた男に、マイクロトフは絶句を通り越して唖然とした
要は、同じように首に口付けろと言われているのだ
今、ここで
「…………」
挑まれて引き下がることもできずに、マイクロトフは瞑目した
諦めというよりも、自尊心と葛藤しているような、祈るような、聖職者を堕とした瞬間のような、カミューの嗜好を根本から満足させる姿だった
こんなこととはいえ時間が惜しいと考えを改め、マイクロトフは覚悟を決めたのか、その口元がきゅっと真一文字に引き結ばれた
カミューの笑みは途切れない
意を決してマイクロトフが口先を寄せると、次の瞬間カミューに抱きかかえられるようにしてベッドの上に押し倒された
約束通り最後まではしなかったが、その夜から数日間、サウナで赤青両騎士団長の姿を見かけた者はいなかった
―――そんな、戯れの日常
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