オリジナル【四人の王】妄想より
龍飛王×鼓翼
夏の再会
鼓翼は思ったんだよね
唐突ではなくて前々から思っていたんだけど
俺も足が欲しい!!!
「よーするに、アシだよな?」
古風な言い方をすればアッシーが欲しいと
豹變王に代弁されて、アッシーってなんだろな?…と思いながら、鼓翼は頷いた
「免許を取って自分で車を買うって言ったら、『それはプロにさせろ』って言われた」
龍飛王に相談したら※確実な方法※、「運び屋を雇え」と端的に言われたと
「そりゃあ、そうだろうなー」
なんでも知っている龍飛王の見識からすれば、分業というものが最も社会的で合理的だという解釈なのだろう
豹變王も龍飛王の見解については同意を示す
大抵の人間であれば、なんでも自分でやって仕舞えばいいと考えるのが普通だ
けれど龍飛王は、鼓翼に料理のプロだという自覚があるのならば専用の人間を雇えと断言する
何でもかんでも身一つで生計を立てねばならない身分にないのであれば、雇用して適した箇所に人材を配置しろと
「龍飛※サー※には私用の運転手がいるからなぁ…」
龍飛王は口だけではなく実際に自らの言を実践している
運転手に自前で専用の車を買わせ、自身が必要だった時にすぐに出動させて運ばせる
休日は龍飛王と同じだが、勤務時間は龍飛王を運ぶだけのわずか数時間だけだ
けれど24時間いつ呼び出されるのか常に明確ではないのと、仕事用である高級車※運転手が選んだ※の管理と整備のすべてを一任されている
普通の忍耐では務めあげられないし、私的タクシーだとしても、会社ではなく個人で契約をしているので保証も確かではない
なので一度、不躾だとは思いつつ、運転手本人にさらっとサラリーを聞いたことがある
その場に龍飛王も同乗していたが、当然のように黙認してくれた
聞いた額は鼓翼が想像していたよりも倍の額で、桁もいくつか違っていた
老後とか年金とか保険とか諸々込みの給金なのだろうけれど、もしかしたら龍飛王はそれに更に色をつけて上乗せをしていたのかもしれない
忍耐力もさることながら、無私であることが求められる場面も多いだろう…正にプロの仕事だったからだ※龍飛王自身もすごい立場だし※
鼓翼は実家を出てからしばらく働いたことがあるし※龍飛王との出会い参照※、短かった学生時代には社会勉強と称してアルバイトもした
頭が良かったし体力もあったので、年相応ではなかったが家庭教師みたいに勉学やスポーツを教えたこともある※周囲の年上に※
実店舗でも働いた経験があるし、オペレーターのバイトをしたこともある
けれど、それでも、能力と効率を鑑みて他人を継続的に雇用し使う…相手からの信用を得て、更には向こうの信用を買う龍飛王の手腕は並大抵ではないと思った
その龍飛王が、鼓翼に自分のような足を持て、と言うんだよね
果たしてそれが可能か、という問いは甚だ愚問で、龍飛王がやれと言ったからには※言ってない※自身にその腕と実力があるという証明なのだろう
そもそもなんで車が欲しいって思ったんだ?って、豹變王が訊いてきた
「あーそれは、以前から自分の目で現地の旬の食材を見て仕入れたいと考えていて」
マンションの中にあるショップでは手に入れられない、または店長や従業員の話で聞いた仕入先や地方の物産を、その目で見て調理したいと考えたからだ
時間があれば注文して取り寄せることはできるが、その時には旬からは少しずれたものになってしまう可能性が高い
これは鼓翼自身のこだわりというか欲求だったので、龍飛王は当然のように、鼓翼自身で自らの足となる者を雇用しろ、と言った
まあ、真理だよな、って豹變王は龍飛王の慧眼を肯定した
プロを雇うに当たって、龍飛王はどうやって運転手を見つけたんだ?って訊かれたので、聞いたことを話した
ひとまず人伝てに耳にした名前に声をかけて、高級ホテルの喫茶店へ呼び出して、ひとりひとり個別に面接して採用を決めたらしい
条件に合い、尚且つ私情を挟まない稀有な人物として、今の運転手が選ばれたらしい
それも一人にこだわらず
更には2代目の育成も考慮して、もしかしたら今後人数が増えるかもしれない
一代限りで終わる仕事ではないので※王は王なので※今後も継続されていくのだろう
「なるほどな」
豹變王は大して興味がなさそうに合点した※大抵興味がない※
「っても、俺の場合は伝手がないし…」
この国じゃ龍飛王のように顔も売れてないし、と鼓翼はひとりごちる
求人を出して、別々の日に喫茶店で面接かなぁ…
変なのが引っ掛からなきゃいいけどな、と豹變王は思ったけど、だったらよーって言った
「まずは全能の奴に相談してみればいいんじゃねえ?」
誰???
って思ったけど、どう考えても鼓翼の頭の中には、たった一人の顔しか思い浮かばなかった(笑)
「…心当たりはある」
豹變王の言った『全能』は特段の驚きもなく声を発した※要するに鼓翼の父親※
こっちの国の運び屋に心当たりがあるんだ!?、って鼓翼は目ん玉を剥き出しかけたけど、なんとかクールを装った(笑)
「おまえが声をかければ、喜んで飛び出してくるだろう」
そんな奴がいるんだ!?、ってまたびっくりして顔面を端末の画面の前に突き出したかったけど、平素のままの鳳舞王の手前、へえーって言うに留めた※クール※
「連絡は付けられるのか?」
もちろんこっちから出向くぜ、と一応は気を遣ったが、鼓翼の足を探している最中なので、自分自身はそれほど遠くへ出向くことはできない
鳳舞王ゆかりの者だ、と本人から直接言われても、鼓翼には最後までピンとこなかった※ひどい※
告げられた場所は某サーキット場で、鼓翼はタクシーで約束の時間にやって来た
そこから、整備員の一人だろうか
作業服でその帽子を被った格好で、ひとりの長身の男が姿を見せた
目敏い鼓翼は、一瞬で相手がかなりのイケメンで美声だということを感じ取って、なんだか警戒する(笑)
俺が好きなのは龍飛王だから!って胸の中で念じて※はい※、素直に自己紹介をする※いい奴※
名乗る前からこちらを一目見るなり、向こうは何かに気づいたようだ
告げられた名前は、鼓翼には聞き覚えのあるものだった
羽楫
南の地を支配する鳳舞王の忠実な部下で、中天に至って鼓翼の腹心となった翼ある者だった
羽楫と再会…!!
鼓翼は顔を見るなり、ほえーってなった※なぜ※
羽楫ってこんなにいい男だっけ?!…みたいな(笑)
昔はめっちゃ真面目に鼓翼の養育者的な立場で物事を指導していたような気がするから※監視※、なんか、今の服装で見るとめっちゃラフで野性味があるというか、背も高くて足も長くてかっちょ良かった※野鳥?※
どうやら愛車を整備していたらしくて油塗れだったのだけれど、上着の内側のポケットから煙草を取り出しかけて、鼓翼の顔を見てやめた
鼓翼の知っている羽楫は優等生を模したような奴だったのに、めっちゃ自由になってた(笑)
少なくとも、鼓翼にはそう見えた
豹變王がもしこの場にいたら、鼓翼同様に以前の羽楫を知っていたので
「すべてのしがらみから解放されたんだろ」
って表したと思う※豹だけに※
親や翼ある者の長としての因縁や責務から解放されたのが、今の羽楫なのかなーって鼓翼は思った
「俺を雇いたいと…?」
鳳舞王から話を聞いたのか、羽楫は単刀直入に鼓翼を見下ろしながら言った
近くの休憩所で、自販機の側の日陰で缶コーヒーを開けながらの会話だった
「使いっ走りとかいうんじゃなくて、俺を運んでくれる専用の車が欲しくてさ」
買った食材も、毎回どれくらいの規模になるかわからないけれど一獅ノ乗せて帰ることもあるだろうと、簡単な仕事内容を明かす
書面でも書き起こしたので※えらい※、その場で羽楫に読んでもらった
しっかりと調べて、龍飛王の運転手さんの話も聞いて、適した職務内容と手当を明示したつもりだった
とはいいつつも、鼓翼自らは自営業なので、大企業の重役である龍飛王ほど給金は弾めない
羽楫の今後の働き次第で変わってくるだろうとも伝えた
龍飛王から任された店の規模を大きくする予定はないが、鼓翼にはもっと料理や調理の質を上げ、上を目指そうとする向上心だけは人並み以上にあったから
「予約が入れば店を開けるけど、普段でも食卓は賑やかにしたい」
贅沢な話だけれど、日夜龍飛王を満足させることが鼓翼の役目だと自負している
羽楫は龍飛王にいいように使われ、懐いている鼓翼に対して、少し軽んじたように軽く鼻を鳴らした※自由※
「俺は鳳舞王に恩義はあっても、おまえに義理はない」
況してや龍飛王に、と羽楫の言葉は言っていた
中天で腹心であったのも、鼓翼が鳳舞王の力※聖紋※をその身に宿していたからだ
翼ある者を統治する者として、捨て置けない状況だったから味方していたのだと
羽楫は、知の王である龍飛王とはまた違った合理的で冷静な判断を下すタイプだったので、鼓翼はそのことに関してはあまりショックは受けなかった
とはいえ、鼓翼から見たら非常に整った容姿の相手から言われてしまえば、理由なく消沈したくもなる※そうなんだ?※
「無理にとは言わない。…他を探すし」
「…当てなどないだろう」
即座にそう切り返されて、嫌味と感じるよりも、もしや、と鼓翼は思う
羽楫は実直な性格ゆえに、回りくどいことはしない
嫌がらせも不満もストレートに口に出して言うだけだ※いいのか?※
「…最初から引き受けるつもりだったのか?」
諾、と羽楫は頷いた
あっさりと、それこそ水鳥が水面を走るようにスマートに
けれど苦言も単刀直入に吐いた※実直※
「龍飛王は気に入らん。おまえの側にいるという豹變王もどうでも良い」
だが、おまえが必要だと言うのなら
羽楫は鼓翼を切れ長の綺麗な目で真摯に見つめた
ちょっと野鳥※野生※味が入ってて、鼓翼は瞬間、どきりとした※面食い※
てことで、経緯※いきさつ※はどうあれ、鼓翼は自分の足というか
羽楫という名の翼を手に入れた!!
イエーイ!※ガッツ・ポーズ※
羽楫は運転の免許っちゅー免許を取得しててさー
あほかーっていうくらいに海外まで行って操縦の免許をあほほど持っていた※あほに失礼※
機械のエンジンの音やオイルの匂いが好きなのかねぇ?っていうくらい、マシンに精通していてね※趣味※
羽楫も男だからなーって豹變王は適当なことを言った※男は割と機械好き※
しかも自家用車を何台も持っててそれをすべて自分で管理している
二輪もいくつも所有してて専用の車庫や倉庫をめっちゃ借りたり持ったりしていた
維持費がかかるのと整備費用がかかるので、当たり前だが定期的で高い収入が必要になる
鼓翼の提示した額で問題ないと言ったけれど、どんだけ働いたらあれらすべてを維持できるんだろうと思うくらい、持ち物だけは豪勢だった
本当はヘリとか船も所有したいらしいが※免許持ち※、そこまでは手が回らんって言っていた
どんだけ好きなんだよ…というか、愛車とかものすごく大事にするんだなぁって鼓翼は思った
自分でも面倒を見るし、足りなければ金を払って看てもらう
単なるコレクションではなく、実際に走らせて調子を診る
へこみやちょっとの傷でも自身や信頼できる業者の手を借りて修正したり整備したりするし、手間も時間も費用も惜しまない
部品がなければ取り寄せたり作ったりする※そこまで…!※
なので貯金はないと、羽楫は堂々と言ってのけた
こいつらのために大枚を叩いてやるのが楽しいんだと
オイルにまみれて、そんなことを清々した顔で言う羽楫は、鼓翼の目から見てもカッコよかった※いけめん※
「…って、俺よりも更にどうしようもねえ奴じゃねえか…」
株の売り買いのプロである豹變王には正しくツッコまれた…!
羽楫は鳳舞王の忠実なる部下で翼ある者だったので、根はやはり自由でアウトドア派
鳥がそもそもインドア派だったら死を待つばかりなので(笑)
羽楫は重責から解き放たれると野鳥と化すタイプだと思います
豹變王とは違った意味で、主義のある自由人※野鳥※
でも見る目があるので、鼓翼にはやはり一目置いています
鼓翼に味方したのは鳳舞王の子だからというよりは、羽楫が感じている鼓翼自身の魅力だと思いつつ
高収入の仕事だから引き受けたというよりも、鼓翼が困っていて自身の足を探しているから手助けをしたいと考えたのではと思います
他の王たちのように天性の質は持ち合わせていないものの、人徳※王徳※があるのが中天の帝※鼓翼※です
鳳舞王が声をかければ気づくのが、ゆかりというか、その部下であるという理由なんだろうなと思いつつ※翼ある者はみんな鳳舞王ゆかりの者=部下※
鼓翼に味方するかどうかまでは鳳舞王は考えていないので、羽楫が引き受けた理由は鼓翼の提示した条件が割と良かったのと、やはり鼓翼自身の魅力というわけですな…!
なんだかんだと口を挟みつつ、中天で王としての責務を果たす鼓翼を羽楫は気に入ってました
自分同様に、鼓翼の責任感の強さを好もしく思ったのだろうと思います
鼓翼…要するに中天とその四方を統べた帝は、人々の期待を背負って立ち、それを果たした伝説の英雄なので…
そして羽楫は細面のイケメンで長身…!! 体格も実はいい…!※鳩胸※
面食いの鼓翼の、明日はどっちだ…!!?※そういう話??※
羽楫については、裏本の第一弾にちょこっとデータが載ってます…!
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