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2025年05月31日

【カミマイ28・最終話】未来の縮図

右手を痛めながら(もう………_| ̄|○)
カミマイの長編ネイティブシリーズの完結編である
『シェイド』の続きを書いていて、一応大まかな道筋を書き終わりました…!
勢いに乗らないと書けない!!!
…ということで、ネイティブシリーズはエロ本なので(ぶっちゃけ、『シェイド』がそれです)
エロ本はエロ本らしくDLsiteで販売しようかな…とやっぱり思ってしまいますね…
小説らしく、縦読みできる構成にしようかと
現在検討中です
わが家のカミュー×マイクロトフのネイティブシリーズは、エロ本です(きっぱり)

ということで、カミュー×マイクロトフによる
原作的な流れで進む、空の民草の民シリーズは最終話の更新です
長いです!
pixivでいいねやブックマークをしてくださった方には
大変ありがとうございます…!!
通常版のカミューの恋が(成就して)おわったー!!!
やったよー!
幸せにねー!!!…という感じであります…

…ちなみに、空の民草の民に出てくる
ちいさいカミューとマイクロトフは何だったのか、という疑問についてですが
彼らの潜在意識というか、恋心とかそういうものが
見えない形をとったのかなぁ…と思います

『ニェーバ/空』を読むと、このなんじゃらほい的な部分が
ちょっとわかります
わからないかもしれませんが、
幼い時分の、なんか、あやふやな記憶…という感じになるのかなと思います
でもよくわからない(苦笑)

少年カミューとちっちゃいマイクロトフには
明らかな設定はなくて、どんな角度から切り取ってみても
とにかくカミューがマイクロトフにぞっこんなのが
自分の中のカミマイですね
それが小さな少年の姿になって語られているのかなぁ………わからん

カミマイの物語の始まりは、
『カミューがマイクロトフに恋をした』という、その一言に尽きると思います
それが本能的であれ計算ずくであれ、
単に見たままで好きだ!、というそれそのものだけであれ

それがやっぱりカップリング作品を書く、えがき出したいという
動機の根源にあると思います
本当に、どの作品をとっても、自分にはそれだけが真理にして発露の根源です…!

自己満足のかたまりでしかないですが、楽しんでいただけておりましたら嬉しいです
煩悩が超長くて、長く続いてしまって、本当に申し訳ないです…!
お付き合いくださる方には本当に感謝申し上げます…!

★★★

水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより


幻想水滸伝2【カミマイ】妄想28(最終話)

カミュー×マイクロトフ

未来の縮図



すっかり寝入ってしまっていたマイクロトフは、朝も遅い時刻に覚醒した

体の節々に経験したことのない痛みが残っていて思わず顔をしかめたが、意外とわるくない感覚だった

そのうち慣れるだろうと、実戦の経験からその手ごたえを感じ、目をつぶる


昨夜の、というか、午後からのカミューは凄まじかったな、と我が身に起こったこととはいえ心底から実感する

自分でさえ見たことのない男の夜の姿というか、濡れ場というか、本領を遺憾なく発揮したカミューの姿だった

ともすれば、再びカミューに挑まれてでもいるかのような疼きが体の奥深くに鮮明な記憶となってよみがえる

そんな密やかな陶酔と酩酊の繰り返しを全身で持て余しながら、あれは熱かったな、とマイクロトフは思い出すようにひとりごちた


マイクロトフはカミューを乗せたのが初めてで、要するに初体験だった

当然だが、カミュー以外の男を相手に朝を迎えた験しはない

…しかも初夜を


相手の持久力が半端なかったが、あれも経験による差なのだろうか

羨ましいことだと思いつつ、寝返りを打とうとしたその肩に、長い指が添えられた


やはり今日は休日にすることに決めたよ、と


告げるや否や、ベッドの横に潜り込んできた半裸の男は、マイクロトフの剥き出しの肌に吸いつくように、よどみのない動きで後ろからぴたりと身を添わせた

「移住の申請に行く時は、私も同行するよ」


心地よいトーンのカミューの声が、そのまま耳の中に吸い込まれてゆく

む、と、マイクロトフは癖で口を噤んだ


「…そうしてもらえると助かる」


カミューはマイクロトフのうなじに近い短い髪の裾を嗅ぐように優美なかんばせを寄せて、満足そうに微笑んだ

カミューの動きの一つひとつが、マイクロトフの夜の残り香を楽しんでいるように素肌の表面をくすぐる


「私の花嫁殿は、事前の用意を何もしてこなかったようだからね」


花嫁とは誰のことだ?、とツッコむ真似すら野暮だと察し、マイクロトフは普段通りに答えた

自分の放つ声が幾分掠れているように聞こえるのは、おそらく気のせいではない


「愛馬はあとで引き取りに向かうが…」


ロックアックスから連れてきた唯一の供は、休ませる意図で後続の商隊に前金を払って任せてきたので、マイクロトフは後日彼らの元へ向かわなければならなかった


…つまり俺はカミューのところへ、馬と身一つで嫁いできたのか

改めてそう考えると、若干押しかけた感は少なくない

せめてそこは花婿同士にしてくれ、と思ったが、マイクロトフはカミューの好きなように言わせておくことにした


閨での関係もそうだが、本気になったカミューの雄として本分が、自分は存外好きなのだとマイクロトフは自覚した

これまで散々乳繰り合った本番なしの前戯だけでも、相手のことを十分に理解していると思い込んでいたはずだが、やはりあれは互いに出方を伺う小手調べのようなものだったのだろう

確かめ合う方法としては無意味で無価値ではないが、真の実力を発揮できていたわけではないのだな、と

特にカミューはそうなのだろう


あれでは、どんな貴婦人も骨抜きになってしまう

体裁を繕う飾り言葉などなくても、身をもって伝えてくる動きや接触の数々が、触れる熱、揺さぶる律動とその角度が、優しさと手堅さが、マイクロトフの知識や経験を一瞬で凌駕し、塗り替えた

互いを手に入れているという実感を、カミューがもたらした生々しい性交の数々で知った

敗北感も優越感もないそれは、マイクロトフに当たり前のような、それでいて新鮮な驚きを刻みつけた

自分が過去に経たはずの異性との行為は何だったのかと、自問自答しそうになったほどだ

同時に、自身を抱いた相手を、おそろしい男だな、と思ったが、口にはしなかった

おそらくカミューが一番驚いているだろう

本命相手には何と理由をつけても最後まで止まらなくなるのだという事実を、マイクロトフも骨身に沁みてわかった

知らされてしまった、とも言える



「働き口を探していると思うが、おまえがここでやりたいことの目処はついているのか?」


肩や首に端正な鼻先をこすり付けながら、緩やかな癖のある髪質の男が尋ねる

まるで物腰の柔らかな大きな馬だな、と思いながら、マイクロトフはカミューを感じた

のしかかってくる重さをさして苦だと思わず、裸の上半身をさらしたまま、マイクロトフは少し考えた


「…馬の世話は好きだが、知識と経験を欠いた俺では本業の者に遠く及ばん。俺にできるのは、読み書きの指導と剣の型の手本になるくらいが関の山だ」


両手剣は実践としては扱えないが、基本の型や動きを見てやることはできるし、実際に教えることはできる

とはいえ、教本通りではあるし、実戦の相手をしてやれるわけではない


「年少者に手ほどきをする口なら、大いにありそうだよ」


おまえほどの腕なら、と男は語る


連合領内に限らず、世襲などの安定した地位を得られるのは一定の人種の中でも限られたわずかだ

身を立てるための術を、幼いうちから学ばんとする意欲の高い次男坊以下は多い


「たまに、私の助手をお願いしたいのですが?」


元騎士殿、と、取って付けたような敬称を口にする


「…善処はするが、特権乱用になるのではないか…?」


元マチルダ騎士団長という肩書きは、マイクロトフにとってはすでに過去のものであるらしい


「丁度、私以上に有能な助手を探している最中だったのでね」


マイクロトフの腰に回されたカミューの手に力が加わり、密着が深まる


「だったら尚更、俺では力不足だと思うぞ」


カミューより優秀という条件付きなら


謙遜でも何でもない事実を聞いて、喉の奥で男は笑ったようだ


「…お褒めいただき恐悦至極です、騎士殿」


『元』だ、と言って、マイクロトフは離れがたいように力強く抱きしめてくるカミューの髪に口づけた










カミューは少年が走ってくるのを待っていた

待ち望んでいた


乾いた大地の草原の上を、ぱたぱたと軽快な足音を立てて、小さな頭が目の前にたどり着く

相手は、息を弾ませてこう言った


「遅くなった、すまない、カミュー」


言葉遣いがまるで子どもらしくない

相変わらずだ、と思いつつ、その手を取った

当たり前のようにぎゅっと握り返してくる大きな手のひらを、心の底から愛しい、と思った


「…ようやく気が済んだ?」


待ちかねたよ、と言外に含ませる

責めてはいなかったが、大分呆れたような調子だった


もう大丈夫だ、と、黒髪の小さな弟は言った

だから、カミューとともに帰る、と

そう言って、迷いのない足取りで前進を始める


カミューは隣で歩きながら、マイクロトフの綺麗なつむじを見下ろした


「愛してるんだよ」と言う


マイクロトフも、「俺もカミューを愛している」と答える


それだけでもう十分だった

カミューの心は満たされた

本当にもう、長いこと離れていたけれど、小さなマイクロトフはカミューのことを覚えていた

ここに、帰ってきた



「…うちへ帰ろう」


そして、一緒に母が作った手料理を食べよう


こくりと大きくかぶりを振って、マイクロトフはカミューを見上げた


カミューは目を細めた

万感の思いを乗せて、こう言った



「おかえり、マイクロトフ」



ただいま、カミュー、と


見上げる大きな瞳がたくさんの光を湛えて微笑んだ






おしまい






空の民草の民シリーズは、既刊のカミマイ同人誌『ニェーバ/空』と『ポーリェ/野』の続きで、完結編として『空の民草の民』のタイトルで出すはずだったものです
三部作の一作目はカミマイの少年時代で、二作目はカミマイの騎士時代、この三作目でフィナーレとなります
古いジャンルですが、活動当時の気持ちを思い出しながら今の頭の中に浮かぶカミュー×マイクロトフの風景や情景を書き上げさせていただきました
最後まで読んでくださった方には心から御礼申し上げます



おまけ



マイクロトフは、生まれて初めてグラスランドの住人を見たわけではない

当時マチルダと国交がなかったとはいえ、グラスランドと一括りに言っても、広大な土地には多種多様な領地とそこに住む人々が存在した

何しろ友人がそこの出身だったのだから当然初見ではなかったし、同盟軍にもその地方の出身者がいたのだが、やはりロックアックスとは何もかもが違う


連合を代表する騎士服に身を包んだカミューを見るのは、マイクロトフにとって初めてのことだった

再会した時は上着を脱いだ出で立ちだったので気づかなかったが、機能性に特化している意匠であるとすぐに勘付いた

マイクロトフなどからすれば、丈の短いジャケットは足捌きが容易そうで、馬に乗りやすそうだ、と思えたからだ

そういえば、カミューは昔から馬術を得意としていた

マチルダ騎士団の手本通りではなかったが、馬の扱いも手綱の操作も見事で、新馬一体となる独特の騎馬術で、士官生時代の試験の成績もすこぶる良かった

カミューがかつて率いた赤騎士団そのものも機動性を重視し、一気呵成に陣を展開したり、敵に気づかれぬよう背後を取り包囲を行ったりと、動きが早いことが特徴だ

隠密活動、密使や調査など、細部に関わる仕事も多かったと聞く

青騎士が前線に出て戦うイメージが強いが、どちらかといえばマチルダ自体は護りの騎士団だ

都市同盟における軍事的な要とも言える

それを代表する青騎士団は防衛のための布陣が多く、一方の赤騎士が攻撃に抜きん出た者たちで編成された組織だった

如何にして戦いの犠牲を最小限にするのかが青騎士団の長に課せられた重要な役割だと、マイクロトフは先任の団長の補佐役から徹底的に教え込まれた経験がある

現役時代はそれを忠実に、真摯に守り続けてきたが、もちろんマイクロトフ自身は防戦ばかりを得意にする方ではなかった

しかし、傷ついた部下を背負って戦場を駆けたり、部隊に所属していた頃は後詰めやしんがりを務めたりと、切り開く側というよりも、活路を見出し、仲間の命を助ける場面の方が確実に多かった

逆にカミューとカミューが率いる赤騎士団は、明らかに敵を攻め崩すための能力を有し、赤騎士たちはそれに特化していた

色は体を表すとは、よく言ったものだ

カミュー自身、口調や物腰から一見柔和で温和だと思われがちだが、戦場において、また軍議に於いても、赤騎士団の特徴である攻めの攻略を最も得意とし、それを実践して数々の功績をあげてきた

カミューは普段から決して好戦的というわけではなかったが、男が使役する紋章も片手剣も、何者かを護るための手段ではない、と言えばわかりやすいだろうか


…大分話が逸れたが、マチルダの模範的な騎士服の裾が長い理由は、雪深い気候的なものもあるが、戦場や行軍で脚を保護する目的のためだ

もちろん団服であるので、様式美としての儀礼的な意味もあるのだろう

しかし、カマロではそれがない

機動力重視のスタイルはどうやら故郷に根ざした戦術であり、元々カミューの得意分野であったようだ

なるほどな、と思い、感心しながらしげしげと出勤前の身繕いを整えているカミューの後ろ姿を眺めていると、姿見の鏡の前で男がくるりと身を翻した

品のよい調度品が並ぶ室内で、左肩にかかった薄紫のマントが羽のようにひらめく


惚れ直したか?、とでも確認するような満面の笑みがその頬には浮かんでいた


マイクロトフを振り向いた男は、実にすっきりとしたいい顔をしている

長年抱えてきた念願が遂に成就したと言わんばかりの、余裕綽々の笑みだ

それもそうだろう、あれだけやれば満足もするだろう

散々カミューに翻弄され、知らなかった自身の欲望を骨の髄まで知らされる羽目になったマイクロトフだけはそう思った


「…さて、上司たちにおまえを紹介しに行くか」


対するマイクロトフの恰好は、カミューと再会した時と変わらない

マチルダから持ち込んだ、彼の私服だ


紹介、とカミューは言ったが、すでに権限を失っているとはいえ、ふるさとと行き交いのある領地に足を踏み入れたのであれば、正式にでなくとも挨拶をするのが筋なのだろう

だがマイクロトフは地元からの手土産を持参したわけでもなく、謁見や交渉のために訪れたのでもない

況してや婚姻の報告など


「私の伴侶だと説明をした方が、周囲に波風が立たないと思うが」


突飛な発言を耳にして、カミュー、と名を呼び、マイクロトフは平静を装ってたしなめた

マイクロトフの格式高い価値観とは異なり、カマロでは自由恋愛が容認されているのかもしれないとは思いつつも、言わずには居れなかった


「おまえが良くても、俺がロックアックスの恥になる」


かつての最高指導者が、退役したのち嫁ぎ先へ身を寄せたなどという風評が立っては、マチルダにとって良い迷惑だ


かと言って、共に暮らす仲だということは、少なくともこの土地で隠し通すことは難しいだろう、と

対する側は、ありのままの事実を言った


尤もな意見を聞いて、それは事実だから構わん、とマイクロトフは強気に返した

マイクロトフとて、ここでは誰に憚ることもないからだ

故国であるマチルダにさえ迷惑がかからなければ


「だからこそ、おまえにわるい虫がつかないよう、先に牽制をしておく必要がある」


「…………」


俺を襲いたいなどと言う輩は、この世界のどこを探してもカミューの他にはいない


マイクロトフはそう断言したそうな顔つきだったが、男は知っている

マイクロトフは、周りの目というものに全く頓着しない堅物の石頭なので、何もわかっていないだけだ

青騎士たちのマイクロトフを中心に置いた団結力に関しては、体育会系のノリなので許そう

はっきり言って、マイクロトフが率いた青騎士団はスポ根アニメの様相に近かった

そもそもマイクロトフ自体が、配下の騎士たちを身を挺して守ろうとする気骨のある騎士団長様だ

そんな人望ある上司をみすみす死なせるわけにはいかないという美しい騎士道精神が、彼の周囲には蔓延っている

その実態というのはかなり有名で、マイクロトフが負傷する原因の多くは自らの無鉄砲な行動ではなく、部下や領民を庇って矢面に立った結果だ

無論、団長職としての方針もあるのだろうが、何よりも守るべき人命を重んじるマイクロトフならではの行動だった

無茶の大半は青騎士や住民の救助が優先で、彼の補佐役たちはマイクロトフが重傷を負わないように彼を援護、護衛し、時にストッパーとなり、命令とあれば代行等の代役をも務める

ゆえに団長補佐の執行部に在籍した者の責任は重大であり、部隊長同様またはそれ以上の判断力と実力を求められた

そんな彼らの、マイクロトフを中心に据えた結束力は正直侮ることができない

団長を守護し、支えるという使命感の下で団結しているような騎士団だった


そんな彼がひとたび城下におりれば、マイクロトフを密かに慕う子女の何と多いことか

しかもマイクロトフは騎士見習だった当時は疎か、団長位に就いてからも、騎士服の上着を脱いで街のこどもらの相手をして遊ぶことが多かった

ゆえに、すぐに「マイクロトフ様」と市井の人々から声をかけられる

カミューもたまに遊んだが、なぜか自分はご婦人方によく捕まる

自然と少年たちの間ではマイクロトフの人気が高まり、そばに寄る勇気のない少女や淑女たちは思慕の眼差しでひたむきにマイクロトフだけを見つめている有様だ


本人が気がつかないのであれば何の問題もない

だが、カミューは意外と嫉妬深かった


「俺が気にかけているのは、おまえだけだというのにか?」


マイクロトフは驚いた様子で黒い眼を見開いた

確かにカミューが数多の婦女子の相手を恭しい態度でしている姿には、マイクロトフとて忿懣やる方ない思いをすることはある

しかしカミューの対応はいやらしくない上に紳士的で、最後まで丁寧でありながらあっさりしているので、却ってあの神対応は俺も見習わなければな、と思い改める

男子から尊敬の眼差しで見られているのも、カミューであれば仕方がない、と思わなくもない

なのに、カミューは俺が許せないと


「おまえを愛する者は、私一人で良い」


眉ひとつ動かさず、真顔でそう説かれた

熱烈な愛の告白にも聞こえたが、居直っているようにも取れる


「カミュー…」


見かけによらず心が狭いな、とマイクロトフは呆れ顔で言った

自分もある部分ではこの男同様に埒も飽かないことに固執するが、嫉妬や妬みの心は精進には繋がらないという気概の方が強い


それは当然だと、機嫌を損ねた風もなくカミューは横柄に返した


「私はおまえに、昔から恋をしているのだからね。…私以外の誰にもおまえを渡す気はないし、誰だろうとおまえに触れさせたくもない」


愛し愛されているのとはまた別の話だと、恥ずかしげもなく公言する

時を経ても、何を得ても失っても、変わらない想いがそこにある、と


「…………」


確かにそうした信念というか思い込みというのはあるのだろう

根幹部分で変わらないものというのは


それがカミューにとっての自分だというのなら、もはやマイクロトフは何も言う気になれなかった

体ごと何もかも絆されたという自覚もあるし、そんなカミューが好きなのだとわかっていたからだ


マイクロトフは、カミューを理解することを諦めた

今更この男を自分が変えられるとも思わない

カミューは自身などよりよっぽど深慮ある騎士だからだ


カミューの本音を聞いて若干頬が赤らんでしまった気もするが、マイクロトフは敢えて反論しなかった


それよりも、もっとこちらからもカミューを愛してやらなければならないのだろう

愛する者の世話を焼くのが好きだというのならカミューの好きに焼かせて、嫉妬などできなくなるほど忙しくさせてやればいい

あちらが納得するまで、こちらからも愛してやればいい

欲しいというなら、カミューの望むありとあらゆるものを与えてやればいい

カミューが満たされるまで、徹底的に相手をしてやればいい


カミューと共に歩むために、自分はここに来たのだから


休んでいる暇などない

マイクロトフは自らに言い聞かせた




カミューは、マイクロトフを見つめて微笑っている

大地を渡る風のような爽やかさで、胸に宿した熱を鮮やかな色の眸に湛えて見つめている


それを見るマイクロトフの表情は、一点の曇りもなく輝いていた



晴れ渡るロックアックスの空が、そこにはあった





空の民草の民・おわり


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2025年05月30日

【カミマイ27】空の民草の民・エピローグ

自身が過去に出したカミマイ本の
ネイティブシリーズの『ホワイト・ゴースト』と『シェイド』の二作は
『シェイド』の本文のデータがないことも問題なのですが、
テキスト内の種族的な文字をぼかす意味でそこら辺を手で打ち直そうと考えています
白とかネイティブとかをですね…

ネイティブは特段問題はないと思うのですが
発行した当時よりも今は本当に
特定の固有名詞に関しては気を付けなければいけないので
たとえ頭の中で作り上げた創作物であっても
気を付けなければなぁ…と思うので
エロも多いしもしかするとこれはデジタル版にして
DLsiteに卸す作品になるかもしれないです

普通にテキストとして公開するにはかなり難がある…といった印象です
とはいえ、異種族BLものとしては非常に面白い文章になっています
エロありですが…(とほほ!)

ということで、近いうちに『ポーリェ/野』を公開して
『ニェーバ/空』も一緒に再録できたらいいなと考えております

カミマイこと赤青、もしくはカミュー攻め×マイクロトフ受けは
「神舞(かみまい)」で、まさに「神の舞」のごときすごい
創作熱を自身に降してくれたんだなぁ…という印象です
文章という熱量がものすごいです
50%以上はカミューのおかげかな…!、と思います
ほんとにいいキャラとして立ってくれた、と思いますね…
顔よし性格よし(???????)腕よし!…の困った二枚目キャラです、多分

似たような感じでカカイルも文章を書きましたが
カカイルは…未完でお願いします…!すみません!

独自色を出すなら、カミマイの世界が本当に自分には
思い出として強く残っているのかもしれないです
幻想…うん…本当にいい意味での幻想世界なのだな…と思います

ひとまず、カミマイの更新は
『シェイド』の続編を書きおろして完結させておわり!
…という感じかなと思います
最後まで読み切っていただけますと大変うれしいです…!

★★★

水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより


幻想水滸伝2【カミマイ】妄想27

カミュー×マイクロトフ

空の民草の民・エピローグ



ドアを叩いた同僚の前に姿を現したのは、髪を手で整えながら出てきたカマロが誇る自由騎士の一人だった

かなたの領地で騎士の称号を得たという華やかな経歴を持つ現騎士は、留め具もそのままに上着を羽織っただけの恰好で、急ぎ玄関まで駆けつけたと言ったていだ

確かに呼び鈴を数回鳴らしても一向に出てくる気配がなかったので、昼間から風呂にでも入っていたのだろう

それにしては、頭髪は少し湿っている程度で、水を被った後のようにびっしょりと濡れているわけではなかったが

担当である執務室に姿がなかったのでわざわざ家まで呼びに訪れたのだが、午後からの仕事はどうする?、と試しに訊いてみると、実に申し訳なさそうな表情で男は言った


「長年待ち望んでいた私の恋人が、長い道のりを経た末、今日やっとこの地にたどり着いたのです。…そういう事情なので、今から休暇とさせていただきたい」


は?、と、言われた側が、豆鉄砲を食ったような顔つきになる


男は、清々したという表情と、どこか気怠げな雰囲気で、更に言葉を続けた


「明日、関係者には私から紹介しますので、何卒推し量らいいただきたく。そちらからも便宜を図っていただきたい」


端的に言えば、取り込み中なのでこのまま休む、職場にはそう伝えておいてくれ、という意味合いだろう


恋人が、という下りだけで、プライベートであることは明白だったが、長年の想い人との再会であったらしいので、火急の用事というのもあながち嘘ではないのだろう


遠くから訪れた、という説明だけで、相手はその内情を理解した

待ちわびた来訪者であったのだとしたら、男にとって共に過ごすことのできる時間は何よりも尊く、一分一秒でも離れているのが惜しいはずだ

愛情に深い土地で育った同僚は、あいわかったと深々と頷いた

ここは穏便に、要望を受け入れる処断を下すべきなのだと腹を決め


「貴殿の想い人殿…その方を、大切になされよ」


「言われずとも、そのつもりです」


待っていたのだから、それこそ何千倍何万倍にして想いを言葉に、行動にして示すと


カミューという名の男は深い深い笑みでそう答えると、重い扉を静かに閉じた




カミューの家の寝台の上で、マイクロトフはゆっくりと安息の寝息を吐いたまま休んでいる

その裸の肩に、カミューは優しく手のひらを置いた


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2025年05月29日

【カミマイ26】誉れある落天

Ci-enのこちらの記事でも書きましたが、
カミマイ本のWEB再録は
最終話更新後、『ポーリェ/野』から順次再録…?というかたちにしたいと思います

ハッピーエンドから、また片思い時代に戻る…というのもアレですが(苦笑)
少年時代編でも、騎士編でも
カミマイで悶々できるのが赤青のすんばらしいところで…すごいんだ…ほんとに…
熱暴走できた、すばらしいカップリングです
カミューが文字通りカミマイの神だったんだな…きっと(苦笑)
…と思います
なんでこの二人が生まれたのかについては、特にすごいことではないと思います
誰もこんなに妄想することになるとは考えなかったんじゃないかな…素材としても…
キャラとしても……原作の設定としても……

…ということで、謎がひしめくわが青春時代の
カミマイの更新をこれからも楽しみにしていただけると嬉しいです

ほぼほぼオリジナルみたいになっておりますが
オリジナルキャラはあんまり出さないで名前も伏せて行こうと考えています
具体的に名前を付けると、なんか登場人物のえせさが際立つので
カップリング的な世界に入り込みづらいかな…と思いつつ

三角関係とかはなくて、カミマイは飽くまでやっぱり
二人きりの世界だというのが
個人的には前提としてあるようです
恋心の成就までを、ずるずるとニマニマしながら書いています
こう書くと、大して面白くなさそうですが
やきもきする部分とか、カミュー頑張ってくれとか思うところとかが
非常にこう、自分は大好きでした

ということで、『空の民草の民』は、ラストまであと少し!

★★★

水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより


幻想水滸伝2【カミマイ】妄想26

カミュー×マイクロトフ

誉れある落天



それで騎士を辞めたのか


カミューの声を、マイクロトフは聞いた


責めている口調であるのは、カミューにとって自らの誓いを体現する愛剣を手放したことを指してだろう

マイクロトフの半身であり、カミューの愛刀であるユーライアと対極にあったような、誰が見ても頑強と思しき強靭な騎士の剣だった

折れたわけではないだろうに、主人に置いていかれたそれを憐れに思ったのだろう

マイクロトフはカミューからの非難も覚悟していた

だがしかし、決めたのはマイクロトフだ

誰からの説得も受ける気はなかった


「遺恨を断つためだ」


マチルダを崩壊させた直接の元凶でないとはいえ、自分が関係者であったことをマイクロトフは自ら認めた

だからこそ、そうではない後任を選出し、上に就けたかったのだと

いつまでも自分のような謂れを持つ騎士が、大事な局面を経て、長くその地位に居座ってはならないのだと


正論ではある

怪我さえなければ、剣を握り続けられてさえいれば、そのまま最高指導者としての任を続けていたと、マイクロトフは言わなかった

退任することで、民衆を巻き込んだ引責を果たしたのだとも取れるし、騎士団として次の一手を差す絶好の機会であったとも言える


おそらく周囲は彼の決断を歓迎しなかっただろう

彼の手で守られたロックアックスの住人も同様だ

けれど、今後の進展を彼らに明示することで、安心して暮らし、マチルダを存続できると説得して、マイクロトフは潔く、そして堂々と最高位の席から退いたのだ

カミューには、彼を取り巻いていた当時の状況が手に取るようにわかった



「あの外套は、ロックアックスを出立する前に手渡されたものだが」


知る者が見ればそれとわかる、マチルダを代表する権威を象徴する刺繍が文様として嵌め込まれ、白銀の糸で仕上げられた独特の意匠

マチルダの栄誉が共にあるようにと、部下たちや市民からの嘆願を込めて織られ、祈られ、しつらえられたものだった

長旅で纏うには上物過ぎたが、とマイクロトフは一瞬顔をしかめたが


「俺がロックアックスから持ち込んだ、最初で最後の誇りだ」


口調には、寸分の迷いも未練も、惑いすらなかった



カミューはマイクロトフの体に腕を伸ばし、彼を支えた

万感の思いが宿るその衣とマイクロトフの双眸を幽幻な眼差しが宿る視界にとどめ、たった一言を親友に告げた


「…おかえり」


マイクロトフ、と


名を呼ばれた白皙の表に、ほのかな光が灯るのをカミューは見た


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posted by 水堂とらく@はりこのとら紙老虎 at 08:36 | 日々の更新2025
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2025年05月28日

【カミマイ25】かなたの変革

過去に出したカミマイ同人誌の『ポーリェ/野』の加筆修正を進めているのですが
完結編が無事に完結してから
更新するのは『ニェーバ/空』の方から…のはずなのですが
書いているうちに『ポーリェ/野』の方から更新したい気持ちもありつつの
なんだか暑い一日です

病院へ行ってきましたが、
右手拇指サポーターはまだ作業するときと就寝中はつけてね!
…という感じでした

★★★

水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより


幻想水滸伝2【カミマイ】妄想25

カミュー×マイクロトフ

かなたの変革



どういうことだ、と言いだしたい思いを、カミューはぐっと堪えた


意味を問い質したところで、マイクロトフの返答は変わらないだろう

繰り返し尋ねることそのものが愚問であると断じるかのように、彼の言葉には一切の余分がない

冗談もストレートだし、重大な局面で回りくどい言動を絶対にしないのがマイクロトフの流儀だ

それゆえに言葉の重みや信頼感には並々ならぬ定評があり、マイクロトフという人物の価値を高めてきた

ゆえに、そういう意味だ、と訴える相手のまっすぐな眼差しは、カミューからの問いを拒絶していた


「…詳しい事情を訊いてもいいか?」


今以てマイクロトフに対して見せる心理的な余裕は少なかったが、再会した当初よりもカミューの側も大分落ち着いてきた

直筆の文面などではなく、現実の存在としてマイクロトフの体温や息遣いを真横に感じているためだろう

彼の揺るがない呼吸、どっしりと構えた姿勢、そして信用に足る友人としての安心感と存在感を、傍らで覚えたからだ


マイクロトフはカミューの反応を見守りつつ、言葉を放った

少し長い話になりそうだった



マイクロトフがカミューをはじめとした周囲の強い熱意と熱望によってマチルダで全権を握る役目を任じられ、最高指導者としての席に就いた理由は、騎士団の再建が自身の重要な役割であると考えたからだ

騎士を含めた領民たちの安全と保全を最優先にして人選を行い、先の未来を見据え、組織を改革し、さらに組み立てる

任期については明らかにしていなかったが、騎士団が安定するまで尽力するという主旨をマイクロトフは前々から周囲に伝え、説得を続けてきた

過去の英雄が返り咲いた役職に長く居座り続ける事態を、マイクロトフは歓迎しなかったからだ

後任についても、マイクロトフは自らが指導者としての立場に立った時点で選定を進めてきたという

これは青騎士団のみならず赤騎士団でも慣例であったが、マチルダでは自らの進退を常に意識して最前線での活躍を期されていた

組織の中枢部分に、空席の期間をつくってはならない

それはマチルダ騎士団では当たり前の考え方であり、白騎士団に両騎士団の全権を一時的にとはいえ委ねてはならないという各団長の堅固な意志と姿勢であると同時に、白騎士の手足である以上、彼らの足手まといになってはならないという、赤青の二つの騎士団が常に抱える暗黙のルールでもあった

その慣習に倣い、マイクロトフもいつ何時なにがあっても、どのような非常事態に陥ろうと、決して騎士団全体が揺るがないよう、信頼できる部下たちの手を借りて後任の育成や指導にも精を出してきた

青騎士たちの前線での活躍期間が短い理由も、後輩となる騎士の卵をしっかりと導き教育する役に当てられるためだ

無論、最前線での任務を常態的に任されている手前、短い間であっても任地や戦地で殉職する者も多い

騎士団を代表して彼らの葬儀に参列しながら、マイクロトフはカミュー同様、常にそのことを意識してきたはずだ

然るに、責任を丸投げしてここへ訪れたわけではない


だが、ダンスニーを手放して、マイクロトフが慣れない剣を身につけていることはそれとは無関係であるとカミューは思った

この親友の身に何か起こったのだと直感した瞬間、カミューの脳裏は怒り以上のもので溢れ返った

おのれにもここまで理性を垣根なく打ち崩すものがあったのだなと、頭の隅で冷静に捉えながら、カミューは無意識に両膝の間で指を組んだ

そうしなければ、わずかであるとはいえ、醜態をこの目の前の友人に晒すと懸念したからだ

彼に対して見せなければならないのは、頼れる存在としての自身だ

自我をコントロールできない者など、マイクロトフは求めていないだろう


マイクロトフはさらに続けた

その口調は淡々としていたが普段通りしっかりとしており、むしろどこか穏やかであるとさえ言えた



賊がロックアックスに忍び込んだ情報は、事前に受けていたと

領内の護衛を強化し、潜伏先を探ったが、奴らの動きが早かったと説明する

直接こちらに刃を向けてくれれば助かったのだが、その矛先は何の力も持たぬ住民に向けられた

反勢力の残党は民家に立て篭もり、マイクロトフの身を差し出せと言ってきた

彼らにとっての謀反人である現騎士団長に、一矢報いなければ気が済まないのだと


マイクロトフはその要求を呑んだ

しかし帯剣を解くことは辞さなかった

おまえもマチルダで騎士の端くれを名乗ったことがあるのなら、堂々と出てきて俺の相手をしろと

力ずくで押さえ込んでみろ、という意思表示だった

なぜなら罪のない者たちを巻き込むことは、マイクロトフの矜持に関わることだったからだ

多勢と言っても精々四、五人と関係者ではないだろう徒党が数人

部下の騎士たちの再三の加勢の申し出を、マイクロトフは拒んだ

マイクロトフが彼らを侮っていたわけではなく、あちらに侮らせるためだ

実際に単独で数人を相手にする立ち回りは、マイクロトフは日々の鍛錬を通じて彼が配下を指導する際に行い、慣れている

ダンスニーがたとえどんなに重くとも、太刀筋を極めれば、馬上でなくともマイクロトフは他者に遅れをとらなかったからだ

勝負は、真剣勝負の実践にいやというほど慣れたかつての青騎士団長が勝り、実戦経験と力と技量で賊を抑えることに成功したかのように思えた

けれど、あるじであるマイクロトフを見守る騎士たちが気づくよりも先に、一本の矢が、残党の立て篭もっていた家屋の脇で状況を震えながら見ていた無辜の少女目掛けて放たれた

凶弾とも言うべきそれが、図らずとも部外者に向けて牙を剥いたのだ

しかもマイクロトフの側から見て、剛剣を盾にかばえる間合いではなかった

自らが動き、放った賊を仕留めることはできても、逆賊の牙から少女を護ることができない


マイクロトフの判断は神をも超える迅速さで、少女の五体をその一身と腕の中に収めることに成功した

利き腕とは反対の腕に、深く鋭い矢傷を受けて


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2025年05月27日

【カミマイ24】下天の空

先日、『ニェーバ/空』と『シェイド』を読んだんですね…
自分が出した赤青本というかカミマイ本の…

で、『シェイド』の完結編を書こう!…と思いつつ
そういえば『ポーリェ/野』の記憶があんまりないな…と思って読み返したら
平和なカミマイで…えええええ…@@状態に(苦笑)

カミュー、完全にマイクロトフと肉体関係を築くことを忘れた
単なる父性になっちゃっていたので
ええ…これ、完結しないよ!!
…と思ったので、『ポーリェ/野』再録の際には加筆修正しまくると思います
より、カミマイにするために…!
というか、今えがくことのできる脳内のカミマイにしまくりたい!!!

と思いつつ、適当な記憶で
騎士になってから団長になる前までのカミマイの文章を
とりあえず突発的に三つほど書いたので、
いつかまたアップできればと思います

カミューがマイクロトフに執着しないとカミマイが始まらないのですが、
『ニェーバ/空』では完全にカミューがマイクロトフに参っている(すっきー)反面
『ポーリェ/野』の青年カミューが非常にこう…恋心を半ばあきらめているので(あほ!)
そこら辺の、特に騎士〜団長時代の補足をしたい感じです

完結編につながるように前後を書き足せたらいいなと思いながら
『ポーリェ/野』補足用に、ちょっと短文を多めに打っていこうと思います

『シェイド』はいろいろと待って!!!!!!!!
時間的な意味でも、右手の炎症が痛い的な意味でも!!
…という感じです

オリジナル作品気分で読んでいただけると嬉しいカミマイです

でも、カミマイってほんとにすごいんですよ…
流行っていた当時のリアルタイムでの時代的に

当時は赤青でパラレル、妄想、自己設定、オリジナルキャラ満載とか
なんでもありでした
カップリングを深めるためであれば、それもよし…!

カミューの攻めキャラ的な要素がすごいなんか…
カミューをいい男、美男として扱ってくれるところがめちゃくちゃ好きでしたね…
カミューは結局持てるんですよ、きっと…!
で、マイクロトフは天然(爆笑)

…と思ったカミマイ同人ワールドでした
わかる人だけ笑ってください…!

わからない方も、こんな日記を読んで
くすっと笑っていただけて、作品に触れる機会となりましたら嬉しいです…!

★★★

水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより


幻想水滸伝2【カミマイ】妄想24

カミュー×マイクロトフ

下天の空



全く違う風だ、とその人影は思った

姿なきそれは故国に吹く湿った感触とは違う、掴めぬほど軽快で颯爽とした切れ味のある技のような

それは彼にとって、身に纏う衣をはためかせる時にだけ姿を見せる、無色の変異と呼ぶべきものだった



カミューはその日、担当部署がある中心部の建物の中、個別に割り当てられた政務室の机に着き、資料に目を通すかたわら、時折窓から野外を眺めて過ごしていた

拓けた大地に広がる独特の町並みを超えて、遠くその先に厳重な警備が敷かれた門がある

カマロ自由騎士連合が統治する土地は、グラスランドにある自治領の一つだ

様々なクランを抱えたこの地では、建物の様式もそこで暮らす民族も多様で異なった

カミューが幼少時代を過ごした生家はここから少し離れた場所にあり、今ほどの活気はなかったように思う

現在では交易が盛んで、簡単な手形さえあれば街に入れるため、毎日様々な人種が行き交っていた

部族間の紛争が絶えない地ゆえに、旅人は少ない

けれど到着地でもあり安全な中継地点でもあるカマロ領の中は、立ち寄った商隊がひしめき、それらを護衛する者たちで関門の内側は常に賑わった

無人になることの少ないその大門の付近に、カミューはたまに足を向けることがある

元から種の区別なく接することに慣れた風土で育っているため、珍しい交易品などを直に買いに行くことも珍しくなかった

稀少な特産物や茶葉を手に、道中の話を聞き出す行為も大いに楽しい

カミューの交流や会話術も、こうしたところで幼い頃に培われた

各国の情勢に関しては仕事柄、日頃からアンテナを張り巡らせているし、人々の噂話からも世界の現状が知れれば自身の今後にも役に立つからだ


カミューは休憩と称して席を立ち、外へ足を向けた

必要な会議があれば、召集された時刻に間に合えばそれで済む

規律が厳しく厳格なロックアックス城勤めとは違い、カマロでの任務はかなり自由が利く

人々には臨機応変に対応できるだけのゆとりがあり、能力の発揮を求められるのは日々の実務以外では必要な時に限られた

そうすることで効率を図る人柄が多かったので、グラスランド全体や一部の部族間での衝突など、明らかな難局が自分たちの自治に及ばない限り、比較的平和だと言えた

決して恵まれているわけではなかったが、食料については共通の通貨で買えば良いし、住む土地も一応はある

放牧も盛んであるし、広い領内に足を伸ばせば、至る所に人々が点在していた

大きな街はここにしかないが、中規模以下であれば地図の上に点在している

暮らし続けるには難題の多いところもあるが、そこが住み慣れた場所である者たちにとっては離れがたい事実に変わりはないのだろう

カミューの実家も、長兄が家族を呼び寄せてこの街の一角に住居を構えた経緯がある

カマロはカミューにとってふるさとではあるが、細かく分類をするならば、この街はそれとは少し異なった

ただ、生まれた処と同じ風が吹く

それだけだった



高低差の激しい人の波をなんとなく遠くから眺めていると、ふとそこにひときわ背の高い白い影を見つけた

目に留まったのは、明らかに見た目が異国風であることと、相手が自分と同じくらいの背丈だったからだ

そして、身に纏う、昼の光の下でも鮮やかなプラチナにも映る純白


そこに刻まれた文様に見覚えがあると思った

一見無地と見まごうそれに、同色の糸で刺されたのだろう、覚えのある徽章の紋

白を纏う男は、すぐにこちらに気づいたようだ

カミューはグラスランドで珍しい容姿ではない

人型であるというだけで、瞳の色も髪色も、変哲のない水飴のような明るい茶系だ

肌の色も深すぎるわけではなく、浅すぎるわけでもない、常識的な範疇だ

似たような色彩の人間はここにも数多くいる

なのに見分けられたとでもいうくらい、カミューの方をあちらも見ている


まさか、と思った瞬間、カミューの四肢は動いた


人波をかき分け、最短距離で影に近づく

真白のフードと外套に身を包んだ側も、前に進んだ

しかし、地の利を心得たカミューの方が到達が早かった


マイクロトフ


口中でつぶやいた名前は、真っ直ぐに相手に向かって叫びとなって放たれた





人混みを避けるように、カミューの足は自然と自身の生活区へ向かった

手を取るなり急いで来てしまったが、捕まえられた男の方は落ち着いた様子だ

どこへ連れて行かれるのかもわからないだろうに、呑気なものだ


カミューは自らの住む借り家に、とりあえず男を押し込んだ


ここがカミューの家か、と居間に入るなり問われ、実家からはもう出ているよ、と答える

語尾がわずかに震えていることを気取らせまいと、安心して腰を下ろすことのできる長椅子を指差した

マイクロトフの荷物はほとんどなく、水と食料と路銀くらいだったのだろう

一体全体どうした、と尋ねるのもおかしい気がして、カミューは紅茶を淹れてくると告げて彼を待たせた

席を離れる前に横目でその様子を伺うと、マイクロトフはどこか緩慢な動きで頭から羽織っていた外套を外すところだった

ゆっくりと

そこから覗いた艶やかな黒髪を見るや、カミューは如何ともし難いかつえを身のうちに覚えた

引き剥がすように視線を戻し、台所へと向かう

透明な白だと思っていたマイクロトフの肌は、グラスランドの陽を受けて、わずかに焼けたようだった



「無事だったのなら、なぜ真っ先に伝えなかった?」


カミューとしては幾分語気が荒かったが、真摯に問う場面ではなりふりなど構っていられない

余裕綽々といった普段の紳士的な態度とは、百八十度異なっていた

温厚柔和であるのは見知らぬ他人に対してだけであり、荒々しい素の男を昔から知っている手前、マイクロトフは特に慌てた風もない

そもそもカミューが本気で怒っているからこそ、丁寧な口調で諭すことをしないのだと、マイクロトフにはわかっていた

カミューは機嫌がわるいから態度を変えたのではなく、真剣にこちらの身を案じていたからこその反応だと

それゆえにマイクロトフは、カミューの思いを汲んで、すまん、と謝った

一言言って、手渡されたカップの中身をすする

その喉仏がきれいに上下に動く様を注視しながら、カミューはさらに続けた

尚も言いつのりたかったが、マイクロトフを責めるためにここへ連れてきたわけではない


「…おまえが五体満足であるなら良かった」


半ば脱力したい気分だったカミューは、マイクロトフの隣に腰掛けた

マイクロトフはそれについては答えなかったが、おまえの顔が見たかった、と告げた


カミューはマイクロトフがこの街に来た理由を尋ねるべきか、一瞬迷った

マチルダはどうしたとか、心は決まったのかとか、身を固めるつもりか、とか、訊きたいことは山ほどあった

後者の想像が膨らむにつれて、湧き上がってくる自らの期待や欲求と闘う羽目に陥ったが、それはこの場では瑣末なことだと判断した

実際、カミューにとってまったく些細な事柄でないとはいえ、現時点では心の隅へ追いやった

それよりも、マイクロトフの言い方が気になったからだ


「ロックアックスを離れたのか」


マイクロトフの所持品の少なさから判断するに、もしかすると荷物は後から届けられる手はずであるのかもしれないが、旅行中というわけではなさそうだ

わざわざ視察や見聞のために異郷を訪れたというわけではあるまい

公務であるならば、供の騎士の一人すら連れずに単身で、というのは考え難い

正式な公使であり、特使でもあるのだとしたら、マイクロトフといえど入国には相応の手順を踏まなければならない

それなりの組織の筆頭を迎えるのであれば、カマロ側も礼を尽くさねばならないからだ

彼が一人であることが、そもそも異常な状況だ

マイクロトフは今もマチルダが誇る最高位の騎士で、権威ある指導者であるはずだ


そこでカミューは妙なことに気がついた


「…マイクロトフ」


ダンスニーはどうした、と彼の愛剣の所在を尋ねる

騎士の証であるあの大振りの一刀が、マイクロトフのそばから消えている

その代わり、カミューの剣ほどではないが、若干細身の片手剣を帯剣していることに多大な違和感を覚えた


これは、大したことだと思った

尋常なことではないと直感した

無事かどうかの返答をしなかった理由がこれか、と思った



「カミュー」


俺は騎士を辞めた、と語るマイクロトフの声をカミューは聞いた


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posted by 水堂とらく@はりこのとら紙老虎 at 09:32 | 日々の更新2025
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2025年05月26日

【カミマイ23】惑いなき起こり

古い作品ファイルは全部探せたと思います…
外付けの古いHDDに電源が入らず、壊れているのが一個あったけど…!

カミマイ作品…同人誌で2003年ごろから発行していた本について
再録が可能になりそうなのは
・ニェーバ/空(空の民草の民シリーズ・カミマイ少年時代話)
・ポーリェ/野(空の民草の民シリーズ・カミマイ青年期話)
・ホワイト・ゴースト(ネイティブシリーズ)
・シェイドっぽい(四コマ)
・馬王子(四コマ)
・馬王子II(四コマ)

(現在進行形で更新中なのが、空の民草の民シリーズの完結編です)

・シェイド(ネイティブシリーズ・続編)
…についてだけ、完全な原稿データがないので復活させるとしたら
手元の自分の同人誌のテキストを手で打ちなおすアナログな作業…になると思います
シェイドだけはなぁ…ホワイト・ゴーストつながりのお話で
しかもデッドエンドなので非常に悲しい内容になってます
その続編として、完結編を書かなければいけなかったのですが
それが果たされていないので
書くか………………!!!!!
…という感じになっております
ホワイト・ゴーストになったカミューとシェイドのマイクロトフが仲良く
ハッピーエンドになるのが、ネイティブ話の道筋でした
最後がないと、ほんとに気の毒CPで終わってしまう…
やだよ、そんなの!!!!!!!!!!
…というのが本音でありました
これ、あかんよ…悲しすぎる…と、読み返してつくづく思いました
両想いになったのにぃいいいいいい(苦笑)

…今年は何か、未完だったものを書き上げる…完結させる年なのかもしれません…
なんの成果も上がらないと思いますが
一人でも読んでいただけているのであればめっちゃうれしいですね

ちなみに、カミマイってメジャーではないのですよ
なので、性別や年齢を問わず、元ネタ全然わからんマンな方にぜひ読んでいただきたい作品です
ほんとに、その方がいいかなぁ…と個人的には思います

昔の自分、よくやったな…(よくこれだけの煩悩ができたな…)と
つくづく思います
とにかく、めっちゃ量(文章量)が多いです
お付き合いいただけましたらうれしいです

★★★

水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより


幻想水滸伝2【カミマイ】妄想23

カミュー×マイクロトフ

惑いなき起こり



ロックアックスからの正式な公文書とは別に、カミュー個人に宛てた手紙が届く

数ヶ月単位でもたらされるそれは、愛する者からの便りだ


息災か、だとか、季節の移り変わりだとか、懐かしい土着の風習に関する話だとか

身近な出来事をしたためた、いわゆる私的な内容だ

生真面目で硬質で、けれどあたたかな筆跡で綴られた愛しい文面


カミューはマイクロトフの直筆の署名を目にするたびに、彼のすべてを手にしていることを改めて実感する

誰に対しても同じようなことをしているわけではないのだろう

身内に対するよりももっと親身な、何よりも深くしたたかな親愛が、そこには込められている


カミューはそんな相手のことを、姿を思い浮かべながら返信を綴る


マイクロトフ


会いたい、と最後に締めくくるのは未練ではない

本心であり、毎夜抱いている、嘘偽りのない真実だ


相手から同じ文言を引き出すことは叶わなかったが、それゆえに紙面いっぱいに律儀に書き込まれた言葉の数々が答えてくれる

カミューが寂しがっていないかと、大方気にかけてくれているのだろう

よくここまで書き綴るネタがあるものだな、というくらい、細かな日常までを詳細に記してくれている

さすがに読むのが大変になってくるが、さして苦にならない

マイクロトフの内面をそのまま見せられているようで、カミューにとって、彼が自分に宛てた手紙を読むことは、愛する者との懐かしい時間に浸れる刻でもあった




その、マイクロトフからの便りが途切れた

カミューはそれに関わる変事について心当たりがあった


ある時、愛用の茶器を出し、午後の公務に当たる前の小休憩をしていた際、真新しかったはずのカップに突如亀裂が入った

それは綺麗に一筋の線を残してすっぱりと斜めに割れ、床に透明な液体を零して落ちた

何か良くないことが、おそらく自らの周りに起きた、とカミューは直感した

占星術師やまじない師と特に親交があるわけではなかったが、そんな気がした


それから数回、ロックアックスから自由騎士連合本部に宛てた書簡は届いたが、マイクロトフからカミューに宛てた便りは途絶えた


カミューはそれらの原因について、書面と共にかの土地から荷を運んでくる商隊にそれとなく尋ねたが、彼らは皆、首を横に振る一方だった

しかしカミューのもともと鋭かった勘は、使者も務める男が知らぬ存ぜぬで通すよう、向こう側の人間から言いつけられているのではないかと踏んだ

心積もりを再三手渡し、何度も頼み込んだ末に、ようやく男は重い口をこじ開けた

反勢力に、マチルダの騎士団長が襲われたのだと

半年以上前の出来事で、それ以後ぱたりとマイクロトフからの便りが途絶えた


先ほどまで人当たりが柔らかかったはずの騎士の表が急に研ぎ澄まされた刃のように鋭く、険しくなったなった姿に怯えるように、彼の命に別状はなかったと商人は言ったが、だとしたらマイクロトフはそのことを自身に伝えてくるはずだ

こちらに襲撃の件を報せたくなかったというなら、わからないでもない

不穏な動きがあることなどどこにも書かれていなかったので失念をしていたが、現団長であるマイクロトフに恨みを持つかつてのゴルドー派の残党がロックアックスに留まっていたか、あるいは何かを機に戻っていたとしても不思議ではない

根回しをして抱き込んだ末に根絶やしにしたと思ったが、時が経っても遺恨を晴らそうとする輩が残っていたということか

警備隊や彼の親衛騎士、補佐を兼務する側近に至るまで、何をしているのだと憤慨する気持ちと、マイクロトフの身に対する懸念が交錯する

カミューは男に丁寧に礼を言い、解放した後、なんとも言えない後味のわるさに苛まれた


マイクロトフは負傷をしたのだ

それもかなり重大な欠陥を残すような大怪我を

でなければ、何事もなかったかのように手紙を書き続けられたはずだ


彼に大事があった

カミューはそう直感した



苦い

彼の元を離れて初めて味わう、最も苦い一日だった



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posted by 水堂とらく@はりこのとら紙老虎 at 08:38 | 日々の更新2025
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2025年05月25日

【カミマイ22】はるかなる青

気になって古のディスクを取り出して
過去の個人HPに掲載していたらしきもろもろのバックアップを
少しあさってみたのですが

ちなみに、当時…二十年以上前だと外付けHDが
めちゃ高いというか、容量も少ないし100GBとかがメジャーだった感じで
CD-R(懐かしい…)やDVDに焼いた方が早かった部分もあったんですね

なので、ディスクを読み込んで…という具合で探してみたのですが
カミマイパラレル長編小説の『ホワイト・ゴースト』と『シェイド』が
見つからなくて、再録は不可能っぽそうな印象です…

その代わり、なんか…懐かしくて
頭の中からすっかり忘れているものたちを少し見つけたので
機を見て公開できればと思いつつ

内容は至極あほです…
カミマイはあんまり遊ばなかった感じもありますが
本家サイトでアニメハム太郎妄想落書きがたくさんあるので
はじけていたと言えばそうなのですが
なんかね…笑ってしまうほどわが道を行っていて面白かったです
赤青は面白かったですね…!
なんであんなに面白かったのか、謎であります

ということで、現在進行形で完結に突き進む
カミマイの『空の民草の民』シリーズの更新はこちら…!

pixivでもシリーズでまとめてますので、気になる方は是非どうぞ…!

★★★

水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより


幻想水滸伝2【カミマイ】妄想22

カミュー×マイクロトフ

はるかなる青



グラスランドに帰ったら忙しくなる


カミューはそんな風に言いながら、部屋にあった私物の処理をしていた

ロックアックスで手に入れたものはすべて処分をして、元々持参してきたものと馬と剣を伴って、身ひとつで帰るという

処分と言っても捨てるのではなく、後輩や同僚に譲る方法で片付けていく手はずらしい

手伝いに訪れた者に優先的に手渡しているようで、すでにかなりの量がなくなっていた

すべて片付けられなければ、どこかに寄贈することも検討しているらしい

その過程で、出てきたのが先の台詞だ


「まず手始めに、私の自由騎士としての功績と実績を作らなければならないからね」


マチルダ騎士団との国交を確立するためには、カミューがそれなりの地位と信用を地元でも得なければならなかった

とはいえ、男の兄の勧めで、かなり上等な席をカマロの側で用意して待ってくれているらしい

統一戦争に参加した騎士団長の一人ということで、向こうがカミューをかなり高く評価してくれたようだ

しかし一方で、それがプレッシャーにもなるだろう

カミューは不敵にも、それくらい困難な方が面白いと言って眼を細める

元々負けず嫌いのたちで、幼い頃は喧嘩っ早くもあったらしい

ロックアックスに着いて、騎士としての体面上柔和を繕うようになってからはすっかりなりを潜めたが、カミューは元々が火のさがだ

易い道よりも、そうではない方を選ぶ

その方が、生きている実感や手応えを感じるからかもしれない

親友に語る様は、難関や難問をいくつも超えてきた男の目だった


「マチルダ騎士団長のお相手を務めるのであれば、相応の地位を得なければ釣り合わないだろう?」


…なんのお相手だ、と、若干胡乱そうな目つきで見返すと、男は肩をすくめてやり過ごした

マイクロトフは余暇を過ごすために、カミューの元へやって来たのだ


「部屋が片付いた後は出発までの日数、寄宿舎で過ごすと聞いたが」


男の動向について、マイクロトフは側近から耳にしている

元々赤騎士の団長の近くで働いていた騎士の一人だ

密命も密使もこなしてきた人物で、カミューも知っているので問題はない


「私としては宿舎などよりも、おまえの私的な寝室に泊めてもらいたいところだけれどね」


減らず口は健在らしい

故郷に帰る日が近づくにつれて肩の荷が軽くなったというよりも、重責から解放されたことが原因だろう

カミューは自らの仕事をきっちりと後任の騎士たちに分け与え、彼らをサポートしながら慣れるまで指示を行い、徹底的に教え込んだ

半端にはしたくなかったと言って、その分出立の日が後ろ倒しになったが、大事な親友を任せるのだという強い責任感も理由としてあったのだろう

すでにマチルダ騎士団の相談役の肩書きはなく、今のカミューは元赤騎士団長というだけの、役職を持たぬ一介の騎士でしかない

現役の騎士であることに間違いはないが、今度はカマロ自由騎士連合に所属することになる


マイクロトフは、騎士見習であった頃から男とは知り合いだが、赤騎士でなくなったカミューというものを知らない

自身でも持て余すような感慨にとらわれながら、友人が過ごした部屋の片付けの作業を手伝った


「それで、返答は?」


なんの話かとマイクロトフは本を片手に考えたが、どうやら寝室云々の返事を催促しいるらしい


「…宿代はどこから徴収すればいい?」


問えば、軽快な口調が返る


「騎士団長様のご所望とあらば、不肖わたくしめの体でお支払いいたしますが…?」


本気とも冗談ともつかぬ本音だった


「…有難い申し出だが、辞退する…」


わずかに染まった頬を自分でも意識しつつ瞑目しながら丁寧に断ると、くっくと男が肩を揺らしながら笑った


今だにカミューとマイクロトフの関係は清いままだ

いや、本番を抜きにした付き合いというか、睦みあうことは頻繁にあっても、結果として最後までには至っていない

カミューがその気にならないのではなく、そうなれないのではないかとマイクロトフは考えていた

今この時期に関係を深めて、行くな、帰るな、と言うことはできはしない

カミュー自身も、マイクロトフに止められることを望んではいないからだ



「私が騎士であることを辞めないように、おまえはロックアックスから離れることはできない」


いつかカミューが、戯れの最中、何度か口にしていたことを反芻する


「それでも私は、おまえがおまえの意思で私の元に現れる日が来ることを待ち望んでいるよ」


そして、目の前に姿を現した暁にはもう離すつもりはない


カミューは静かな声調でマイクロトフに宣言した

誓言と言っても良かった

そしてそれは予見であったのかもしれない


マイクロトフはカミューの一見横柄とも思える物言いに、なぜか反論する気が起きなかった


いつかは

いつかは必ずカミューに会いに行く

それでロックアックスに戻れなくなろうとも、その時は自身がマチルダを、騎士を辞す時だ

なんらかの決定を求められた時には、必ずそうする

それはマイクロトフの誓いだった

だからマイクロトフは、カミューの言葉に、ああ、と力強く頷いた


カミューには伝わったと思う

俺がおまえの元を訪れる時は、騎士ではなくなったときだ

願わくば、その時の自分が男に誇れるような存在であり続けられるように

それだけがマイクロトフの望みだった



「今日はこの後、遠乗りに出かけないか」


マイクロトフからの提案に、カミューは片言で、良いね、と言った


カミューにロックアックスとマチルダ騎士団領の景色を覚えていてもらいたい


二度と帰らぬつもりでここを立つ友人に、すべてを記憶に刻んでもらえるように


共に過ごした青春時代を忘れないように


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2025年05月24日

【カミマイ21】故郷からの来訪者

昨日『犬夜叉』のコミックを読破し終えて(やっと…)
最近何度も読み返しているのは『半妖の夜叉姫』なんですが
まだコミックが短いから読めるのですが、これが50巻とかになったら
何度も読み返す行為自体が難しくなるので
可能であれば、一部二部とかコミックの
タイトルを変えてくれるといいのかな…と思いつつ…
同じシリーズを長く続けると読み手側が疲れてしまうので
大変だな…と思ったり

某『ワンピース』は100巻まで買ってとまりましたが
本当にここまでくると、完結するまで買わないという選択肢も出てくると思います

自分のオリジナルの受メンコミックも
完結するまで買わないという選択肢も大様にしてあると思いますので
(ネーム自体はもう完結まで手元にあるのですが)
なんかもういろいろとブーメランもある
続きもののコミックに関しての感想だったり…

作者が急逝されて未完で終わったコミックも小説もあるので
やっぱりどこを切っても金太郎あめ…ではないですが
きっちり区切りよく終わって、終わって、…を繰り返すのも
シリーズ物の一つの案ではないかと感じました

永遠に続ける、というのは、作者の遺志をチームで引き継ぐことはできても
読者が永遠ではないので(苦笑)無茶や…と思ったりすることもあったりなかったりです

ということとはあまり関係はないはずですが
カミマイの『空の民草の民』シリーズは徐々に完結へ近づいております…!

★★★

水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより


幻想水滸伝2【カミマイ】妄想21

カミュー×マイクロトフ

故郷からの来訪者



おや、とカミューは自身の私室で珍しいものを見つけた


懐かしい、グラスランドで使われる公用文字のひとつだ

紙片の表と裏一杯に所狭しと書き込まれている

インクが乾かないうちに何度も書いてはその上に文字を重ねたので、所々に穴が空いており、もはや誰が見ても一様に口を揃えて紙ごみと呼ぶべき物体と化していた

何者の仕業であるのか、男は正しく理解をした上で、久しぶりだねとその犯人に声をかけた


勝手に使ってすまない、と小さな影から声が届く

カミューの机の引き出しから、彼に当てて届けられた書簡を取り出し、そこに書かれた文字を写し取っていたらしい

そもそも意味がわからないのではないかと思ったが、事実そうであったらしい

あとで訊こうと思っていた、と机の前の椅子の上から正直に答える

カミューは思わず苦笑した


「筆跡は誰のものかわかるかい?」


小さな頭のマイクロトフの隣に覆いかぶさるようにして机上に肘をつき、その顔を覗き込む

すぐにかぶりが振られたのを確認し、カミューは手紙の中の一節を読んだ

男の妹の名がその中にあることに気づき、あ、と少年は思い至ったらしい

彼女だ、と言って、しかし同時に首をかしげる

あまりよくは彼女のことを覚えていないらしい

どういういきさつやからくりがあるのかは不明だが、時折カミューの元に姿を現すこの幼いマイクロトフの姿をした少年は、親友と同じ名前と、おそらく彼に近い思考を持っていた

深く追求をしなかったのは、どこをどう解釈しても彼が誰に対しても無害であることと、カミューの生き方や方針にその存在が何の影響も与えなかったからだ

たまに来て、話をして、お茶を飲んだり、時には外へ一緒に出かけたりする

お守りをしているという認識がカミューの中にあったわけではなかったが、ロックアックスで赤騎士の団長を務めていた頃は、せがまれてよく城内を散策したものだ

マイクロトフは男に手を引かれたまま物珍しげに、自分が統括しているだろう青騎士団の詰める館内を眺めているだけだったので、カミューにとっても気分転換にはなっていた

団長としての責務を果たす大きい方のマイクロトフとも会っていたはずだが、予想通り、自分以外は感知できないものの類であるようだ

当初は疲れて幻覚でも見ているのかと考えたが、ひたむきでその上邪気もないことから、もう自然とそういう客人なのだと解釈して受け入れてしまった

その上、小さいマイクロトフは自身にひどく同情的で、何かあるたびに、その言動からは慰めるような必死さを感じた

青年騎士であるマイクロトフがこちらに素っ気ない、他人行儀な態度であれば、何だあれはと腹を立てるし、なじったりもする

大事な親友に対する態度ではないとカミューよりも先に非難をするので、大人気なくこちらが怒る気にもなれない

カミューが感情的になる前に先手を制されているようでもあり、文字通り少年によって慰められている印象だった

ゆえにこの少年の存在は、カミューにとって不思議で奇特な、そして明らかに害のない友だと言えた



「マイクロトフは、私と私の母のことは覚えているんだね」


以前、大分昔の話になるが、彼女の誕生日の贈り物を共に選んだという奇妙な経緯がある

しかし、カミューの兄妹たちに関してはよく覚えていないようだ

ほぼ記憶から欠如しているらしい

…おかしなことだが


マイクロトフ当人は自分の故郷で暮らした経験があるということだろうか

もはや詮索をする気がないので、どんな事情があっても別段驚きはしないが

子どもが好きな対象の名前だけを鮮明に覚えているということは、確かにあるのだろう

好きな、というものの中に、自分の名が含まれていることは光栄だったが


「マイクロトフは、帰りたいと思うのかい…?」


抽象的な問いかけだったが、少年には伝わったようだ


「今はまだ駄目だ」


カミューが心配で、と継ぐ


「私が?」


わずかに目を見開いて少年の頬に視線を当てると、懸命に文字を写生しながら小さな友人は言った


「カミューはまだ、俺のことを気にかけているのだろう?」


だから、心配だと言う


毎度のことながら、重要な部分が完全に欠落している回答だった

けれど具体的ではないおかげで、余計な波風が立たずに済む

思いつきで答えれば、それが答になる

そんな問答だった


「…もはや、習性に近いだろうね」


マイクロトフの身を案じるのは


うむ、とまた小ぶりの頭が頷いた


「俺は石頭なので、カミューには迷惑をかける」


そう言って見上げてくる少年の頬を、カミューは手袋を脱いだ手で優しく撫でた


「あいつにも、マイクロトフほどの殊勝な心がけがあればね」


明らかな皮肉だったのだが、少年ははたと思いついたようだ


足が届かなかった椅子から飛び降り、ばたばたと急ぎ足でドアへ向かう

小柄な姿態が纏う腰帯のない大きめの衣服が、動きに合わせて波のように揺れた

また来る、と言って、カミューの見送りの言葉を待たずに開いた扉の奥へ吸い込まれるように消えてしまった


慌ただしいことは今に始まったことではないので、若干呆れつつも、カミューは笑い出したい気分にとらわれた

少年が残していった書きかけの用紙とペンを元の位置に戻し、引っ張り出された家族からの書簡を片付け、上着を脱ぐため寝室へ移動しようとしたその耳に、ノックの音が届いた

今日はおとないが頻繁らしい


「俺だ」という明瞭な一言だけで、カミューは即座に踵を返した

ジャケットは無造作に机の上に放り投げて


部屋のぬしが扉を開ける動作の一部始終を見守っていた青年の顔を見るなり、カミューの相貌には自然と笑みが刷かれた

そこに見つけたのは、仕事着を脱いで私服に着替えた長身の仏頂面だったからだ

本人にその意識はないだろうが、綺麗に短く切り揃えられた頭髪の下で口を噤んでいると、少々虫の居所が悪そうに映る

けれど目配せをするように視線がかすかに動くと、途端にそれが偶像であったということを見る側に知らせる

黒く濃いまつ毛で縁取られた目元は、凛として艶があり、美しい

男にこの形容を当てはめる行為自体が不遜だと思ったが、マイクロトフはカミューの中で賞賛に値する特別な容姿の持ち主だった


その口で、実家から、と青年は挨拶もなく切り出した


「俺の実家から、執行部宛に酒が届けられていたのだ」


カミューに手渡すのを忘れていた、と訪問の理由を淡々と語る


入口での立ち話も何だから、と言い、室内へ招こうとすると、マイクロトフはためらった

明らかな拒否ではなかったが、すぐに戻るつもりだったのだろう

このあとに予定でもあるのかと問えば、特にないとの返答だった

時間があれば馬の様子を見て、見回りをしてから外で夕食にありつこうと考えていたと

欠かさず街を見て歩くのは、もはやマイクロトフの日課だと言っていい

酒の贈り主についてもついでに問うと、妹が、とわずかに言い淀みつつ最後まで答えた


「仲良くなった騎士がいるらしい。その延長だ」


今回の贈り物の理由は、と

延長上であるとの意味は、お目当以外にも贈ることで本命があきらかになるのを誤魔化した、という主旨なのだろう

周囲に悟られないための、撹乱作戦

彼の実の妹御も所謂適齢期になったのか、と思わずカミューは内心で感嘆した

生まれつき身体が弱く、マイクロトフとは離れて暮らしていたが、その彼女が騎士団で良い相手を見初めたらしい

話もなく勝手に…、と一瞬マイクロトフは兄らしく不満な顔つきになったが、さすがに身内に関わる話題だったので態度を改めた

事情を正確に理解し、マイクロトフが持参した酒瓶を恭しく受け取った後、カミューは、では、と断ってから自身の意思を表明した


「私がおまえに、今夜のお付き合いを申し込んでも?」


構わないかと尋ねると、夜は久しぶりに空いたのではないか?、と逆に問い返された


城勤めはいつものことだが、私的な時間の確保はお互いにまだ難しい

貴重であるならばいっそ、心許せる相手と過ごしたい

そう正直に本音を明かすと、マイクロトフは少し虚を突かれたような眼をして黙り、そして言った


「俺もだ」


俺もカミューと過ごしたかった


あの少年が見せた混じり気のない心と同様の恋人のその純な言葉に、カミューは心底から歓迎の意を示した


腕を伸ばし、引き寄せる


抱きしめた体に、自分の体温が直接伝わるように

何度もなんども、マイクロトフの米神に口づけた


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2025年05月23日

【カミマイ20】忘れじの空

カミマイ(赤青)本の再録というか
どうしようかなと思いつつ…
空の民草の民シリーズも長いし
ホワイト・ゴーストも長いし…
馬王子は雑ネタだし…という感じで悩む今日この頃です…!

★★★

水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより


幻想水滸伝2【カミマイ】妄想20

カミュー×マイクロトフ

忘れじの空



故郷から仕官しないかとの誘いを受けている

抑揚なく発された男の言葉を、マイクロトフは静かに聞いた


カミューの生まれであるカマロ自由騎士団領については、度々話を聞いている

そして男がいずれはそこへ帰ることも

騎士になる以前から決めていたことで、故郷を離れたカミューがロックアックスに単身で訪れたのは正騎士としての称号を得るためだ

騎士という身分を抱える国は他にも幾つかあるが、領地の内外でその存在を認められ、身の保証となるような正式な官職や役職として通用するところはさほど多くない

世の中には、後ろ盾のない自称であったり、あるじを持たない信条だけの騎士もいる

マチルダ騎士団も、組織として独特の設立と遷移の歴史がある

土地とその領民、そして都市同盟のために、騎士たちだけで作られた自治の象徴

三つに分かれる騎士団で構成された形態そのものに、幼いカミューは興味を引かれた

そこへ仕官し、正式な騎士としての地位を得て、おのれの力を試す

とはいっても高潔な志だけでなく、三つある騎士団とやらの一つに食い込み、名を挙げたいとの野心ももちろん少年の頃のカミューにはあった

次男坊ゆえに一家のしがらみも少なく、それゆえふるさとでの存在意義というものがカミューにとって希薄だった所為だろう

どこへでも自由に行って、職を探し、安定してからは家族を持って暮らせばいい

ただ、自身がどこまでやれるのか、カミューにとっての力試しの意味も当然あった


明らかな目的を持って訪れた城塞都市ロックアックスで、カミューはマイクロトフと出逢い、彼という素直な魂に惹かれた

風土を象徴するような純粋な黒に最初は目を奪われたが、マイクロトフの中に土着の騎士であるマチルダの根源を見たからだ

騎士になるために生まれたような、というのは過言であったが、マイクロトフは彼の尊敬する祖父の姿を追い、追い越そうとひたむきに努力を積み重ねる少年だった

当時は背丈もなく、大きな目とあたたかい手のひらと丈夫な骨格を持つ、少し頑固なところのあった一つ年下の彼が、カミューの初めての異郷の友人となった

マイクロトフは、特に世話焼きだったわけではないのだろう

士官生にあてがわれた宿舎を管理する上官から気にかけるよう頼まれたと出逢ってすぐに理由を明かしたが、長男としての生来の責任感の強さからか、カミューが慣れない土地や習慣に難儀をしないよう彼なりに便宜を図ってくれた

それこそ毎日、顔をあわせる都度、色々なことを話したと思う

日常や非日常の些細なことから、将来の在り方、身の振り方のことまで

色恋に疎い朴訥な、わるく言えば面白みに欠けるマイクロトフとは、艶っぽい話をあまりしたことはなかったが

カミューはマイクロトフを快い存在だと感じ、彼の真白の肌と黒髪と真っ黒な珠玉の宝石を愛した

真っ直ぐに視線を伸ばし、常に真正面から対峙する、その頑なな魂を愛した

彼の中には、カミューにとっての果てしない空があった



空はここにある


いつかマイクロトフから聞いた言葉だ

ロックアックス城から離れた教会の近く、肌寒い時期であるにも関わらず晴れた蒼天に片方の腕を伸ばし、騎士見習だった時分、故国を別にする友にマイクロトフはそう答えた


ロックアックスの城は、彼にとっての空だった

だから決して手の届かぬ、遠い存在ではないと

ロックアックスとマチルダという名と象徴は、マイクロトフの心そのものだった




マイクロトフはカミューの言を受けて、少し思案したようだ

カミューにも、その心が伝わる

長年、ツーカーの仲でやってきただけのことはあるのだろう


「…カマロ自由騎士連合か」


グラスランドに存在する自治領の一つだが、歴史はある

マチルダとは異なるが、同じ騎士を輩出する国だ

どちらが上であるかという議論よりも、同業者的な意識をマイクロトフは持っていたらしい

故郷の手紙でも度々同じ内容が添えられていたので、今の情勢についてもカミューはよく理解していた

両親の息子を呼び寄せたいというささやかな意思を感じ取りつつ、そろそろ身を固めても良いのではないかとあちらは考えたのだろう

元々戻る方針でいたカミューには、好きにしてよいという親の気持ちと、息子の身を思う親心の二つが見え隠れする

無論、カミューとてここまでロックアックスに長居をするつもりはなかった

伴侶や家族をここで得たとしても、彼らを連れてグラスランドに帰る気でいた

要は、デュナン統一戦争が収束してしばらく経ち、そろそろ良い頃合いだろうと考えて、向こうから打診をして来たのだろう

その事実を隠すつもりはなかったので、カミューはマイクロトフとのいつもの会話の中でそのことを切り出した

もしここが食堂などの公の場であれば、日常会話として流されていただろうが、そこはカミューとマイクロトフが詰める政務室だった

カミューは元赤騎士団長として、今は期限付きの相談役の一人としてマイクロトフをサポートする任に就いている

なぜそんな抽象的な役に就いたのかという、その理由は簡単だ

マイクロトフが請け負った最高責任者の座の一つに権限を集約させるためと、騎士団の分断を阻止するため

大きく環境が変わった騎士団内部の派閥争いを抑え、一枚岩となる必要があったためだ

その目的を果たすために、カミューとマイクロトフはかつて三つに分かれていた騎士団の間を行き来し、伝手を広げて信頼できる人材や人員を確保して来た

協力が得られるまで粘り、現状を正しく理解した上で、根気強く交渉を続けた

そのために、彼らがえがく未来というものを具体的に組み立てて組織し、騎士たちの前に提示しなければならなかった

マイクロトフだけでは回らない諸々の手はずをカミューが指揮して調整を繰り返し、困難の一つ一つを解決した

マイクロトフのみでは到底補いきれない大仕事だとわかっていたからこそ、敢えて相談役として、期限付きの片腕の一人として奔走した

裏からの手はずも取引も、マイクロトフに事前に説明をし、了承を得た

内部の透明化こそが、信用を得る第一歩だったからだ

マイクロトフは生来策謀などを苦手とし、交渉は飽くまで戦術の上でしか用いない

対人の場面や組織の中ではやはり駆け引きが重要であったので、その役割分担が必要だったからだ

マイクロトフは万能ではない

だからこそ彼を補佐し、時に矢面に立って議論できる人材が要る

部下ではなく、共に築きあげることのできる気骨のある騎士たちが

カミューは色の区別なく、それが可能となる現役の騎士や元騎士たちの人選を行って登用した

最高位はマイクロトフだが、青年自身は独裁を嫌う

マイクロトフは時に熱弁を振るうが、頭に血が上って見境がなくなることはない

彼は自身の剣に懸けて誇り高き騎士であることを信条とし、彼の心身は民衆を守るために存在する

人間関係を重んじ、謙虚で礼節をわきまえ、人々を守るという大義の前には私情をころせる騎士だった

他者への強制を殊の外きらい、相手がうんと言うまで妥協をしないし途中で投げ出しもしない

大体はマイクロトフの相手が根負けをするか、その志を汲んでくれるかして折れるのだから、まったく裏工作の必要がない稀有な人物だった

しかし、順序の省略、彼の負担を軽減するためには、立ち回りのうまさも有用になる


このまま自身が彼の側でサポートを続ければ、安泰だったのかもしれない

けれど、自分もマイクロトフも先を見ていた

統一戦争で活躍した英雄たちも、時代が過ぎればいずれ忘れられてゆく

名をほしいままにしたかつての勇者が驕り、誤った道を歩み、部下や仲間や民衆の手にかかって非業の、自業自得の結末を迎えた事例も多い

幼い頃から本の虫だったマイクロトフはよく口にしていた

彼を真の意味で騎士の鑑と言わしめたのは、そうした伝記の類から自らを戒めることを常に知っていたからだ

だからこそ頭が硬いし、一本気に一つのことに専心し、最後までおのれを貫けるのかもしれない


カミューはマイクロトフに、グラスランドの一領地であるカマロと国交を持つ気はあるか?、と尋ねた

マイクロトフもそれを予期していたのだろう

ああ、と深い頷きとともに肯定が返った


マイクロトフにとっても同じ騎士の名を頂く自由騎士団には興味があったようだ

交流して交易や和平は疎か、騎士同士の意見交換や留学などの行き交いが活発化すれば良いと考えたからだ

領主を君主として持たない自治権を持つ正規の騎士団とその連合というのは、やはり珍しい


そうでなくてはな、と思うと同時の、離れがたい感傷

カミューはロックアックスを後にしたら、故郷に骨を埋めるつもりだ

その真意は、もしマイクロトフが昔の自身の言葉を覚えているのだとすれば、自然と伝わったはずだ


私はもう二度と戻らない


グラスランドに帰るということは、そういうことだ



「カミュー」


マイクロトフは最高職である白の長衣に身を包み、立ったままでいる

男の前では、彼一人が席につくことはない

それがマイクロトフの親友に対する正直な態度と意志だからだ


「今、俺たちが手がけていることを中途半端にしてはおけん」


カミューが請け負っていた部門の管理や業務の引き継ぎもあるだろう

それまで出立の日を延ばしても良いか、と尋ねてきた


「今すぐに実家へ帰るつもりはないよ、マイクロトフ」


おまえの気が済むまでここにいる

見届ける役目は、自分にしかできないだろう?、とカミューは言った

いつもの余裕のある笑みを口元に載せると、青年は、そうだな、と頷いた



別れは、もうすぐそばまで来ていた


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2025年05月22日

【カミマイ19】戦いのあと

昨日ようやく、壊れた洗濯機の代わりの新しい洗濯機が届きました…!
容量は以前と同じなのですが、ほんとにスリムになったというか…
昔の洗濯機よりも余計な部分をそぎ落として
掃除がしやすくなったのかなぁ…と思いつつ
お風呂の水を活用するタイプではなかったので
別売りでポンプを購入することになりました

そして、カミマイは今日の更新から
いよいよ佳境に入るのかなぁ…と思います

引き続き読んでいただけるととてもうれしいです…!

★★★

水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより


幻想水滸伝2【カミマイ】妄想19

カミュー×マイクロトフ

戦いのあと



デュナン統一戦争が終わり、ロックアックスで待っていたのはマチルダ騎士団の再建という大仕事だった

すでに予想していたことであったとはいえ、マチルダに属する騎士を一人残らず掬いあげた上で改革を実行するのは並大抵の作業ではない

離反側についた者、ゴルドー派、中立派、そしてゴルドー監視の下で謹慎や蟄居を命じられていた元騎士など

赤青白の騎士団の垣根にこだわらず、マイクロトフはカミューとともに編成案を作り、練り、事ある毎に吟味して意見をぶつけ合った

とにかく情報の量が足りず、各所に足を運んでは騎士たちの処遇と今後の配属について奔走し、時間を尽して話し合った

一から作り上げるのと、壊れたものを拾い上げてすべてを丸く収めるのと、どちらが楽かと問われれば断然前者だ

しかしマイクロトフはマチルダ騎士団にこだわり、その名を維持することで騎士たちと領民たちの身の安全を図った

自身もそれに異論はなかった


思い返すだけでも、本当によくやったと思う

不和がないように人材を振り分け、能力と経歴を見比べて適所に配置する

騎士団が再建されるまで青騎士のまとめ役として最高責任者の位に就くことを辞退していたマイクロトフは、カミューとともになんとかそれをやり遂げた

それでも地盤が固まり騎士団内部が安定するまで数年はかかるだろうと言った青年の顔には疲労感が滲み出ていたが、カミューが居てくれて良かったと、心からの謝意を伝えてきた

その様をわずかに眩しげに見返しながら思った

彼は確かに数多の功績を挙げ、一騎士団長から最上位へと上り詰めたが、果たしてそれが正解だったのか

永遠に手の届かない存在になってしまったのではないか

正しいことだとは頭で理解しつつも、後悔がそこになかったわけではない

そう思った



自分はマイクロトフを手に入れたかった

現時点でも肩を並べることのできる唯一の、稀有な存在である事実は認めよう

高め合い競い合う好敵手として常に傍らで、彼の一歩前を征き、道を切り開く友でありたかった

同時に、如何ともし難いかつえを身のうちに抱いたまま、マイクロトフ一人を高い位置まで押しやった


カミューは後悔していた

そして後悔していなかった

マチルダを維持するためにはマイクロトフは不可欠だろう

少なくとも、この変革の時期と、しばらくの間は


後悔は、その言葉の次に興るものだ

だが、と


抱きたい、手に入れたい、おのれだけのものにしたい

現実はその欲求とは真反対であるからこそ、カミューはわずかであれ悔いていた



多忙を極める互いに、時間は残されていないことを正確に理解しながら


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2025年05月21日

【カミマイ18】有色の日常

洗濯機がようやく今日届く手はずなのでワクワクしつつ
…早くお洗濯がしたいです^^;

ということで、今日は病院へ通院してきます…!
天気が晴れたり雨が降ったりと色々ですが
どなたさまもつつがなくお過ごしください…!
カミマイの完結まで、あと10話…!

あ、あと、原稿作業中に過去の赤青作品を発掘できたものについては
どこかで公開できればと思います

空の民草の民シリーズはもしかするとすべて再録できるやもしれませんが
内容的に…というか文字数的に非常に長いです!
HPの更新アプリが手元にないのでサイトに載せることもできず…
悩みますね……うーん…!

★★★

水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより


幻想水滸伝2【カミマイ】妄想18

カミュー×マイクロトフ

有色の日常



カミューから指摘されるまでもなく、マイクロトフはサウナが好きだった

水風呂はどちらかと言えば苦手だった

全身の肌がふやけるようだし、個々で水温の好き嫌いがあるし、湯船に浸かったままでじっとしている時間が無駄のように思えたからだ

同盟軍の居城であるデュナン湖のほとり、マチルダ騎士の駐留場所にサウナが設置されて以来、マイクロトフは可能な限り就寝前にはそこへ行くようにしていた

たまに午前中の任務が終わるとその足で向かうこともある

自分一人しかいない時は静かに目を閉じて熱さを感じて滲んでくる汗を堪能し、前後に人が居合わせた場合は彼らと簡単な話題で盛り上がった

サウナはマイクロトフにとって小さな社交場だった

そして何よりも喜ばしかったのは、垣根があると思われていた赤騎士たちからも話を聞く機会が増えたことだ

カミューについての噂もよく耳にする

今でもやり手だと評判で、若い時分から種々の戦功と戦績を挙げていたので団長の任に就く前からの有名人だったと

もちろん過去には手痛い失敗もあったが、元々気が利くということで周囲の覚えがめでたかったし、円滑な組織の運営の手腕に関しては皆一様にその成果を褒め称えた

無論、騎士として剣士としての技量や腕に関してはその役職に恥じないくらいカミューは強い

士官学校時代の同期だったマイクロトフが公言するくらいだ

カミューの場合は強いと言うより巧みだ、と表すのが適していたかもしれない

あれは元々喧嘩慣れをしているのだろうと、マイクロトフは昔から考えている

戦いの駆け引きがとにかく旨い

状況判断が教本通りではなく、文字通り手慣れている者の動きだった

しかも、抜群に運動神経がいい

高位の紋章を扱える資質もさることながら、やはり騎士としては自分よりも一段上にいる人物なのだろうとマイクロトフは思った

しかしそれゆえに鍛錬の指導者としては、幼い頃からから祖父の手ほどきを受けていたマイクロトフほどには適さない

カミューの高度すぎる技術について理解して実践できる者が赤騎士内でほとんどいないというか、伝わらないというか、要するにお手本にならない

精々紋章に関する知識と実践の話を交えて、使いどころや戦術を指南するくらいが向いていた

カミューは多方面で努力家である一方で、個々の戦闘に関することに対しては天才というか秀才なのだろうと、マイクロトフなどは思う

生まれがそもそもロックアックスではないのだから、長短がそれぞれにあって然るべきだとも考えた


赤騎士たちからカミューの話を聞いて、部下たちに対して手厚いのだな、とマイクロトフは実感した

組織の長として気遣いもしっかりしており、細部への声かけも頻繁で、そのやり方も嫌味がないし、指示や説明も丁寧でわかりやすい

嫌な素振り一つ見せずに淡々と実務をこなすし、上下への対応にも差がないし、受け答えがさらっとしており、熱くなる場面が一切ない

加えて、理解力に優れている

それゆえに下からは慕われているという

実際のカミューはな…、と言い募りたい気持ちを抑えつつ、マイクロトフは良い気分で親友である男の評価に耳を傾けた


「われらが団長の話を聞いている時のマイクロトフ様は、実に嬉しそうですね」


ふとそんな感想を聞かされ、マイクロトフはそれは当然なのではないかと即答した

友を褒められて喜ばぬ人間などいない

そう答えた

相対した側はかすかに驚いたようだったが、青年が冗談ではなく本心から言っていると認めたようだ


「…カミュー団長は、この地に来てからよくマイクロトフ様のお話をされるようになりました」


「…………」


一瞬言葉に詰まったが、そうか、と答えたマイクロトフの相貌には、意識せずに笑顔が生まれた

専ら仕事の場面では堅物だと表されるが、裸になってしまえば肩肘を張っていても仕方がない

自然と漏れた笑みに、赤騎士たちは青騎士団長に親しみやすさを覚えたかもしれない

それくらい、サウナでのマイクロトフは素直だった




カミューが変わったことに、赤騎士たちも気づいていたか


身近に接する上司なのだから、当たり前かと思い直す

マイクロトフ自身も、城を出たカミューの変化を強烈に感じている

物腰がさらに柔らかくなった上に、何というか、盛大に余裕がある

本部での会議があって、その帰路、遅い昼食をデュナン城の酒場で共に摂った時も、あれやこれやとマイクロトフの世話を焼いていた

少々うるさくはあったが、カミューの声は耳に優しい

それが本来のカミューという人間であることを昔から知っていたので、マイクロトフは男の好きにさせた

カミューがしたいことをさせ、自分もやりたいようにやる

たまに喧嘩腰になりそうになるが、カミューは終始機嫌よさげにマイクロトフを見る

自分が親友を誰に憚ることなく独占していることに悦を感じているのかもしれないが、それはお互い様だ

二人で居られる時間の、なんと温かいことだろう

人目があっても構わず顎に指を伸ばしてこちらを振り向かせる行為は行き過ぎだと思うが、いちいち目くじらを立てるのも疲れてしまった

カミューのさせたいようにさせる

どうせそれ以上のことはできないのだから


ただ、これが束の間の出来事であり、戦いの最中のほんの一コマでしかないのは事実だ

明日はどうなるかわからない

だからこそ、今を大切にしなければならない

一歩一歩を踏みしめるように

この先に、自分たちの未来があると信じて





「…おかえり」


執務室の前で待っていたらしき影に、マイクロトフは顔をしかめる

もはや反射的なものなので、決して向こうを煙たがっているわけではない

今夜もロックアックス式の風呂に入ってきたので、マイクロトフの機嫌は良い

カミューも来ればもっと話が弾んだのだが、と言葉をかけると、そのうちご相伴に預かるよ、と返された

就寝前に、男は必ず挨拶に訪れる

それが互いの日課になりつつある



確かめるように口を合わせ、抱き合う、それだけなのに


マイクロトフは常に思う


どこまで絆されるのか、自分はこの男の熱に


それは存外、わるくない気持ちだった



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2025年05月20日

【カミマイ17】甘い仕返し

右手の腱鞘炎はよくなっているのだけれど
悪化する場合はあっという間になりそうな、そんな感じですね…
おそろしい…

壊れた洗濯機の代わりに新しい洗濯機が届くのを待ちつつ
手で洗濯物を洗っている今日この頃です

★★★

水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより


幻想水滸伝2【カミマイ】妄想17

カミュー×マイクロトフ

甘い仕返し



カミューは正直、湯船に浸かる風呂は好きだったが、蒸気にまみれるサウナは好きではなかった

生まれ育った故郷のカマロでは、湯に浸かる習慣よりもどちらかといえば水を浴びるか体を拭くだけで済んだからだ

グラスランドの気候は湿度自体が低いので、汗をかいてもすぐに表面が乾いてしまうので日々の不快感が少ない

そのため、昼夜の寒暖差が激しかったのは余談だが


そんなところで生活をしていたのでロックアックスの、特にマイクロトフら青騎士たちの風呂好きというものは、カミューにとってさほど共感できるものではなかった

とはいえ、公然とマイクロトフの裸身…半裸だが、を至近距離で眺めることが叶う状況というのは思いの外わるくない

士官学校時代にもそれらしい施設へマイクロトフに連れて行かれた経験があったが、当初は襲ってくる熱さと目眩に根負けをしてあまり長居をすることができなかった

しかし今のカミューは誰に憚ることもない立派な成人男性だ

頑丈すぎるマイクロトフの比ではなかったが、耐性は十分についている

何度か水風呂に浸かる行程を含めて、最終的にはこざっぱりできるものだなと、今なら思えなくもない

そもそも、自分以外に青年が惜しげもなく半身を晒しているということが我慢ならないのだ

いや、あの一致団結することしか頭にないような脳筋たちから見れば、マイクロトフは店に並ぶ芋と一緒なのかもしれない

それは言い過ぎだろうとは自覚しつつ、マイクロトフのすべてを色目で眺めているのは幸いにして自分だけなのだろうと考える

実際にマイクロトフの体や見てくれは、石工で作られたどこかの美術品の青年像のような、理想的な体型をしている

芸術を能くする人間からすれば、書き写したくなるほど垂涎ものの見事な体躯だ

プロポーションがいいというのではなく、あるところに必要な肉がついて、それがいささかの嫌味のない肌の色をして輝いている

見る者が見るとおかしな妄想しかできなくなる、一種の男らしさの中の色香がある

嗜好を刺激される者しか感じない衝動であるとはいえ、カミューにとってマイクロトフの体はあまり他人に見られたくないものではあった

騎士服ならばマイクロトフの裸体を存分に隠してしまえるが、サウナでは完全な無防備だ

タオル一枚で下肢を覆い、それ以外を恥ずかしげもなく晒したまま、部下である騎士や、最近では居合わせた赤騎士にまで声をかけて話をしていると聞く

現に、これまで接触の少なかった青の騎士団長の噂が側近以外の騎士たちから聞こえてくるようになったほどだ

思ったよりも気さくというか、分け隔てなく話かけてくるとか、意外と表情が豊かだとか、おおらかで優しい方だとか

そんなものは、お気に入りのサウナに入ったマイクロトフの頭のネジが少々外れているからであって、普段と百八十度変わって見えるだけだ

仕事人間であるマイクロトフは、仏頂面で厳格な騎士の鑑と言われるような男だ

公的な場で顔を付き合わせることがあれば、あの時と同一人物なのかと不思議に思うくらいの豹変振りだ

あれがマイクロトフの素だと思われては心外だ

余計なライバルが増えてしまうだけではないか

恋敵が増えたところで、一向に負ける気はしないが


そんな感じに、カミューの小言というか、嫉妬から来る恨み言は尽きることがない

欲求不満だと言われればそれまでだが、あまり面白くない状況ではある

マイクロトフを独占して堪能する暇がないと言えば、その通りだが


やはり欲求不満なのだろう

自らそう結論を出して、カミューは身を翻した


マイクロトフを襲いに行く


そんなことを胸に秘めているとは思えないほど堂々とした足取りで、赤の騎士団長は廊下を突き進んだ




「人払いを」


入室するなり短く宣言をされ、マイクロトフは固まった

用事のために団長室を訪れていた騎士たちも呆然とした

しかし次の瞬間、火急の用かと思い改めて、真剣な表情で退室の礼を取った

マイクロトフは、終わったらすぐに呼ぶ、と言って彼らを退がらせた

こちらも厳しい表をしている

おそらくこれは反射的にしていることで、業務の一環だと捉えているのだろう


「カミュー」


名を呼ぶなり、マイクロトフは椅子の上から立ち上がった

同盟軍内で、現在の赤青の騎士団は同格だ

そうした編成と実務の内容にしたのは、カミューとマイクロトフだ

ただ、戦術の面では得意分野が異なるので、赤と青の両騎士でバランスよく人員を構成、配備し、任に当たらせるように仕向けている


目線の高さが異なる状態での対話は相手への非礼ではないが、どうやらマイクロトフの体には上下関係の是非というものが本能的に染みついているようだ

目上への礼節無くして騎士道は貫けないという、古風なタイプなのだろう


何かあったのか、と、マイクロトフは逼迫したような雰囲気の中で親友に問うた


そんな青年の腰を無造作に捕らえると、マイクロトフはまた固まった


カミューは何をしている?

何をしようとしている?、と、頭の中で疑問符が浮かびまくっているのだろう

その横髪に親友の鼻先が埋められた瞬間、ようやく全てを察したようだ


「乳繰り合っている場合では―――」


その先は、軽く触れたカミューの唇で封じられた

声にならず、マイクロトフが喉で呻く

そういう反応が余計に嗜虐心を刺激することを知らないのだろう

ぶるりと全身が大きく震えたのを確かめてから、カミューはようやく友人を解放した


声が大きいよ、マイクロトフ、と優しく囁かれて、外に見張り番の騎士がいることに思い至ったのだろう

頬や顎にすり寄ってくるカミューの肌や髪の毛を顔を背けることで避けつつ、マイクロトフは声を潜めて言い募った


「何のつもりだ、カミュー…」


忌々しげに、といった風情だ

しかしカミューは取り合わなかった


「おまえに首輪をはめに来た」


またしてもなんのことか、マイクロトフにはすんなりとカミューの言ったことを飲み込めなかった

考えているうちに団長服の戒めを解かれ、カミューの手がその下に滑り込んでくる

あまりにも滑らかな動きすぎて、逆にマイクロトフは反応しきれなかった

あっという間に青の長衣が足元に落ちる

男の手際の良さと素早さに舌を巻く暇もなく、襟の留め具を外され、そこにカミューの温かな吐息と共に舌を感じた

マイクロトフは反射的に身を震わせ、羞恥に思わず歯を食いしばった


「っ何をしている…」


言いながら、カミューの背中の服を引っ張り、引き剥がそうと試みる

腰を抱えられているので突き飛ばすことができず、逞しい身を捩った

面白いように弄ばれていることを自覚しているのだろうか

精悍であるはずの相貌に朱を刷いて、懸命に漏れる声音をころしている様は、カミューの眼からすれば非常に悩ましい

事を荒立てれば外に聞こえてしまうだろうと懸念しているのは明白だ

張り番の担当騎士に気づかれて乗り込まれでもしたら、どう釈明をすればいいのか、考えつきもしないのだろう


「カミュー、とりあえず、場所を」


上半身の急所を男にねぶられながら、マイクロトフは声調を殊更潜めて訴えた


せめて仕切りの向こうで及べ、と言われ、カミューは仕方なく机の前から移動した

マイクロトフが夜に眠るベッドの位置まで来ると、今度こそ相手を寝台の上に押し伏せた


形ばかりだったが、人目からわずかに遠ざけられたおかげで心に余裕が生まれたのか、昼間から盛っているのか?、とマイクロトフは不機嫌な面で漏らした

赤騎士も暇ではないだろうに、と皮肉を口にする


マイクロトフに触れているカミューは、底抜けに機嫌良く笑っている

楽しくて堪らないといった様子だ


「おまえが協力をしてくれれば、手早く済ませることができるよ」


そう言って、マイクロトフの襟を手際よくくつろげる


「協力…?」


もはや抵抗するよりも、何が目的なのかの真意の方がマイクロトフは気になったようだ

首輪とカミューが言ったことを、その頭の中で反芻する

入室した親友のどこにも、そんなものは見当たらない


マイクロトフの心中を察したのだろう

ここに、とカミューは言った

そのまま再び男の熱い吐息を感じて、マイクロトフは息を飲んだ

舌先の滑りを感じ、マイクロトフが無意識に吐息を漏らす


白過ぎる肌の色の所為だろうか?

感度が良すぎるな、と、カミューは一人苦笑を浮かべながら、マイクロトフの反応を楽しむように首筋を辿り、吸っては止まり、長い接吻の旅を繰り返した


しばらくして、マイクロトフは男の真の目的を正しく理解した


なるほど、首輪か……


きっちりと肌の表面に浮かんだらしい所有印の列に満足したのか、カミューは満面で微笑んでいる

これで人前で半裸を晒す気にはならなくだろうと、勝ち誇ったような顔をして


相手の嬉々とした顔つきを下から正視して、マイクロトフはようやく意図を察したようだ


「カミュー……」


呆れていたそれが、徐々に怒気へと変わる

騎士服を着ていれば誰に見咎められることもないその場所は、服を脱げば途端に周囲に悟られる

公然と見せて良い代物ではない

特に、意図を持って何度もつけられたものに限っては


自分を気持ちよく風呂場へ送り出したくないという、そういう魂胆か、と

気づくのが遅すぎだ、と言わんばかりの男の態度に、さすがのマイクロトフも頭に来たようだ


意趣返しとばかりに相手の胸ぐらを掴んで睨みつける

カミューは可笑しそうに笑ったままだ


「おまえにもつけるぞ」


目には目を、と言った途端、その明るく透明な瞳の色が光を得てきらりと瞬いた

いたずら心を刺激された子どものような目つきだった


「それは光栄」


にっと口端が持ち上がり、草原の狼のような笑みを浮かべる


瞬間、マイクロトフは何を言われたのかがわからなかった

しかめっ面のまま、きりりと男らしい眉を更に寄せる

その黒い宝玉のような双眸を見つめて、カミューは鷹揚に笑んだ


「私にとっては勲章だよ、マイクロトフ」


言うなり、どうぞ、と、わざわざ赤い団長服の襟元を片手でくつろげて肌を見せつけてきた男に、マイクロトフは絶句を通り越して唖然とした

要は、同じように首に口付けろと言われているのだ

今、ここで


「…………」


挑まれて引き下がることもできずに、マイクロトフは瞑目した

諦めというよりも、自尊心と葛藤しているような、祈るような、聖職者を堕とした瞬間のような、カミューの嗜好を根本から満足させる姿だった

こんなこととはいえ時間が惜しいと考えを改め、マイクロトフは覚悟を決めたのか、その口元がきゅっと真一文字に引き結ばれた


カミューの笑みは途切れない


意を決してマイクロトフが口先を寄せると、次の瞬間カミューに抱きかかえられるようにしてベッドの上に押し倒された


約束通り最後まではしなかったが、その夜から数日間、サウナで赤青両騎士団長の姿を見かけた者はいなかった

―――そんな、戯れの日常


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2025年05月19日

【カミマイ16】憩いの夜

わが家の洗濯機が突如動かなくなりましたので
買い替えをすることに…!

電化製品の買い替えってほんとに……(大変)……なのですが
耐用年数が10年でそれ以上を超えると必然的というか
良く持った方だという話がもっぱらなので
成人後の人生60年とか想像すると
六回は買い換えなければならない計算になるのかもしれません
洗濯機に限らず、冷蔵庫とかコンロとかレンジとか…なのかなぁ
給湯器も暖房もそうですね…

とはいえ、15年持てば御の字なのかな?…と思いつつ

わが家の愛猫おひめよりも若かった(洗濯機が)、と身内が教えてくれました
うちのおひめには長生きをしてほしいです

★★★

水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより


幻想水滸伝2【カミマイ】妄想16

カミュー×マイクロトフ

憩いの夜



……できた

完成した、というのは、騎士団長の執務室の改装の話ではない

それはもう大分前にやり終えており、マイクロトフを一瞬呆けさせたのはそんなことではなかった

彼らの団長が座す室内にやって来て青騎士たちの目を輝かせたのは、ロックアックス式サウナがデュナンの同盟軍本拠地に設置し終わったという報告だ

これにはマイクロトフ以下青騎士たちによる盟主への説得というか力説というか働きかけが功を奏して、騎士団が配置された城の一角に大浴場とは言えないけれどそれなりの人数を入れられる施設を作ることに成功した

石と岩とレンガを組んで作った秘密基地のような岩屋に窓と扉がついているだけのような一見簡素な設えだったが、中は結構広い

水風呂は外に設置してあり、そこには屋根があるので一応雨はしのげる

ロックアックス式のサウナは焼いた石を準備してそれに水をかけるだけなので、場所と建物さえあれば簡単に作れた

もちろん熱した石の交換は重労働だが、長時間持つように石材を厳選した

入れば体が温まり、体温調節は水風呂で事足りる

まさに、簡易なリラクゼーションと言っても過言ではない、ロックアックス出身者にとっての憩いの施設の完成は正に朗報だった

今から入れます、との連絡を受けて、マイクロトフはさすがに一番風呂ならぬ一番サウナは労をねぎらう意味で部下たちに先に入るよう勧めた

サウナという言葉を聞いて、マイクロトフの本心は浮き足立ったが、その姿を配下の騎士たちの手前、見せるわけにもいかない

後始末の仕方も知っていたので、自分は最後でいいと断った

疲れている者や夜勤明けの就寝前の者たちが先に入るよう指示を出し、自らは夜に入ろうとそう決めた

そして、思い出したように付け加えた


「完成の報告は、赤騎士団にも伝えてくれ」


マチルダ騎士団が誇るサウナは、騎士団であれば誰もが遠慮なく使っていいし、誰の入浴も歓迎する

ただ、使用や作法、健康面での注意は慣れている者が必ず周知するように、と付け加えて


見張り番を立てる必要はないが、使い方くらいは紙に書いて入口に貼っておいても良いかもしれない

サウナと聞いてからの青騎士団長の血色は、顔の表情と相まって、めちゃめちゃ良い男振りだったので、周りを惚れ惚れとさせたことは言うまでもない




一日の業務と依頼をきっちりと片付けたのち、机の上を綺麗にして、青の団長であるマイクロトフは意気揚々と新設された風呂場へ向かった

さすがに混雑をしていたようだが、夕食の時刻を過ぎてからしばらくすると、ピークは徐々におさまったようだ

脱衣所ではすでに身綺麗になった騎士たちで溢れている

最高の気分転換でしたと晴れやかな顔を見せる面々を見送り、マイクロトフも脱いだ騎士服を手早くたたみ、ブーツを置いて石造りの建物のドアを開けた



居合わせた騎士たちと透明な湯気の中で談笑をしていたマイクロトフが何気なく戸口に目をやったのは、ほんの偶然だった

そろそろ夜も更けた頃に、また一人、足を踏み入れる者があったからだ


「カミュー」


マイクロトフの声には、珍しいなという響きがあった


「おまえの服が脱衣所にあるのを見つけたのでね」


視界に現れたのは、騎士団の中では珍しい肌の色を持った親友の姿だ

さすがに青の長衣は団長職のみ身につけることができる代物だったため、かなり目立っていたようだ

綺麗に畳んだつもりだったのだが、確かに染まった青色の範囲が通常の騎士服よりも断然多いので、見つけやすかったのだろう

あとはブーツのサイズでわかったとカミューに言われ、マイクロトフを含めた一同の首を一様に傾げさせた


男は辺りを見回し、居並ぶ騎士たちの顔を確認した


「周知は受けたが、赤騎士団は私一人のようだね」


カミューはタオルを巻いた腰に優雅に手を当て、軽く嘆息をしたようだ

単に青騎士が作ったと聞いたので、初日に入るのを遠慮しただけかもしれない

そうは思いつつも、マチルダの騎士は青だけではないのだからと思い直したようだ


「明日、私の方からも彼らに伝えておくとしよう」


折角の施設なのだから騎士たち全員が利用した方が賢明だと


「是非そうしてくれ。ここに来れば、自然と会話も広がり、人の輪も広がる」


色の別なく裸の付き合いができるぞと、マイクロトフは笑顔を見せた

カミューはそれにちらりと一瞥を送ると、「おまえはサウナの申し子だよ」と言って肩を竦めた

根っからのサウナ好きはマイクロトフだけに限ったわけではなかったが




「…昔から思っていたことだが」


隣に腰掛けた親友に、すっかり忘れていたとはさすがに言うことはできなかったが、マイクロトフは何気なく声をかけた


「カミューは優男ではないのだな」


着瘦せをするのか、はたまた愛刀が細身だからかどうかはわからないが、男はよくそう評される

背丈はマイクロトフの方がわずかに高いが、騎士たちの中でも彼らは長身の部類に入った

あとは身のこなし方が原因か、と考えながら、改めてカミューの半身をマイクロトフはしげしげと眺めた


入浴中の面々同様、カミューも半裸というか足のふくらはぎまで布で覆われているが、上体のバランスはマイクロトフの目から見ても綺麗なものだ

両肩にもしっかりと肉がつき、胸や鎖骨にも無駄のない筋肉がついている

マイクロトフより若干柔らかそうな肉質だが、元々の地肌がわずかに濃いため異郷の雰囲気が強い

カミューの柔和な印象を与える顔立ちと比較して、かなり男性的だと言えた

マイクロトフは評論家ではないので細かなことは言えないが、立派に雄の体をしている

そんな気がした


男同士だし、見習の寄宿舎生活時代に他のメンバーたちと一緒に風呂に入った経験があるので、マイクロトフには気恥ずかしさというものがない

裸の付き合いは青騎士団では珍しくないものだし、恥じらう方が異常に映る


どういう意味かな?、と憐れむような目線がカミューから投げかけられる

具体的な理由までは念頭になかったので言葉に詰まり、マイクロトフは少し眉を寄せた

けれど思ったことを臆することなく口にした


「カミューは元から肉付きがいいだろう。士官学校時代から、すでに鍛えられていたからな」


当時を回想するに、同年やそれに近い少年たちと比べてもカミューは上背があって目立っていたし、体も完全に仕上がっていた

鍛錬を積んだというよりも、日々の生活で培われてでもいたかのように


その理由は極単純なことだよ、とカミューは言った

苦笑のようなその表情はやはり、マイクロトフを気の毒だと思っているようにも映る


「元々私の実家は裕福と言える家系ではなかったので、幼い頃から働きに出ていた。思いつく理由はそれだけだよ」


年少者といえど、力仕事でなくとも一日中体を動かし家畜の世話や店を手伝うことはできる

特にカミューの故郷ではよほどの名家でなければ大抵の子どもは、体がある程度出来上がれば稼ぎに出ていたと聞く

そこで早くから社会性と自立心が養われ、自然と必要な場所に肉がつき力を養うことができたと

ロックアックス生まれのおまえとは環境が違うのだと言っているようだった

資質という部分もなかったわけではないだろうが、そもそもが違うのだとカミューは言った

おかげで休んでも筋力は衰えないし、今も少ない鍛錬で肉体の維持ができると


マイクロトフは思わず唸ってしまった

羨ましい限りだと言ってしまいたくなったが、働かねばならなかった境遇が半ば慣習化していたという文化の違いを同時に痛感せずにはいられなかったからだ

カミューの故郷の方針と、こちらの生活は違うのだなと改めて思う


「俺は剣を振るのが子どもの頃から趣味だった。だから鍛錬を苦だと思った経験はないが…」


体を動かしているおまえは水を得た魚のようだからね、と男は微笑った

そして腰掛けた椅子の真横から手で顎を下から掬われ、何事かと目線をカミューに向ける

すると、話し込んでいるうちに二人きりになったぞ、と男は周囲に視線を巡らせて示した

マイクロトフは、今度こそ絶句した

用が済んだからというには、人があまりにもきれいにいなくなり過ぎている

話をしていたカミューとマイクロトフ以外、いつの間にかサウナの中は無人と化していた


「大方、私たちに気を利かせてくれたんだろう」


マイクロトフは思わず額を押さえたくなった


「…それは一体、何の冗談だ…」


騎士たちが団長相手に回す気など、仕事の場面だけで十分だ

余計な詮索をされたのであれば、明日弁解をしなければならない

気にするな、と

無茶なことを言っている自覚はありつつも、言わなければ気が済まないと思った


その瞬間、マイクロトフは別のことに思い至った

そういえば、と、カミューに問う

口調には、どこか気遣うような気配があった


「あれから、よく眠れているのか…?」


マイクロトフは、赤騎士団長室で就寝するようになったカミューの様子を尋ねた

寝床が同室だった頃は、どうやら寝付くまで大分難儀をしていたようだ

自分の所為であると決め付けてはいなかったが、もしかするとと思わなくもない

それをカミューに直接問うことは、それこそ男が以前言った野暮というものだろう


カミューに欲されている

そのことはマイクロトフも常に自覚しなければならない

それでもカミューは待っていてくれているのだから


誓わせたのはこちらだ

承諾したのがカミューであっても



おかげさまでね、と友人は答えた

マイクロトフの顎の下にはまだカミューの長い指が触れている

首が疲れると思ったが、じっと男を見つめることをやめる気にはならなかった


測るようなマイクロトフの眼差しに、カミューは苦笑を漏らした

そんな顔で見つめられたら、ただで帰したくなくなってしまうよ、と言って


マイクロトフは意表を突かれたのか、む、とわずかに顔をしかめた

しかし、逃げ出す気はなかった

それ以上のことはできないとわかっているからこその度胸だったのかもしれない

意外とこいつは性格がわるいな、とカミューは本気で思ったが、表には出さなかった


「では、しばらくここに留まろう」


そう言って、マイクロトフはカミューを見た

マイクロトフにとっての就寝の時間はとっくに過ぎていたが、後片付けも残っていることだし、焼き石が冷めるまで待ってもいいと考えたのだろう

何よりもカミューと過ごす時間が大切だと思った



わずかに湿った明るい色の頭が持たれ、マイクロトフの肩に髪が触れる


相手の心の内を占め、また独占しているということがこんなに快いことだとは思わなかった

互いにそれ以上踏み込むことを禁じているからだろうか

カミューは内心で焦れているだろうに、勝手な話だが、満たされる

危うい綱渡りの上にいるというのに、この場に二人しか残されていないことに安堵する


帰したくはないな、とカミューから低い呟きが聞こえる


そうだな、と同意を示すことは余計に相手を苦しめるだけだろうと思った


体の脇に回ったカミューの腕に触れ、マイクロトフは再び窓の外を眺めた



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2025年05月18日

【カミマイ15】暁は遠く

ギリギリ路線を歩む(?)カミマイです

★★★

水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより


幻想水滸伝2【カミマイ】妄想15

カミュー×マイクロトフ

暁は遠く



溢れる吐息がどちらのものかわからなくなった頃、ようやく体を離され、マイクロトフは深いため息を全身で吐いた

カミューは名残を惜しむようにしばらくその黒い睫毛をじっと見つめた後、マイクロトフから離れ、自身のベッドの上に戻った

ただ口を合わせて互いを耽溺し合っただけなのに、マイクロトフの脳髄は痺れるような陶酔に体の底からわなないている

カミューという毒であり薬である男は、マイクロトフのつぼを確実に抑えて逃がさない

触れれば触れるほど毒が回って、更に手を伸ばしてしまいたくなるほどの危険な熱そのものだった

マイクロトフは決して詩人としての素質があるわけではないが、そんな男もいるのだなと、この親友と関係を深めてからというもの、つくづく実感させられた


「よく眠れそうかい…?」


暗がりの中、くぐもった笑い声が密かに届いて、青年の顔をむっとさせる

カミューといると、最低でも一度は不機嫌な面構えになってしまうのはなぜだろう

相手が常に自分に心地よい敗北感を抱かせるからかもしれない

まったく歓迎できないことではあったが、今となってはそれも普通のことになりつつある

カミューとこうすることが、ごく自然の日常に


ああ、と強く言い捨てて、就寝のためにマイクロトフは目を瞑った


「おまえも早く休め」


意識が落ちる前にそう命じると、努力するよ、と応答が返った

おやすみ、と、いつもの声が聞こえ、マイクロトフから小さく応答が聞こえた瞬間、安らかな呼吸とともに青年の全身がベッドに沈み込んだ


「おやすみ、マイクロトフ」


カミューは声を潜めて謳うように囁いた



やがて完全に親友の意識が闇に飲み込まれた様を確認すると、再び床に降り、カミューはマイクロトフを見下ろした

白い容貌には昔と変わらぬ安らかさがある

同室だった当時も同じようにこのはっきりとした目鼻立ちの親友の寝顔を眺めたような気がする

頬の赤みは減ったが、先ほどまでカミューになぶられ、自らも求めてきた唇の色は変わっていなかったかもしれない

大人びて、確かに大人だが、格段に手に入れ難いものになった

マイクロトフは自分のことをしかと欲したが、体の関係は、少なくともロックアックスに戻るまで深まることはないだろう

それが口惜しくもあり、渇きを思い起こさせる原因になっているが、マイクロトフの考える通り、愛だの恋だのに興じていい状況ではないのだろう

自らであればそれすら飲み干して戦況に臨む気概でいるが、おそらくマイクロトフ自身はこの戦いのもっと先を見ているはずだ

自分自身で所属した組織に疑問を持ち反旗を翻した責任、マチルダ騎士団の本来の在り方、そして改革を、身を賭して実行に移す腹積りでいる

目の奥にある志は、確実に未来を見ている

それを揺るがないものにするには、色恋は邪魔なのだ

マイクロトフは二つを同時に両立、行使できない狭量であるとも言えるし、一方で一途でもあるのだろう

ひとつに専心し、必ず成し遂げるという強い意志は、揺るぎなきものでなくてはならない


それを助ける立場になることはあっても、挫く者になってはならない

カミューが思うほど、マイクロトフの愛は軽くないのだろう

一見穏やかで深く、そして太くどこまでもつながるものなのだ

だから


カミューはふと自身の顔に自嘲が浮かんでいることを自覚した

頭ではわかっていても、腕を伸ばして手に入れたいという欲求が常につきまとい続ける

例えあちらからいくら唇を重ねられようと、見つめられようと、カミューを真の意味では満たせない


私の切り札はおまえが持っている


そうつぶやいて、カミューは部屋を後にした


マイクロトフの隣で全てを忘れて眠るためには、まだ時間がかかりそうだった



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2025年05月17日

【カミマイ14】朴訥が花

朝から食器というかガラス製の重い(…)
計量カップを割ってしまったので
百均で買ってきます…!重くないやつを…!!!!!

ということで、カミマイは続くのでした…!

★★★

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幻想水滸伝2【カミマイ】妄想14

カミュー×マイクロトフ

朴訥が花



本拠地の増設にマチルダ騎士団の力を借りたいとの要請を受け、マイクロトフは即座に補佐役の一人を呼んで手配に当たるよう指示を出した

元々関所の修理や修繕など、簡易なものであれば自分たちの手でやっていたし、ロックアックスでは専門職を招いて定期的に指南を受けていた

マイクロトフは団長位に就くまでは青騎士の各部隊に籍を置いていたという経緯もあり、その担当になったこともあるので抵抗はない

人手が足りなければ、今でも彼らに遠慮なく手を貸した

元々、体を動かすことが本分のような騎士団だ

土木関係に専門的な見識と腕のある補佐役も数人かかえており、彼らの判断で作業に適した騎士らを選定させ、素早く任に当たらせた

城や拠点の拡張や改築などは、青騎士たちにとっては朝飯前で、警戒に当たる警護や見回りなどよりもひっきりなしに動き続けられるのでむしろ有難いと思う者も少なくなかった

土埃や泥にまみれるのが好きな騎士と言っては少々言い過ぎの感はあるが、マイクロトフ自身も皆と汗する手作業や肉体労働がきらいではなかった



朝の件があったのち、特にそのことに関して誰も忠告も懸念も指摘もしなかったが、団長補佐の一人が当たり障りのないようにマイクロトフの前に進み出て、殊更きつく詰襟を着込んだ上司の許可を得てから思うことを伝えてきた


「団長専用の寝所を我々が空けますので、今夜からそこで休まれては如何ですか」


上下の別なく騎士たちが数人で一部屋に集まり、今でも寝泊まりを続けている

さすがに色の違う騎士団同士が同室になることはなかったが、皆で詰めれば一部屋くらい空けられるとその騎士はマイクロトフに提案した

正式な同盟軍内での会議の出席のみならず、各所での打ち合わせや手配などで忙しく立ち働く団長である青年を気遣って、しかと休眠ができるように計らうという主旨の内容だったが、彼らの本音はマイクロトフの身の安全にあるのだろう

例の赤騎士団長に無体な真似を強いられているのではないかと、大方心配をしてくれているのだろう

プライベートな事柄なので敢えてはっきりとは誰も明言しなかったが、マイクロトフは部下たちに案じられているのだということをすぐさま理解した

しかしそんなことくらいで彼らの懸念材料になってはならないと考え、弁解も謝意もマイクロトフは彼らの前では口にしなかった


「俺は今後、執務室にベッドを運んで寝る。おまえたちは今まで通りを続けてほしい」


正直なところ、マイクロトフは専用の個室などあてがわれても、着替えと就寝以外に私的に利用する目的がそもそもなかった

青騎士団の執務室は、ロックアックス城のものよりも狭い

大勢の青騎士が行き交い、別々の部署の責任者が詰めて話せるような広い会議室もない

入れ替わり立ち替わり騎士たちが入退室を繰り返し、マイクロトフも執務机の前で立ったまま指示を出すことが多かった

就寝場所として適していないことは確かだが、長椅子を運び込むよりはベッドに横になれるだけでも大分ましなのだろう

訪問者からは見えないように仕切りを作り、そこに団長服をかけて休むことができればそれでいい、とマイクロトフは言った

寝入ってしまえば、どうせ朝まで起きないのだから


「…この際、我々の手でこの部屋を拡張してはどうですか?」


建築や建造の心得のある者が多い青騎士らしく、騎士団長室の敷地面積を増やしてはどうかという意見があがる

実際に、自分たちにはそれが可能だ

マチルダ随一の団結力を誇るがゆえに、おそらく驚くほどの短期間でそれを成してしまえるだろう

また、その作業は戦場に出るわけではないので、騎士たちにとっては比較的安全な仕事であるとも言えた


「…俺は構わないが、問題がいくつかある」


ひとつは、青騎士団の執務室だけを拡張してはカミュー以下赤騎士たちに示しがつかない

次に、城の内部を自由にいじって良いのか許可がいる

最後に、安全性はもちろん、予算の確保


後ろの二つは盟主と軍師に直接尋ねることとして、問題は一つ目だ


カミューの許可をもらいに行くことそれ自体は構わないのだが、やはり一方だけの執務室を広くするのは恰好がよろしくない

バランスを取るべきだと、マイクロトフは考えた

無論、騎士団内に不平が出ないことを慮ってだ

そんな些末なことに目くじらを立てる輩は赤騎士の中にはいないよとカミューに諭されるのが落ちだろうが、問題はそこではない

団結を必要とするなら、必要最低限の体裁は整えるべきだ

対外的にも、内面的にも


「では、赤騎士団長の執務室も同じように拡張しましょう」


うむ、とマイクロトフは大様に頷いた


「できれば、赤騎士団の部屋はこちらより豪勢に頼む」


一瞬虚を突かれたようだが、確かに体面上そうした心積もりは必要であるだろうと察し、進言した団長補佐の騎士は、図面に書き起こしてまいりますと断って、知識のある騎士数人を伴い、別の部屋へ移動した

ここがロックアックス城内であれば青騎士団の政務室の一角を借りれば済むのだが、彼らの駐留を許されたこの場所がまだまだ手狭であることは否めない


「もう少し、軍師殿に融通をしていただくか…」


今でも十分、大所帯であるマチルダ騎士団には無心してもらっている気がするが、組織ゆえに割かねばならない経費や、回してもらいたい設備や部屋はある

これ以上わがままを言って、迷惑がかからねば良いが



だが、マイクロトフは完全に失念していた

拡張工事が済むまでは、カミューと寝所を共にしなければならないという現実を



マイクロトフから工事の件を聞かされたカミューは、実直な親友の詰めの甘さに呆れたような苦笑をその頬に滲ませた


マイクロトフがその意味に気づくのに数分の時間を要したことは言うまでもない


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2025年05月16日

【カミマイ13】深層の露見

カミュ―には幸せになってほしいカミマイです

★★★

水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより


幻想水滸伝2【カミマイ】妄想13

カミュー×マイクロトフ

深層の露見



駄目だ

駄目だ、とマイクロトフは苦しげに息を吐いた


こちらが怯んだ隙を見逃さず、追い詰めるような強さで、マイクロトフを引き寄せたカミューの唇が頬を避けて喉を這う

生殺与奪の権利を男が有するかのように、喉仏に舌を這わせ、歯を立て吸い付き音を立てる


何が駄目なのかとカミューは間近で問うた

熱い滾りを宿した声はマイクロトフの鼓膜に直接届いた

光をひそめ、色を濃くした飴色の双眸には赤を思わせる炎が揺らめいている


マイクロトフは深いため息をついた

すべてだ、と言ってしまいたい衝動をなんとか抑える

言ってしまえば、臆病だとカミューはマイクロトフを罵るだろう

そんな屈辱に耐えられる自信は、今はなかった


カミューの指先が耳裏を伝い、少し緩んだ横髪に触れる

朝の鍛錬で水をかぶり、しとどに濡れた黒髪に鼻先を寄せる

そのまま後頭部を抱くように手のひらが回され、もう片方の腕で腰を捕らえられ身動きができなくなる

いや、はねのける意思さえあればそうすることは容易かったのかもしれない


カミューはマイクロトフの視線を正面から捉えたまま、シャツのボタンを器用に外した

均整のとれたマイクロトフの腹筋が露になり、カミューは指の腹でそこをなぞった

鍛錬だけでここまで見事に鍛え上げられる者はいないのではないかと思われるほど、恵まれた肉質だ

所々に傷痕の残る表面は張りがあり、意外と手触りがよい

カミューはマイクロトフの体が昔から好きだった


触れる都度、びくりと大きな震えが走る

嫌悪の反応でないことは、上気した青年の顔と、わななく唇から不規則に漏れる呼吸からも明らかだった

カミューの手全体で存分になぶられたマイクロトフは、しかし懸命に口中で舌を動かし、言葉を継いだ


「…婚前での交渉は、駄目だ」


「……………」


やっとのことで口から出たのは、自分でも時代錯誤な言い訳だったと思う

マイクロトフはそれでもなんとかこの窮地を切り抜けようと試みた

触れてくるカミューの熱さに、これ以上この場で絆されるわけにはいかない


騎士たちに痕を見られたことも痛手だが、さらに朝の公務に遅刻をした上、体の動きが鈍くなっていたら弁解のしようがない

なんで自分がされる側だと決めつけているのかはさて置いて、私的な情事でそんな事態になったのだとしたら、指導者として周りに示しがつかない

部下たちへの申し訳なさに、自分はその場で団長の職を辞してしまうかもしれない


それだけは、今の現状、マチルダの未来のためにもあってはならない

どんな理由があったとしても、祖国への離反の引責は自身が取る

マイクロトフはそう心に決めていた


だから、駄目だと言った

流されて、うやむやのままにこの先を受け入れて、迎えて良いはずがないと

仮にカミューとそうなったら、マイクロトフは今の自身の信条が揺らぐ気がした

石頭だと罵られようが、流されたままで志を二つも両立し、維持し続けられる自信がなかった



マイクロトフの発した言葉はカミュー自身を拒否しているとも取れるし、期限付きの停戦を嘆願しているようでもある

マイクロトフはこの行為自体を「やめろ」と言っているわけではないのだから


だとしたら、それが甘さだな、とカミューは思った


そして自分も、大層この親友に対しては詰めが甘いようだと自覚する


本来であれば、このまま膝を割って押し伏せても相手は拒めない

拒めない決定的な理由があると、カミューは直感した


しかしこの先に至った場合、強引に事を進めた場合、マイクロトフの側に今度は別の理由を与えてしまう

カミューが無理に進めたから、自分の意思ではなかったと

本心を自覚することなく、相手に責任の一端を押し付ける

それすらもマイクロトフは自らの不徳、不覚悟の結果だったと自責の念をいだくかもしれない

それがカミューは気に入らなかった

一方だけの思い込みで深まる関係など、あってはならない

笑い話で終わらせてはならない

真に相手を欲するのであれば



「…仕方がないな…」


マイクロトフは婚姻を約束した良家の子女や生娘ではない

なのに自分は何をやっているのだとカミューは思った


どうかしている

そうまでしてでも、意固地なこの男を、深い部分から絡めとって手に入れたいらしい


自嘲を滲ませ、押し伏せた相手の剥き出しになった肌にカミューは強く吸いついた

明確な意図を持って、きつく、さらに痕が残るように


「っつ……」


マイクロトフから押し殺した呻きが漏れる

痛みを訴えてはいたが、苦痛だけではなかったようだ

頬を紅潮させ、睨みつけてくる夜闇のような深い色の眸には、薄い靄のようなものが浮かんでいる

生理的なものだろうが、戦いの傷や痛みに体が慣れていても、一方的な戯れには不慣れであったようだ

亭主のいるご婦人に押さえつけられ、関係を求められるような場面など彼の過去にはなかったのだろう

この堅物を相手にそんな暴挙に出る勇気のある女性ならば褒めてやりたいところだが、単なる想像であっても深い嫉妬を覚えずにはいられない

それが男であれ女であれ、この友人に無体を強いることが叶うのは自分一人であれと心の底から願った



「…今はまだ駄目だ、という解釈で良いのかな?」


マイクロトフ、と、カミューは底冷えのするような低い声で囁いた


確認を促され、さすがに「今後も一切手を出すな」とは言い難い状況であることをマイクロトフは理解した

もう、戻れないところまで来てしまったのだと


マイクロトフにはカミュー以外の男に迫られた経験はない

ない、と断言してもおそらく良いはずだ

慕われた経験はある

しかし断固として、マイクロトフの心も体も動かなかった

なのに、カミューに対してだけは、理由をつけなければはねつけることができなかった


団長職だから

色が違うから

監視下にあるから

マチルダの行く末が目の前にあるから


すべて真実であったし、正論だと思った

今、カミューに自制を促している理由もそのためだ


だとしたら、ここでマイクロトフ自らも覚悟を決めなければならない

ぎりぎりの境界で踏みとどまっているカミューに対して、誠意を見せる覚悟を



「カミュー…」


マイクロトフは目を瞑った

一回、二回と深呼吸を繰り返してから、厚い瞼を持ち上げた


ゆっくりと拓かれた視界には、烟るような淡く明るい頭髪を持った友の顔があった

その先をと願うように、長い睫毛が秀麗な男の眼差しに深い影を落としている

流されては駄目だと自身を戒めながら、マイクロトフはため息のような言葉を自分が吐くのを聞いた


「俺は、おまえを」


カミューはその続きをしかと耳にし、喉の奥でかみしめた


だが今は駄目だと続けるマイクロトフのひそめた目線を、ひどくつらいもののように見つめた


白い頬を何度も指の腹で撫で、やがてカミューは深い嘆息を吐いた

本当であれば、思いと真反対の要求を突きつけるマイクロトフを殴りつけても良かったのだろう


マグマのようなうねりが、カミューの中にはある

堰を切って溢れ出すのを今か今かと待ちわびているそれを宥めるには、まだ足りないと思った


マイクロトフは苦しそうな表情で、その様を見返している

互いに溺れるには時期がまだ整っていないとマイクロトフは考えているのだろう

……それでも


カミューが動くと、マイクロトフの首筋に小刻みな震えが起こり、反射的に瞼を閉じた


唇に当てられた温もりに、マイクロトフはカミューを感じた

啄むような優しい接触でマイクロトフを解し、やがて促されるように開いたわずかな隙間を見つけ、カミューの舌先が滑り込んだ

友愛でも親愛でもない証のそれは、カミューの乾いた大地に流れる河を潤した

マイクロトフが自身を受け入れ、応えていることに、徐々に理性が麻痺していく



時間が止まったように互いの温もりに溺れ、耽溺し、やがて瞼を持ち上げた

初めて真正面から受け止めた接吻は、現実味があるのにひどく穏やかな心地を誘った



誓ってくれ、とカミューは言った


マイクロトフの痺れた脳に直接語りかけるように

心の臓に刻みつけるように




私以外に決して心を許さないと


私以外には体を許さないと



「カミュー」


喘ぐようにマイクロトフはその名を呼んだ


「誓ってくれると言うのなら、私はおまえのためにどんな困難にも耐えよう」


これから起こるすべてを指して、内包して、カミューは言った


マイクロトフはカミューを自身の道連れにするつもりはなかった

マチルダ離反の責任を取り終えた後、必ずカミューの思いに応える

応えるという答をカミューに出す


とはいえ、それを公言するのも恥ずかしいというか、今はまだ腹立たしい

大体、カミューの口づけは巧みで旨すぎる

どこで学んだんだと不審に思いながら、自らと比較して些細なことに憮然としてしまう


内心を誤魔化すように、照れくささを隠すように、マイクロトフは横を向いた


「カミューは俺に、修道士になれとでも言うのか…?」


ぶすっとむくれたような青年に、男は微笑いかけた

騎士団きっての色男の名に恥じぬ、晴れた秋の空のように鮮やかな風貌だった


常に騎士としての節制に努める手前、禁欲を貫くのは大儀でないこととはいえ、なんだか腑に落ちない

最初にカミューに提示したのは自分だとはいえ


しかし宥めるような甘さの残る親友の顔を見ているうちに、マイクロトフの不満は自然と消えた

カミューという風に吹かれて、呆気なくどこかへ吹き飛んだのかもしれない



その代わり、私の魂はおまえのものだ



とろけるような笑みを深くして耳元に息とともに吹き込み、カミューは再びマイクロトフに口づけた

もう二度と忘れられないように、逃れられないように

長い指を、頬に首に指に絡めながら


渇きから解放されたカミューの温もりがわずかに離れ

その唇が続く音を形にする



―――永遠に



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2025年05月15日

【カミマイ12】青い覚醒

文字の行間のお話

個人的に昔は文字を詰め詰めにしてテキストを書いていたのですが
今は改行のみでただただ書き連ねる形態にしている理由は、
文章を段落分けするのがめんどくさいというだけの
箇条書きの延長上であるのではないかと思います

思ったことをつらつら書いている…
キーボードではなくタブレット端末の画面から打っている…という感じなので
多分これ自体、小説とは言えない感じなのがいやだと思う方も多いと思います

昔は詰め詰めに書いていた反動…だとも思うような…

視力が低下していくと
大きめの読みやすい文字と行間がほしくなるのかなぁと思いながら
【カミマイ】のみならず、オリジナルの【龍飛王×鼓翼】も
どんどん話を書き進めているといった具合です

ある意味で、
頭の中のものを書き出すペース(速さ)維持のための
変な文章…文章とは言えない文章になっていると思います

おかしいという自覚はあるけれど、
段落分けをして文字を清書(整理)する暇すら今は惜しい…!…という感じですね…
どんどん書きたい…!という…!

色々とご迷惑をおかけします…@@

そして、こんなものでも構わないぜよ…と言って
お付き合いくださる方には本当にありがとうございます…!

★★★

水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより


幻想水滸伝2【カミマイ】妄想12

カミュー×マイクロトフ

青い覚醒




重い、と一言口に出してしまえば、この拘束状態から抜け出せたかもしれない


マイクロトフの目醒めの時刻は早い

明けの鷄が鳴くまでに細胞が起床のシグナルを全身に送る


なぜこんな事態になっているのかわからなかったが、狭いベッドでさながら獣の親がわが子に寄り添うようにカミューが自分に密着した体勢で眠っている姿を見て、マイクロトフは唖然とした


カミューの顔が近い

間近にある男の少し甘みのある容貌に、反射的にマイクロトフは顔をしかめた


…狭い寝台に無理矢理収まって、全身が痛くならないのだろうか

そんなこと考えながら、マイクロトフは居心地がわるそうにわずかに身をずらした


昨夜は寒かったのだろうか

ということは、自分を布団代わりにしたのか?、との疑念が一瞬脳裏をよぎったが、かけたはずの毛布はカミューの寝床のシーツと一緒に無造作にまとめられていた

この状況に対する判断に迷いつつも、とりあえずマイクロトフは朝練の約束があったので青騎士たちが待つ中庭へ移動することにした

体をどかすようにしてカミューを自分のベッドの上に残し、相手を動かした拍子に乱れた自身の夜着の襟を正す

カミューの端正すぎる鼻筋からは規則正しい寝息が漏れ、存外よく鍛えられている肩や胸筋がゆっくりと揺れていた

熟睡できているらしい様を認め、マイクロトフは無意識に胸を撫で下ろした

さすがに蹴り飛ばして追い出す気になれなかったのは、あまり寝つきが良くないらしいカミューの体調を慮ってだ

さほど休眠は必要ないと男は豪語するが、疲れを感じていないわけではないだろう

それでなくとも赤騎士団は、ロックアックスで行っていた公務とは九十度違う任に就いている

現場での仕事は主に青騎士が担当していたのだから、同じような任務に交代制とはいえ内政担当だった頭脳派集団の彼らが当たるとなれば、過重労働だと訴えられても仕方がない

マチルダ騎士が屈強とは言わずとも逞しい部類であるのは騎士として当然だが、中には新たな体制に不慣れな者もいるだろう

カミューは環境の変化に苦心する部下たちに気を配りつつ、自らの職務もきっちりと遂行してきた

一方でカミュー自身の意思であるとはいえ、同盟軍への加入はマイクロトフに共感して従った形であるのは事実だ


カミューには借りがある

マイクロトフはそう考えた



朝の稽古は元々マイクロトフ一人でやっていたのだが、マチルダを離れてから日が経つうちに、自分も、と参加を表明する騎士が相次いで出てきた

自身の管轄外である赤騎士はここには見当たらないが、警護ばかりでは体が鈍ってしまいそうだと懸念して志願する者たちが徐々にだが増えている

一応は同盟軍から彼らに許された一角の庭を使っているが、そのうちもう少し広い場所を探すことになるかもしれない

マイクロトフは参加者が増えても減っても構わなかった

しかし、皆と桶を持ち寄って鍛錬後の水浴びをしていると、なんとなく味気ないなと感じてしまう

ロックアックスの大浴場が懐かしいと思ったが、敢えて口には出さなかった

ここは本拠地であるとはいえ戦場なのだ

贅沢を言ってはいられない


マイクロトフの心中を知ってか知らずか、同じことを考えた騎士はいたようだ

なんとかサウナをこの地でも再現できないか、と

行軍中に大掛かりな陣営を作った時には、手狭でも自分たちの手で略式のものを拵えたりしたものだが

意外とロックアックスの出身者は風呂好きなのかもしれないなと苦笑を浮かべながら、マイクロトフは配下の騎士たちと共に持参したタオルで水気をぬぐった


ふと、いつの間にか周囲の騎士たちの手が止まっていた

沈黙が落ち、誰も微動だにしない

鍛錬後の体を皆で清めていたはずだが、何か異変でもあったのだろうか


彼らの視線の先は自分の半身だ

マイクロトフはどこかおかしいのかと訝り、裸の上半身を捻ってみた


「…………」


先刻の打ち合いで、模擬の剣先が掠め、傷めたのだろうか

左肩のあたりに赤らんだ部分を見つける

ただ、それは視界に入ったものの一部分でしかなかった


共に訓練に励んだ騎士たちは一様に目を逸らし、朝食の用意ができたか見てまいりますと言って足早に去る者や、朝練で使用した用具を手早く片付けようとする者がそれに続いた

蜘蛛の子を散らすように、団員たちの姿がマイクロトフの視界から散り散りに消えていく

どういうことだと、さすがに鈍いマイクロトフでも気がついた

慌てる必要はないぞと注意を促しつつも、マイクロトフの動揺は明らかだった

脱いでいたシャツを素早く羽織り、前を止める

まるで急ぎの用を思い出したと言わんばかりに、騎士服の上着を拾い、大股で庭を後にした





「カミュー!!」


寝起きに盛大な怒声を浴びせられ、男は癖がついた柔らかな頭髪を緩慢な動作で搔き上げた

すでにマイクロトフのベッドの縁に腰掛けて、覚醒はしているようだった

しかし眼は胡乱として、まだ本調子ではなかったようだ

抗議があるらしい青年のおとないを受けて、おはよう、と朝の挨拶をする

それに思わず律儀に同じ言葉を返し、はっと我に返ったマイクロトフは、これはなんだとカミューに詰め寄った


「私の口から言わせるのは野暮だと思うが」


責めるような目つきの友人を軽んじているわけではなかったが、鼻白んだような様子でカミューは言った

寝起きなので、声調にいつもの張りがない


「…犯人は、やはりおまえか」


マイクロトフは思わず唸った


寝付く前まではどこにも何もなかったはずだ

首にも肩にも、そして胸や腹にも

腰骨のきわどい位置にまで

肌に浮き上がる鬱血のような赤い痕はまぎれもない前戯の痕跡だ

マイクロトフといえど、男所帯の騎士団を束ねる身である

そうした知識は大様にして頭の中に存在した


なぜこんな真似をした、と非難混じりに問うと、カミューは不敵に笑った

やっていないと否定もせず、弁解もしない

起床の直後ゆえに普段の人当たりの良さが欠如した双眸は、どこか野生の獣を思わせた


マイクロトフはぞくりとした

ゾッとしたのではなく、カミューの目線に感じるものがあったからだ


初めてでもないだろう、とふてぶてしくカミューは言った


「私の想いをおまえはすでに知っていると思ったが」


悪びれもせず確認でもしてくるような口調に、マイクロトフは素直に顔をしかめた

あからさまな不快感ではなく、カミューの不遜な態度が気に入らなかったからだ


「知っていれば、何をしてもいいとおまえは言うのか」


憮然とした口調を耳にし、そうだ、とカミューは言った


気のある者の前で、無防備にしているおまえがわるいと


しかし痕をつけた以上のことはしていないのだから、今日一日は詰襟の騎士服をきつめに着込んで大人しくしているんだなと、親友だったはずの男はことも無げに放言した


責任を転嫁され、マイクロトフは怒りを通り越して呆れ返った

だがマイクロトフが言い負かされて終わりかと思ったが、カミューの話には続きがあった


「マイクロトフ」


名前を呼んだカミューの声音は、すでに平素のものだった


次の瞬間聞こえてきた台詞の中身を正しく理解した途端、マイクロトフの背筋を細かな震えが走った



私はおまえの本心が聞きたい



ひそめたように低くなった男の声と優れた容貌が見せる真摯な眼差しに、マイクロトフはまたしてもぞくりとした

悪寒でも不快でもないそれは、追い詰められた獲物の胸中にも似て、マイクロトフから正常な判断力を奪う先触れのようだった


やめろ、と言ったような気がする

それ以上は、と、咄嗟に静止が口を突いて出た


マイクロトフが何を考えたのか、得心したかのようにカミューの瞳が鋭く細められる


マイクロトフは男と目を合わせ続けることができず、その場できつく瞑目した



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2025年05月14日

【カミマイ11】禁欲は飽和する

空の民草の民シリーズのカミマイは
禁欲生活を強いられる(苦笑)二人の期間が多くて
やきもきしますが、同盟軍に参加している間にかなり進展してくると思います

ゴルドーの監視下から解き放たれた赤青(カミマイ)…!
というわけなので……………
策謀渦巻くロックアックスから解放された
二人のムフフの運命は…!?

えっくすなどでもつぶやいておりましたが
カミマイの空の民草の民シリーズは全28話で完結します…!
やったぜ…!!
最後までどうぞお楽しみに…!

★★★

水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより


幻想水滸伝2【カミマイ】妄想11

カミュー×マイクロトフ

禁欲は飽和する



マイクロトフは友としてのカミューを愛していた

愛と言っては語弊があるかもしれないが、カミューの存在を大きな心で受け止め、捉えていた

それはすなわちマイクロトフにとっての友愛であり、恋情とは遠く、求められていないからこそいだくことのできる、ほぼ一方的な感傷だった

よく言えば無償の愛であり、マイクロトフからすれば、無意識であるとはいえ、それは非常に価値のあるものなのだろう

カミュー自身がそれとは異なる感覚をマイクロトフに持っていたとしても、マイクロトフが感じる友としての愛を簡単に覆すことはできない

そもそもマイクロトフはカミューを憎いとは思っていない

長所と短所がまるきり逆で、敵わない相手であるからこそ、マイクロトフにとってカミューはライバルであると同時にかけがえのない存在だと言えた

自分に持っていないものを、カミューが全て持っている

マイクロトフにとって、学び高められる存在として、友がある

それを愛する、という行為は、どこをどう切り取っても整えられたように清潔で汚れがなく、それひとつで完全なるものだった


友愛は、その一言だけで足りぬものがなく

それひとつで、すでに完成形だった


それが、マイクロトフという人間だった




マチルダ騎士団の一部が同盟軍に荷担したことで再編成を余儀なくされ、奔走した時期が過ぎてしまえば、あとは夜を静寂が包むのみ

出兵の命令が直接下されなければ、存外のどかな時間が長く続いた

それと同時に、大義という名目を前にして本能的に隅へ追いやっていた生身の部分が表に出てくる

カミューはその事実を歓迎しながらも、この部屋の中はまるで沙漠のようだと感じた


背後に、自分以外の気配を感じる

マイクロトフは一度寝入ってしまうと誰が何をしても一向に起きない体質であることは、寄宿舎時代に同室だった者たちの間ではかなり有名だ

戦場であれば常に気を張っているが、私生活では見た目よりもはるかに図太い

どこであろうと横になったらすぐに寝付くことができる様は、こどものようだと表すよりも、就寝すると決めた直後にすべての回路が切断されてしまうかのような、マイクロトフの特技とも言える代物だった

得意なのは剣術と馬術だが、とにかくすこぶる寝つきが良い

代わりに朝が早い本人には自覚がないことだったらしいが、眠った時の記憶がない、と昔からよく漏らしていた

寝る決心をした途端に思考が事切れるのであれば、それは当然のことだろう


今も隣の寝台の上に姿勢の良い姿で仰臥し、枕に頭を乗せ、一定のリズムで胸をかすかに上下させている

カミューは毎晩マイクロトフに背を向ける形で横になっていた

寝る間も惜しんで今後の騎士団の在り方について相談し合っていた以前であれば、自身も疲れ果て、意識の外に追いやることもできたが、そろそろそれが難しくなりつつある

マイクロトフはそんなカミューの胸中など知らず、呑気に寝息を立てている

士官学校で同室だった時分とは明らかに違う、大人の顔で



同盟軍の本拠地にある赤青騎士団の執務室はそれぞれ個別に分けられるようになったが、当初は部屋数が足りずに二人で机を横に並べた室内に、各団の騎士たちが入り乱れて入退室を繰り返していた

しかし拡張工事が進むにつれ、せめて団長が詰める部屋だけは鍵を付け、別々にした方が指示が伝えやすいということで分けてもらったが

眠る場所は相変わらず、他の騎士と同様、数人単位で割り当てられた

団長職といえど、例外ではない


マイクロトフ自身は、野営の最中も部下たちと並んで寝ていたので違和感はないらしい

赤騎士である自分は常にひとりで机をあてがわれ、眠る場合も天幕の奥で仕切りを作り、割と自由に単身で寝ていた

騎士団内での環境の違いだと言ってしまえばそれまでだが、カミューはあまり健全な意味合いで他者と寝所を共有したことがない

マイクロトフと寝食を共にした騎士見習時代であれば、マイクロトフが館内の責任者に異郷から来た志願者の世話係を頼まれた経緯もあり、また、自身も初めて見知った異国の友人という理由もあって素直に受け入れたが、今のカミューにとってマイクロトフと枕を別にしているとはいえ共寝するという状況は、二重にも三重にも意味が違った

恋う相手の存在を背後に感じ、いささかの気負いもなく眠れる方が不健全であるように思う


あちらが何の考えもなく就寝していることは事実だとしても、カミューの方はそうではない

いっそ、執務室に移って適当に眠ろうかとも考えたが、夜着の恰好で鍵を探すのも面倒だった

その上、日が落ちれば建物の中といえども寒い




マイクロトフは自分をどのように捉えているのだろう

ゴルドーや白騎士の管理下から解放されて、昔のような友人としての付き合いに戻れたことを純粋に感謝し、今を享受しているのだろうか

騎士団の重役に就いて以降、マイクロトフの側から故意に親交を断絶した状況が、自身の執着に油を注いだことは確かに認めよう

だが、一度火が点いた灯火は、燻火は、決して消えることなく我が身にくすぶったままだ

おまえ自身を灼いても飢えて渇き、飽くことを知らないだろう



いつの間にかカミューは体ごと相手の方を振り向き、長い四肢を伸ばして横臥していた


そして気配を殺して寝台を降り、隣で安らかな眠りに就いたその姿態を見下ろした


無言でマイクロトフの体に馬乗りになると、狭いベッドのスプリングが軋んだ音を立てた


マイクロトフの薄い寝巻きの襟の内側に、指先を忍ばせる

烏の羽よりも光沢のある黒髪との対比で、ほのかに輝いて浮かび上がる白い喉に口付ける

跪く敬虔な信徒のように、しかし明確な目的を持って、息を吐く

寝ついた青年の喉元を通り、吐息は鎖骨へ

そこで立てた濡れたような音とともに、カミューは乗り上げた上半身を横へずらした

マイクロトフの綺麗に隆起した胸と肩の筋骨を長い指と掌で味わうように動かすと、密になった部分がしっとりと汗ばんだ


「マイクロトフ」


名を囁いてもいらえはない


男の手で暴かれてゆく白磁の肌膚に、音も立てずにカミューは歯を立て、自身の足跡を刻んだ



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タグ:カミマイ
posted by 水堂とらく@はりこのとら紙老虎 at 07:39 | 日々の更新2025
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2025年05月13日

【カミマイ10】変転の友愛

日記ブログと一緒に(並行しているというわけではないのですが)
pixivとクロスフォリオでもカミマイの更新をしているのですが
好きな場所で読んでいただけるのが一番適していると思います

今のところ、30話前後で完結できるのかな…といった具合で
カミマイがベッドインするまでの道のりはちょっと遠そうです
最後ら辺になるかも…

でもその間に、恋愛の駆け引きではないですが
カミマイらしい恋情未満の友情っぽいやり取りが
そこはかとなく繰り返されているという具合ですね…

あの時代に流された騎士たちの変遷…恋物語(!)…といった印象です

カミューがマイクロトフのことが好っき!なのは
見たままが好き、みたいなところがあるのですが(恋)
マイクロトフはカミューすごいな…で惹かれているので
カミューがんばれ…おまえはいい男だ…という
書き手側の応援する気持ちも大いに無きにしも非ずです
個人的に常に攻めキャラを応援したいので………

わけがわかりませんが、お話はじゃんじゃん続きます…!

元ネタを知らない方にこそ、気軽に気楽に読んでいただきたいBL物です

★★★

水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより


幻想水滸伝2【カミマイ】妄想10

カミュー×マイクロトフ

変転の友愛




マチルダから離れることを選び、祖国に反旗を翻したマイクロトフは、カミューの助力を得て騎士団の再編成にすぐに取り組むことができた

団長である彼ら二人についてきたのは赤青の上層部を含めた団の半数の部下たち

カミューとマイクロトフの側近の面々は直属の上司である彼らに追従し、ロックアックスに残ったのは内情を漠然としか知らされなかった、かなり末端の騎士たちだった

例え所属する騎士団の最高責任者が彼らの直接の指導者であったとしても、国と家族のことを思えば二の足を踏むだろう

今頃白騎士団長であるゴルドーが権威を嵩にカミューたちに代わる責任者を指名し、団長職に就けたはずだ

あるいは白騎士の名の下にすべての権限をゴルドー一人に集約し、実権を握ったか

マイクロトフたちの離反と同盟軍への参加は、マチルダ騎士団そのものには何の痛手でもなかったという内外へのアピールのためであるのだとすれば、それは成功しただろう

しかし騎士団のカリスマは間違いなく正式な騎士団長であったカミューとマイクロトフであり、団長補佐役の誰一人として彼らの元から離れる者はいなかった

ついてきた騎士の中にも、途中でロックアックスに戻った者はいる

故郷での懲罰を免れるよう直々に書簡を手渡して見送ったが、無事に親族と再会できたことを願うばかりだ

各々の事情を抱えたそれらの騎士たちを除けば、カミューとマイクロトフの側についた面々は騎士団の中でも錚々たる顔ぶれだった

結束力は青の騎士団が誇り、騎士団の統率力は赤騎士が担う

同盟軍と合流した彼らの堂々とした姿は、そんな印象を周囲に与えた


これから、忙しくなる


マイクロトフがそう考えたのは、同盟軍内部での騎士団の立ち位置だ

マチルダ騎士団を名乗る以上、自分たちがすべきことは戦闘員として戦力面でのリーダーシップか若しくは助勢であり、同時に警備や密偵、情報収集などの組織的な知識と手腕を求められているはずだからだ

要するに傭兵とは異なる大きな枠組みの中の組織のやり方で同盟軍に力を貸し、自らの志を変えることなく軍の中で騎士団の名と身を立てる

簡単に言えば、ロックアックスにいた頃と立ち回りが変わるので、そのための再編成と心構え、それに伴う人員の配置と騎士たちの再教育が不可欠だった

とはいえ、勝手知ったる何とやらで、騎士たちは自分たちこそが団長を頂く正規のマチルダ騎士団を自負する手前、こまごまとした指導までは改めてする必要がないように思えた

彼らは誇りを持って騎士以外の人々と気さくに接し、様々な事情を抱えるメンバーとも紳士的且つ理性的に相対することができた

戦闘では実践力と経験者のどちらが優れ適しているかの判断を迫られる場面もあったが、理性ある彼らが半歩引いた姿勢を見せることで、同盟軍への貢献に毎回成功をしていた

すべては赤騎士団長と青騎士団長の意向に沿うやり方だったが、目立った諍いも少なく、事なきを得ている

それもすべて、カミューとマイクロトフが寝る暇を惜しんで熟考と討論を重ねてきた結果だ

正式に軍師を招いて意見を交換し合う場面もあれば、双方の騎士団の執行部の面々にも同席を頼んで騎士団の在り方について説明をし、理解を得られるまで議論した

納得した上で決定を下した目的意識を、その日のうちに全騎士に通達したので、故郷とは異なる役割であったとはいえ比較的円滑に方針が行き渡ったと言える

領内を治めるのではなく、同盟への実質的な参加だったので、寧ろ騎士たちにとっては個々の煩雑な仕事の量が減ったくらいだ

無論、これらが一時的なもの、つまりはロックアックスの城の外に出た戦闘中の状態、すなわち非常事態であることに変わりはない

しかし騎士たちに常在戦場の心構えがあったとしても、明らかに見える形で負担が軽減されたことも事実だった


「上流階級との付き合いが減っただけでも、私にとっては快適な居場所だよ」


腰を落ち着けられる場所は狭いが、文句を言っていい立場でもないと、赤い騎士服の男は半ば諦観したように口にする


ロックアックスにいた頃よりも、そこから飛び出して自由を得たカミューは明らかに以前よりも明るかった

山々が犇めく城塞都市の石畳を吹き抜ける風に吹かれるのではなく、緑が多く茂る大地に足を踏みしめ、全身をいだかれているからかもしれない

確かにマチルダを任務で離れる時は野営が常であったし、手狭ゆえに拡張しつつ設備を整えている最中ではあるものの、こうしてしっかりと雨風をしのげる建物の一角に腰を下ろせる場所があるということが幸いしたのだろう

カミューの表面は、意外なほど穏やかだった


「騎士たちから、不満は出ているか?」


問えば、予想の範囲を超えない程度にはね、と落ち着いた声音が返る

常日頃から理知的である男は、しかし、目に見えて険というものがひそめられている

だが、マイクロトフはそれゆえにカミューの本性に近い部分が露見していると思った


こうして慌ただしい中、新しい局面を迎えたマチルダ騎士団を自分たちの手で支え、維持しつつ新たな形を共に作り上げることができたのは幸運だった

騎士団を誇りに思っているのは男も同じなのだ

当たり前のことを再認識し、マイクロトフは心底から目の前の親友を讃えた


実際にカミューが率いる赤騎士団が同盟軍の内部で果たした役割は大きい

仕事柄、対人関係や情報の精査や収集、取引の伝手など、細かな部分では専門家である赤の騎士団には敵わない

青騎士たちが不勉強であるのではなく、まさに専門外だったからだ

一方で、集団での戦闘や役回りと分担に関しては細部まで団長による青騎士たちへの意思の疎通が行き届いており、マイクロトフの教育の賜物だな、とカミューを感心させた

カミューにとっては既知あったろう事実を、赤騎士たちの前で彼らの団長自らが語った行為にこそ意味があったのだろう

結果として、ロックアックス城内で綺麗に上下で分けられていた赤と青の騎士たちの両方に、マチルダ騎士団として結束することの重要性を教えた形になった


カミューが抜け目なく、賢く、やり手であることは前々から、それこそ士官学校に入る前からわかっていたことだったが、放つ言葉の一言一句、動作の一片、行動の一部始終を取って見ても、無駄がなく考えがあってのことだということが具ににわかる

深慮があり、軽率な真似は好まない

これは自分などには到底真似できないことだな、とマイクロトフは即座に思った

加えて人当たりが良いので、敵を作ることがない

媚びているわけでもないのに、不思議だな、と思った


「下手に出れば、付け上がらせるだけだからね」


お世辞も適当であればあるほど良い

カミューが言う適当とは、大雑把な意味合いではなく、要点を絞ったもののことだ

簡潔明瞭で、嫌味がなくわかりやすい語録

無駄のない会話や交流術は、よほど目はしが効くか、頭の回転が早くなければ、それこそ天賦の才に近かった


「…俺には不可能だ」


半ば呻くように呟くと、それを聞いたカミューはうっすらと微笑ったようだ


「おまえにそれを求めること自体、行き過ぎた行為だと思うよ」


人間には長短があるからこそ適材適所で活きるし、精進の指標にもなると


「師のようなことを言う」


どこかで読んだ本の中身の受け売りだよ、と軽く返された

カミューと交わす何気ない一言一言が快く感じる


やがて、一時休戦だ、と男は言った


同盟軍での騎士団としての存在感と在り方が、見える形で彼らの中に浸透し、正規のマチルダ騎士団がこちらであることを知らしめるための努力が今後も続くだろうことを見越しての言だった

カミューの言う休戦とはすなわち、親友との関係が険悪な状態にならないように心がけるという意味だろう

誰の目も憚ることなく団長同士が議論し合える現状は、男にとっては肩肘を張らなくても済む現実なのだろう

力を抜いて、昔のように付き合える、ということだろうか


「カミュー」


行軍の途上、馬上で横に並んだカミューの、風を受けて膨らんだ柔らかな髪色が視界に広がる


「よろしく頼む」


握手を求めて利き腕の手のひらを差し出す

仲直りの証であり、これから先の未来を共に切り拓こうという無言の言葉を乗せて


数瞬間を置いて、そっとそれは握り返された


手袋越しの、一部分での確かな抱擁


男の眼にははっきりと、複雑な色が浮かんでいた


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2025年05月12日

【カミマイ9】始まりの兆し

最近B'zのアルバムを聴いているので
筆が進むカミマイです…^^;

★★★

水堂とらくファン作品・空の民草の民シリーズより


幻想水滸伝2【カミマイ】妄想9

カミュー×マイクロトフ

始まりの兆し




これは青騎士の管轄ではない


マイクロトフは即断した


持ち回りで政務室に詰める担当騎士の一人が見つけたという書類を目にするなり、青い騎士団長はこれを携え判断を仰ぎに訪れた自身の補佐役と同じことを言った

とある要人の身辺警護と調査

会場や施設の警備に当たるのであれば青騎士も駆り出され担当することも多いが、諜報の類は赤騎士が請け負う仕事だ

どうやら騎士団内の各部署へ文書を分ける際に誤って混ぜてしまったのだろう


「急ぎ、赤騎士団へ届けてまいります」


政務室に集まった団長の親衛隊ともいうべき補佐の一人が前へ進み出る


「…いや」


俺が行く、とマイクロトフはきっぱりと言い放った


おそらく内容からして、団長以下の騎士に任せて良い代物ではないと見抜いたからだ


特に諜報関係は極秘であることが多く、漏洩を防ぐ目的で人目を避けて策議を開き、適任者を選んで内々で手配をする必要がある

厳選の上、限られたメンバーでチームが組まれるはずだ

それらの人員を選定し、配備するのは赤の騎士団長だと決まっている

他の誰にも任せることのできない、責任者としての職務だ

ゆえに騎士団の上層部でも一部にしか知らされない可能性があることから、マイクロトフが直接カミューに手渡すことを決意した


「承知しました、お気をつけて」


同じロックアックス城に勤める騎士であるとはいえ、赤騎士団は自分たちよりも上の機関だ

横並びで各騎士団が牽制し合うのではなく、飽くまで青騎士は騎士団の礎であり、最終的な決定権は白騎士団にある

赤騎士は白騎士団の片腕となり、青騎士は白騎士団の足となる

首脳陣は白騎士に集まるのが、マチルダ騎士団の独特の編成と歴史だ

無論、白騎士が独断と独裁の道を歩まぬよう、各団長が見張る役目もないわけではなかったが、それは飽くまで建前の上での話だ

少なくとも、現状ではそうなっている

実際には権限のほとんどが目に見える形で白騎士団長の元に集約されていた

それらを赤と青の騎士団長は代々危険視をしており、双方が内密に話し合うことも少なくなかった

しかしそれを離反の心ありとして摘発された過去がある

マイクロトフの前任は早々に予見して、自らの後継を選んだと聞く

多くは団長職の退任に留まらず騎士の名誉を剥奪されたが、赤騎士に白騎士団の仕事の一部を任せたことで内外のバランスを取ったということにして、その場は丸く治められた

だがすべて建前上、見た目だけの話で、結局は指令を出すのも辞令を行うのも白騎士団長の名の下で、最高の権限を白騎士たちが独占している事実に変わりはなかった

現団長職であるカミューとマイクロトフの親交に最初から厳しい目が注がれているのには、そうした理由があった

とはいえ、カミューは上から求められている以上の成果を挙げているので、白騎士団が表立って男の動向を非難することも問い詰めることもできない

足繁く青騎士団の管轄に足を踏み入れ、すぐに出てはまたそこへ向かう

その繰り返しに、不審や不快感を示す上部の連中もいるだろう

とはいえ、精々大量の依頼文書を押し付けて、嫌がらせをする程度が関の山だ

が、カミューからすれば、その行為は白騎士団の形骸化を早めるだけの処置でしかなかった

無能が本当に外側を着飾るだけしか能がない真の能無しの集団に成り果てるのだとすれば、目も当てられない惨状になる

往く往くはマチルダ騎士団そのものを破綻させかねない

カミューはたまに赤騎士団の執務室を抜け出してロックアックス城を散策し、静かにその様を見守っている節がある

情熱に燃えた眼を、長く柔らかい前髪で密かに隠しながら


マイクロトフはマチルダの今後に関して、カミューと語り合いたいと思うことは少なくない

腹を割って、膝を突き合わせて心ゆくまで議論したい

しかし今の自分たちの立場ではそれも騎士団への背反行為だと見做され、告発されてしまうのだろう


このままでいいはずがない

私情を挟まない部分でも、カミューに対してマイクロトフは思うところがあった


もし

もし、マチルダが彼らを裏切ることがあれば、その時は



おまえは


俺は


どうするのだろう



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