★★★
水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより
幻想水滸伝2【カミマイ】妄想15
カミュー×マイクロトフ
暁は遠く
溢れる吐息がどちらのものかわからなくなった頃、ようやく体を離され、マイクロトフは深いため息を全身で吐いた
カミューは名残を惜しむようにしばらくその黒い睫毛をじっと見つめた後、マイクロトフから離れ、自身のベッドの上に戻った
ただ口を合わせて互いを耽溺し合っただけなのに、マイクロトフの脳髄は痺れるような陶酔に体の底からわなないている
カミューという毒であり薬である男は、マイクロトフのつぼを確実に抑えて逃がさない
触れれば触れるほど毒が回って、更に手を伸ばしてしまいたくなるほどの危険な熱そのものだった
マイクロトフは決して詩人としての素質があるわけではないが、そんな男もいるのだなと、この親友と関係を深めてからというもの、つくづく実感させられた
「よく眠れそうかい…?」
暗がりの中、くぐもった笑い声が密かに届いて、青年の顔をむっとさせる
カミューといると、最低でも一度は不機嫌な面構えになってしまうのはなぜだろう
相手が常に自分に心地よい敗北感を抱かせるからかもしれない
まったく歓迎できないことではあったが、今となってはそれも普通のことになりつつある
カミューとこうすることが、ごく自然の日常に
ああ、と強く言い捨てて、就寝のためにマイクロトフは目を瞑った
「おまえも早く休め」
意識が落ちる前にそう命じると、努力するよ、と応答が返った
おやすみ、と、いつもの声が聞こえ、マイクロトフから小さく応答が聞こえた瞬間、安らかな呼吸とともに青年の全身がベッドに沈み込んだ
「おやすみ、マイクロトフ」
カミューは声を潜めて謳うように囁いた
やがて完全に親友の意識が闇に飲み込まれた様を確認すると、再び床に降り、カミューはマイクロトフを見下ろした
白い容貌には昔と変わらぬ安らかさがある
同室だった当時も同じようにこのはっきりとした目鼻立ちの親友の寝顔を眺めたような気がする
頬の赤みは減ったが、先ほどまでカミューになぶられ、自らも求めてきた唇の色は変わっていなかったかもしれない
大人びて、確かに大人だが、格段に手に入れ難いものになった
マイクロトフは自分のことをしかと欲したが、体の関係は、少なくともロックアックスに戻るまで深まることはないだろう
それが口惜しくもあり、渇きを思い起こさせる原因になっているが、マイクロトフの考える通り、愛だの恋だのに興じていい状況ではないのだろう
自らであればそれすら飲み干して戦況に臨む気概でいるが、おそらくマイクロトフ自身はこの戦いのもっと先を見ているはずだ
自分自身で所属した組織に疑問を持ち反旗を翻した責任、マチルダ騎士団の本来の在り方、そして改革を、身を賭して実行に移す腹積りでいる
目の奥にある志は、確実に未来を見ている
それを揺るがないものにするには、色恋は邪魔なのだ
マイクロトフは二つを同時に両立、行使できない狭量であるとも言えるし、一方で一途でもあるのだろう
ひとつに専心し、必ず成し遂げるという強い意志は、揺るぎなきものでなくてはならない
それを助ける立場になることはあっても、挫く者になってはならない
カミューが思うほど、マイクロトフの愛は軽くないのだろう
一見穏やかで深く、そして太くどこまでもつながるものなのだ
だから
カミューはふと自身の顔に自嘲が浮かんでいることを自覚した
頭ではわかっていても、腕を伸ばして手に入れたいという欲求が常につきまとい続ける
例えあちらからいくら唇を重ねられようと、見つめられようと、カミューを真の意味では満たせない
私の切り札はおまえが持っている
そうつぶやいて、カミューは部屋を後にした
マイクロトフの隣で全てを忘れて眠るためには、まだ時間がかかりそうだった
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