空の民草の民シリーズを完結させるべく
かなり速足で駆け抜けます
二人がゴールインするまで…!
★★★
水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより
幻想水滸伝2【カミマイ】妄想5
カミュー×マイクロトフ
遠き誓い
愛している、と男は言った
昔からよく知る、親友の顔で
その表面には苦しそうな影が見てとれ、騎士団が誇る玲瓏たる美丈夫の、涼しげな目元はなりを潜めていた
隠すことのできない激情を、烈火の如き本性を、友である自身は知っている
それが男の持つ、雄々しく強大な、羽ばたける真の自由、翼であることも
外面などどうでもいい
本当の姿を、本心を、おまえにだけは見せられる
そして告げたい
嘘偽りのない姿で
物言わぬ口が、眼が、真っ直ぐに自身に向かい、目を瞑っても瞼を灼いて射抜いてくる
わかっている、とすぐさま思いが喉まで出かけた
その苦渋とも苦悶ともつかぬ秀貌を前にして、理性がたじろぐことはなかった
よく知っている
よく見えている
その心も、面差しも、そして相手が見ている景色も目指すものも
あれだけ飽くことなく共に語らい、作り上げた時間がある
かけがえのないもの
何にも代え難い、代えてはならない刻そのもの
わかっている、と自分は答えた
だが、それ以上言葉が続かない
俺も、とは言い出せない
愛よりも、今は、もっと
大事の前に、自分たちには、少なくとも自身には、完璧に果たさねばならない役目がある
重責が
自らが好んで背負った責務
マチルダの現状と未来
人々の顔
故郷に根ざした志を、明確なこの想いと両天秤にかけることはできなかった
目の前の男は笑っている
口元だけを器用に歪めて
哀しげではなく、自嘲がそこに浮かんでいるかのように
手をこまねいているうちに、どこかへ行ってしまうよ、と訴えているようでもある
ならば、俺は孤独を選ぶ
そう答える前に、利き腕を伸ばされ、相手の長い指が手袋越しに口元に当てられた
使い慣れた、しかし清潔な香りが鼻腔を過ぎる
それを許すと思うのかと
唇の動きだけで、男は無言のまま告げた
ハッと意識が目覚めた瞬間、ひどく汗をかいていたと思う
団長服の上着をかけられ、ソファの上に仰臥していたようだ
机の上で意識を失っていたよ、と少年の声が聞こえる
ああ、と片言で返事をする
外にいた騎士の一人が気づいてここに寝かせてくれたのか
少年の姿の彼には、成人男子でその上重い騎士服を着込んだ体を運ぶことなどできないだろうから、誰かを呼んで手助けを請うたのかもしれない
カミューの容姿や声は自分以外には感知できないもののようだが、他者の意識にささやきかける作用はあるようだ
気のせいか?、と思われることを、見えない者が誰に命じられたわけでもなく自然とやってのけるというか
カミューの存在というのは不思議なことだが、悪霊でも幽霊でもない、空気や風に近いものであるのかもしれなかった
「…手間をかけた」
もう大丈夫だと、それほど長くないと思った休眠が完了したとの旨を簡潔に伝えると、カミューは神妙な面持ちでこちらを見た
マイクロトフ、と名を呼び、少し遅れてから、大分魘されていたよと告げた
それに対して端的な応答を返す
悪夢のような正夢のような世界から完全に自我を切り離し、すでに平素の自分に戻っている
覚醒後のコンディションを意識的に整える作業ができることは、指揮官にとって不可欠な要素だ
いつまでも、部下たちの前で疲労困憊であってはならない
「大事ない、心配をするな」
ロックアックスで士官学校を受験した頃よりも前の背格好なのだろう
マイクロトフの知っている昔のカミューよりもわずかに背の低い少年は、じっとこちらを凝視したままだ
何かを言いたげであることを察し、どうした、と穏やかに促す
自分はこの少年に気を許しているのだということを、しっかりと自覚しながら
「おまえをここへ寝かせたのは、私だよ」
赤い騎士服の方の
「……………」
咄嗟に言葉が出てこなかった
しかし一方で、やはり、という自意識がある
おそらくまた男の気まぐれで、青の騎士団長が詰める執務室に乗り込んできただけなのだろうが
小さき友であるこのカミューがわざわざ大人の方のカミューに働きかけたとの想像はしづらい
ただでさえ愛する弟を独り占めにされているのだから、同じカミューであるとはいえ、もう一人の自分に塩を送る真似はしないだろう
親友をソファに運ぶだけの行為が、果たして何の得になるのかは甚だ疑問だが
空気が違うのだ
あちらのカミューが訪れると
今目の前にいる少年は陽光を一身に浴びた葉と風の匂いがする
けれど親友の場合はその居場所に、どこか甘美で、そしてそれに劣らぬ整然とした、寂寥たる沙漠の香りが残る
人当たりの良い柔らかな笑みの裏、ひどく困難な場所に隠された、誇り高き民としての矜持が空気を変える
誰も気づかぬことであったろうが、自分には彼という存在の持つ、本当の魂の在り方がわかる
色がわかる
世界を感じる
そうか、と、乾いたような声を発して、マイクロトフはかすかにその表を俯けた
「愛しているんだよ、マイクロトフ」
少年の姿のカミューは言った
主語はなかった
一人称はなかった
夢の中同様に、マイクロトフは即座には答えられなかった
あるいは、あれは夢などではない、現実の出来事であったのかもしれない
実際にカミューは、ここに来て、ここで告げたのかもしれない
独白のような告白を
わかっている
わかっていた
おそらくすべて、自分は知っている
その内情、劣情、過剰とも思しき火のさがを
自分など足元に及ばぬほどの高潔な魂の道筋も何もかも
だが、今は
今では駄目なのだと
呼吸が詰まる苦しさを感じながら、口中で真理が出口を求めて彷徨った
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